【センバツ】由利工、1勝ならずも完全燃焼

スポーツ報知
初めての甲子園で力投を見せた佐藤亜

◆第90回センバツ高校野球大会第2日 ▽1回戦 日大三(東京)5-0由利工(秋田)(24日・甲子園)

 21世紀枠で初出場した由利工(秋田)が、1回戦で日大三(東京)に0―5で敗れ、初勝利はならなかった。エース右腕の佐藤亜蓮(3年)が最速142キロの直球を武器に好投したが、4回に日置航(わたる)遊撃手(3年)に大会第1号の本塁打を許すと、終盤にも失点。大舞台に立った喜びと敗戦の悔しさを胸に刻み、夏へのリベンジを誓った。36年ぶり出場の日大山形は25日に智弁学園(奈良)との初戦(2回戦)に臨む。

 楽しさと悔しさが入り交じった夢舞台だった。試合を終え、由利工ナインが応援団のいる一塁側、相手の三塁側、バックネット裏の3方向に頭を下げると、2万5000人の観衆から惜しみない拍手を送られた。0―5。強打を誇る日大三に、本塁打を含む12安打5失点を喫した佐藤亜は「今までにないくらい強い相手だった。負けたのは悔しいし、力の差を感じたけど、ここで投げられたのはうれしかった」と胸を張った。

 「今までにないくらい、いい景色」。幸せをかみしめたエースは、最速142キロの直球とカットボールを駆使し、強敵に挑んだ。0―0で迎えた4回、先頭の日大三・日置の左越えソロで先制された。追加点を許しても「盛り立ててくれる仲間のために」と粘りの投球。8回裏2死一塁。134球目に投じた135キロの直球で空振り三振を奪い、「最後に一番のボールを投げられた」と笑った。

 中学時代、軟式野球部に所属した佐藤亜は「地元の高校で甲子園に行きたい」と由利工を選んだ。控え投手の斎藤海龍(あろう、3年)は「甲子園に行けるかもしれないと思い、たくさん集まった」と前年(11人)の倍以上の24人が入部した。

 県内でも上位に進めなかった公立校は、昨秋の秋田県大会で3位、初出場した昨秋の東北大会では8強入り。実績に加え、部員が率先してあいさつを励行するなど「地元に愛される学校」の評価を受け、21世紀枠で聖地への切符をつかんだ。

 年末年始には、部員たちは遠征費をまかなうためにスーパーなどでバイト。3月まで屋外練習ができない厳しい環境にもめげず、晴れの舞台へ準備してきた。

 佐藤亜は土を持ち帰るのをやめた。「他の球場と変わらないと思ったし、夏にもう一度来て今度は泣きながら拾いたい。この経験を秋田に持ち帰りたい」。視線の先は夏の甲子園。今度は県王者として戻ってくる。(遠藤 洋之)

野球

×