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もう一つの戦力外通告物語 受け取った「カジからの手紙」

2017年1月9日16時0分  スポーツ報知
  • 12年優勝パレードでファンに手を振る藤村と加治前(左)
  • 14年トライアウトに参加した加治前

 5年ぶりの現場復帰。そして、8年ぶりにアマチュア野球担当を務めることになった。年明けの5日。私は、元巨人の加治前竜一さん(31)に電話をかけた。「お久しぶりです! いやー、もう、大変でしたよ!」。担当した9年前と変わらない、威勢のいいカジの声が返ってきた。

 G党ならご存知だろう。彼は巨人1年目の08年6月6日のロッテ戦(東京D)で、川崎雄介投手からプロ野球史上初となる、プロ初打席でのサヨナラ本塁打を放った男だ。

 14年に戦力外となり、単身で社会人の三菱重工長崎へ。4番打者として都市対抗野球出場も果たしたが、昨年11月、三菱日立パワーシステムズ横浜との統合、移籍が決まった。そのさなかに双子が誕生し、3児のパパに。家族5人での新生活を始めたばかりで「大変でしたよ!」の言葉にも感情がこもるわけだ。

 取材で最も印象に残っているのが、三菱重工長崎1年目の15年春にお願いした「カジからの手紙」。「本紙読者ならびにG党の皆様へ手紙を書いてみない?」とダメ元の打診を快諾。情景が頭に浮かぶ、素晴らしい文章を送ってきてくれたので、以下に再掲載する(所属などは当時)。

 拝啓

 全国のジャイアンツファン、並びにスポーツ報知読者の皆様、花便りも伝わる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

 今頃ジャイアンツ球場の周辺も桜がキレイに咲いているんだろうなとしみじみ考えております。

 私は昨年10月25日に戦力外通告を受けました。

サヨナラホームランでスタートしたプロ野球の世界。思えば、一軍の舞台で輝けた時間は決して多くはありませんでした。

 生き残りを懸けた第二回トライアウト、その最後の打席で相対した投手が、プロ初打席の川崎投手でした。正直、野球の神様も憎いことをするなと思いました。

 プロ野球生活の大半を過ごしたジャイアンツ球場のネクストバッターズサークルから見る景色、こんな僕にも声援をくれるファンの方々、色んな思いが自分の中を駆け巡って、自然と込み上げてくるものがありました。

 プロ野球の世界は、一軍で活躍して初めてプロ野球選手だと言われます。でも一軍で活躍するスター選手だけでなく、二軍にも色々な思いを抱きながらワンチャンスに全てを懸ける覚悟で戦う選手がいる事も忘れないでください。

 ですからどうかファンの皆様、二軍から捨て身の覚悟で上がってきた真っ黒に日焼けした選手達にいつもより少しだけ大きなご声援をお願いします。

 さて私は今、三菱重工長崎というところで野球をさせていただいております。プレーヤーとしている以上もう一度上のレベルを目指して、まずは都市対抗、日本選手権優勝という目標を達成するべく日々努力を続けていきたいと思います。

 末筆ながら皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。

 ではまたどこかで。敬具

加治前竜一

 改めて読み返しても、カジらしい、人間性がにじみ出た手紙だと思う。新天地での挑戦を、心から応援したい。(記者コラム・青柳 明)

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