イチロー「悔しい思いもたくさんしてきた5年半だった」古巣への思い、大谷、現役語った

スポーツ報知
マリナーズの入団記者会見に臨むイチロー

 マーリンズからFAとなっていたイチロー外野手(44)が7日(日本時間8日)、マリナーズと正式に1年契約を結んだ。米複数メディアによると年俸75万ドル(約8000万円)で、打席数などに応じた出来高は最大125万ドル(約1億3000万円)。背番号は「51」に決定し、8日(同9日)からキャンプに合流の見込み。マ軍キャンプ施設で入団会見を行ったメジャー最年長野手は、6季ぶりの古巣復帰やエンゼルス・大谷翔平投手(23)との対決への意気込みなどを冗舌に語った。

 ◆イチロー入団会見一問一答

 ―シアトルへ戻る心境は。

 「2012年7月にシアトルにサヨナラを告げて、その後、ニューヨーク、マイアミと5年半が過ぎましたけど、その間も僕の家はシアトルにあって、ニューヨークから家に帰る時も必ずシアトルの景色を見ながら家に帰る。マイアミからもそうでした。飛行機から見えるシアトルの街だったり、セーフコ・フィールドは僕にはすごくホームなのにホームでない、近いのにすごく遠く感じるという存在になっていたんですけど、今回、こういう形で戻ることができて、また見える景色が違うのかなと。そこにある当たり前のようにあったものというのは、まったくそうではないもの、特別なものであったということをこの5年半で感じてきました」

 ―5年前とは違う選手か。

 「いろんなことを経験しました、この5年半。また耐性が強くなった、耐性というのはいろいろなことに耐える能力、これが明らかに強くなったということです。選手としての能力に関しては、今は数字で分かる時代なので、皆さんの方がご存じだと思いますけど。その点で明らかに5年前は違うと言えると思います」

 ―50歳まで現役という目標にまた近づいた。

 「皆さん、よく50歳までという話をされることが多いですけど、僕は最低50歳といつも言っているので、そこは誤解しないでほしいですね」

 ―昨季、セーフコ・フィールドでの最後の打席は本塁打。

 「あの時、シアトルで最後の打席と言われたことが確かにありました。でも、僕はいずれ戻ってきてプレーしたいと、ま、できるんではないかと、まったく根拠はないんですけど、そう思っていました」

 ―FA市場が停滞していた。

 「僕自身の状態としては泰然とした状態であったと思います。それがなぜかは分からないですけど、自分が経験してきて、良かったこと、そうでなかったことをたくさん経験してきて、そうなったのか。なぜ、そうなったのかは分からないですけど」

 ―チームではどんな貢献を?

 「2001年にメジャーリーグでプレーすることが決まった時に考えたのは、自分のことしか考えられない。まず、結果を残さないと、この世界でやっていけない、まあ、当然のことですけど。それから18年目になるんですけど、もちろん自分ができるパフォーマンスはたくさんあります。僕自身のためにやりたいこともあります。ただ、当時と違うのは、今、マリナーズが必要としていること、僕がそこに力になれるのであれば、何でもやりたい」

 ―フェルプス投手との因縁を感じる。

 「フェルプスに関しては、なぜか僕が(ヤンキース―マーリンズ―マリナーズと)追いかけているという状態なんですけど、おそらくそんなふうになるんじゃないかと。今回、シアトルに戻るんじゃないかという一番の根拠は、確かにフェルプスがいたことでした」

 ―エンゼルス・大谷の印象は。

 「大谷選手がエンゼルスと契約した時に、テキストでメッセージをくれてやりとりをしたということがありました。日本でも何度か(プライベートで)会ったことがあって、僕とは親子と言ってもいいくらいの年齢差ではありますけど、メンタルとしては僕が子供で彼が親という感じがします」

 ―過去5年で学んだこと。

 「マリナーズで以前プレーしていた時は、必ずラインアップに名前があって、自分のルーチンを守ることは簡単というか、難しくなかったんですけど、ニューヨークに行ってからというのは、その日、球場に行かないとプレーするかどうか分からなかった。どこで自分が行くのか、まったく分からない状態が続いて。見えないものといつも闘っている、そういう状態だったんですね。それらもいつしか自分が徐々に対応できるようになって、何が起こっても、代打を告げられて左投手が来た時に、代打の代打ということもありました。それは過去になかったことなんですけども、そういう悔しい思いもたくさんしてきた5年半だったので、いろんなことに耐えられるんじゃないかと思います」

 ―古巣でも顔ぶれは大きく変わった。

 「まず顔と名前を覚えなきゃいけないんですけど、怖いのは僕の、年齢的には息子みたいな選手たちがいっぱいいることは、ちょっと怖いですけど。でも、プレーをすれば、僕も息子側に入れるというのは、しっかり見せたいと思います」

 ―心が折れそうになった時は。

 「折れそうになっていると泰然にはならないですよね。ということはないということです」

 ―目が潤んでいるように見える。

 「こういう会見の場合、目が潤んでいることがメディアにとっては大好きみたいですけど、おそらく目が潤んでいるように見えるとしたら、時差ボケの影響かと思います」

 ―マリナーズ入りへ躊躇(ちゅうちょ)は。

 「躊躇はまったくなかった。この話をいただいた時に、考える理由すらなかったです。その時点で」

 ―開幕まで残り3週間、練習プランは。

 「自分のスタンスをどこに置くかは考えてますし、まずスプリング・トレーニングの間はもちろん待つしかない。じゃあシーズンが始まったらどうするか、というのは次の段階で。そこでもなかったら、じゃあどうする、ということは具体的に考えたことはあります。ただ、練習のプランは変わらないです。(ゲームに出るタイミングは?)いつでも大丈夫です」

 ―米国以外でのプレーを考え、迷うことはあったか。 

 「迷うことはなかったです。メジャーでやる気持ち。これのみでした」

 ―全てをささげたいという気持ちは初めて?

 「チームのためにプレーする時に、そのチームのために全力を尽くすというのは当然です。どのチームでもそうです。最初の3年ぐらいを除けば。3年結果を出さなければ消えていくだけなので。やっぱりこういう状況になって、特に年齢のことというのはみんながなぜか気にすることであるので。例えば年齢も40歳以上の選手は採用しない、雇わないという考え方だったら、自動的に省かれるわけですから。でも、こういう今の少し違う野球になってきた時代だと思うんですね」

 ―FA市場や契約で年齢がネックになる?

 「理解できる部分で言えば、実際にその年齢に達した選手は20代、30代の時と同じように動けている例が少ないという。これは歴史から見る、導かれる答えというか。そういう観点から言えば理解できる。ただ、どうやって、そこまで過ごしてきたか、ということによって、同じ年齢でも状態としては違うということは当然なんだろうと。そういう見方をすれば、それだけでくくるのはどうなのかな、という思いはあります」

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