AP通信、ロボットによる記事執筆をマイナーリーグに拡大…未来の野球報道の形とは

2016年7月10日13時0分  スポーツ報知

 米国の大手通信社「AP通信」はこのほど、ロボットによる記事生成を野球のマイナーリーグに拡大すると発表した。同社では、これまでもデータも元にした記事の自動生成を企業の四半期決算リポートなどで利用してきたが、今回その対象を広げることになった。

 データをもとに、人工知能を用いて記事を自動生成する一番のメリットは、誤字、誤記などの間違いが事実上なくなること。その上で、ユーザーのニーズに合った記事を何本でもすぐに作れ、合わせて人件費も削減することができる。

 AP通信はロボットによる記事生成でAutomated Insights(AI)社の「Wordsmith」というプラットフォームを利用している。記事の“元”となるデータ面は今回、マイナーリーグの公式記録を扱うMLB Advanced Media(MLBAM)をベースにするという。

 AI社の「Wordsmith」とは、人工知能を用いることでデータを元に「人間が書いた」っぽい物語を作り出すことができるソフトウェア。「Wordsmith」は100万を超えるパーソナライズされたレポートや記事を、あっという間に作り出すことができる。米国ではAP通信のほか、米ヤフーのサイト内でも利用されている。

 今回、AP通信が自動生成する記事は、メジャーリーグの下部組織にあたる3A、2A、1A。対象球団数は142、13のリーグをカバーしている。そしてこれらの記事はマイナーリーグの公式サイトであるMiLB.comでも配信されている。

 AP通信では、「Wordsmith」を用いた野球報道が同社のスタンダートとなるとしている。スポーツ部門を統括するバリー・ベッドラン氏は「我々はAP通信のスポーツ報道をさらによくするために、どのように記事の自動生成を用いるかを研究しているところだ。MLBABのデータは、記事の自動生成に最適で、各球団の地元に興味を持ってもらえるコンテンツをよりたくさん作り出すことができる」と説明した。

 今回、ロボットが作る記事はエピソードを交えた「ストーリー」記事ではなく、試合経過が中心。日本のプロ野球を題材にすると、例えば、次のようなものだ。

 (例に出す文章はロボットによる生成ではなく、「試合経過」のイメージ記事です。)
 巨人はDeNAに1点のリードを許した6回1死、村田が真ん中に入った133キロのフォークを左翼席に運ぶ9号ソロで同点に追いついた。巨人はさらに7回2死二、三塁で長野に代わり途中出場していた大田が2点三塁打を放って勝ち越し、逃げ切った。

 このような試合経過の記事を自動生成できるようになれば、記者は解説や分析などにより集中することが可能となる。また、マイナーリーグのように人員の都合でカバーしきれないときでも、データさえあれば記事を出稿できるメリットがある。AI社のロビー・アレンCEOは「我々は『Wordsmith』がAP通信のニュース編集における重要な部分となったことがうれしいし、記事の自動生成なしに編集部が多様なニュースをカバーすることはできない」と説明した。

 ところで、日本のスポーツ(新聞)報道は、選手のエピソードを交えた記事が中心で、データ系記事や試合経過の記事はやや軽じられる傾向がある。記者も海外経験のあるプロスポーツ選手から「日本のスポーツ新聞は昨日の試合がどういうものだったか、読んでもわからないことが多いよね」と指摘されたことがある。

 そこでスポーツ報知では6月末、ネットユーザーに「野球報道に何を求めるか」アンケートした。すると「試合経過の記事を読みたい」という要望が第2位に入った(1位はエピソード記事)。ユーザーは、新聞社が考えている以上に、試合の解説やデータによる解析よりも試合経過の記事を「読みたい」と思っていることがわかった。

 もし「Wordsmith」の日本語版のようなシステムができれば、日本のメディアでも積極的に利用されていくのではないだろうか。これまで「試合経過」を書くためには、それなりの時間がかかっていた。また新聞紙面はスペースが限られており、経過記事は縮小されがちだった。インターネット上は記事を何本でも掲載できるし、それぞれのファンの要望にあった記事配信も可能となる。そのためにも、“記事の元”となるトラッキングデータをはじめとしたスポーツの「デジタル化」も重要になる。

 いずれは、メッセンジャー系のBotと連携させることで、ユーザーからの問いかけを受け個別に生成された記事を返す日が来るかもしれない。テクノロジーはニュースの消費の仕方だけでなく、記事の執筆自体も変えていくことになるだろう。

 なお、AP通信ではすでに、昨年より記事生成の自動化研究を担当する編集者を専任で置いているという。(メディア局・田中孝憲 @CFgmb)

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