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松坂大輔よ、大事なのは「スピードでなく、打者の手元で伸びるキレのある球」復活信じる中学時代の恩師

2018年2月27日16時0分  スポーツ報知
  • 中学時代の松坂大輔を指導した大枝茂明さん=左から3人目=は、今も中学硬式のクラブチーム・東京城南ボーイズで監督を務めている
  • 26日、1イニングを3者凡退に抑えた松坂

 中日にテスト入団し、復活が期待される松坂大輔投手(37)。横浜高で甲子園春夏連覇、プロでは日米通算164勝を挙げている怪物右腕は中学時代、クラブチームの江戸川南リトルシニアで野球選手としての土台を築いた。指導したのは監督の大枝茂明さん(55)。現在も同じ硬式チームの東京城南ボーイズで中学生を教えている恩師が、思い出話を交えて教え子にエールを送った。

 中学生の指導歴が30年を超える大枝さん。松坂と初めて出会ったのは小学6年の時、今から25年前、江戸川南リトルシニアの練習を見学に来た時だった。

 「身長150センチくらいのポチャッとした体つきで“ダイスケ”という名前がピッタリでした。地元(江東区)の学童野球では評判の投手でしたが、見た目は普通の小学生。一緒に来ていた子の方が背が高くてガッチリしていたので、その子を松坂と間違えました」と振り返る。“普通の子”という印象は、後日試合での投球フォームを見て変わったそうだ。「コンニャクのように体が柔らかく見えた。負けん気が強くて自分より身長の高い同学年の投手を意識し、体全体を使った投げ方をしていた。腕をしならせて投げるボールは手元でビュッと伸びる。これは大変な選手になるぞ、と直感しました」

 その“伸び”こそが松坂を復活へ導くカギだと大枝さんは思っている。テレビのスポーツニュースで「最近の松坂のフォームをじっくり見た」という恩師は、技術的な部分にまで踏み込んで解説を始めてくれた。

 「全盛期に比べて腕まわりの回転がスムーズでなく、固まっているように見える。メジャーのパワーに負けまいとして筋肉をつけすぎたのでは…。故障もあったし、今では昔のような150キロを超える球は投げられないでしょう」

 松坂の性格を熟知するからこそ、投げられないと分かっていても、それでも球速にこだわることまで分かっている。だからこそ、教え子の心中を推しはかった上で、アドバイスを送る。

 「(球速にこだわれば)テイクバックから力んでしまってボールが走らない。それが焦りを生んで、また力む。その繰り返しなのでは。だから、140キロ台でも高めのボールの“伸び”でファウルを誘ってカウントを有利にし、最後は打たせて仕留めるピッチングならできるはず」

 高校へ進学した後も、松坂を気に掛けていた、という。大枝さんが「思い出してもらいたい」という“あの時”がある。横浜高が優勝し、今でも語り継がれる1998年夏の甲子園。神奈川大会の終盤から調子を落としていた松坂は、柳ケ浦高(大分)に1失点完投勝利を挙げた1回戦でも6四死球と内容が悪く、マウンドでもイライラしていた。

 「中学時代からの悪いクセが出ていた。力むので左足が着地する時にあごが上がって顔が上を向き、体重がボールにかからずキレがなくなる。当然コントロールも悪くなりますよね」

 横浜の次戦は、杉内俊哉投手(ソフトバンク―巨人)を擁する鹿児島実業高(鹿児島)。その2回戦を前に、大枝さんはチームの宿舎を訪問。松坂と部屋でゆっくり話をしたという。そこでたまたま松坂が見ていたテレビに映っていたのが、常総学院高(茨城)と近江高(滋賀)が対戦した2回戦だった。

 「そこで見た常総の(山田隆夫)投手の球は、130キロそこそこですが伸びがあって、打者は後方に飛ぶファウルが多かった。会うのは久しぶり。どう話を切り出そうかと考えていたので、ちょうどよかった。そのことを引き合いに出し、中学で教えたことをあらためて言いました」

 伝えたかったのは「スピードでなく、打者の手元で伸びるキレのある球」を投げることの重要性。「余分な力を入れずに腰と手首をうまく使い、トップから一気に全身の力を乗せた球こそが投手の生命線」がベテラン指導者の持論だ。アドバイスの効果もあってか松坂は2日後、鹿児島実業高を5安打で完封した。

 「ちなみに、その部屋で松坂と初めてプロ入りに関する話をしました。お父さんが巨人ファンだと聞いていたので『希望は巨人?』と聞くと『どこの球団でもいいからプロで投げたい』と返ってきた。野球に対しては本当に純粋な子なんです」

 松坂は2月26日、韓国・ハンファとの練習試合で338日ぶりの実戦登板を果たし、1イニングを3者凡退に抑えた。「今の松坂には東京城南ボーイズのピッチャー陣にも言うように『球速にこだわらず、バックの仲間を信じて打たせて取れ』と声を掛けたい。必ず復活してくれると信じています」と大枝さんは言葉に力を込めた。大投手に成長した松坂も、恩師にとってはあどけなさが残る“ダイスケ”のままのようだ。(記者コラム・芝野 栄一)

 ◆大枝 茂明(おおえだ しげあき)1962年6月2日生まれ。東京都出身。江戸川学園取手高で捕手として活躍し、3年夏に甲子園出場。83年に江戸川南リトルシニアのコーチとなり、監督を経て97年退団。98年に自身も設立に関わった城南ドリーム(現東京城南)ボーイズの監督に就任した。プロ(NPB)入りした教え子は松坂をはじめ元ヤクルト投手の北川哲也さん(暁星国際高―日産自動車)、西武・木村文紀外野手(埼玉栄高)ら8人。甲子園優勝経験者も松坂、綱脇慧投手(17年夏・花咲徳栄高、東北福祉大)ら7人を数える。

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