イチローを目に焼き付けよう…試合前練習登場にファン人だかり

スポーツ報知
ファンにサインするイチロー

 大リーグ観戦の楽しみの1つとして、早めに球場に来て、売店チェックや各球場の名物フードを試食する以外に、試合前練習をみることがある。24日(日本時間25日)、マリナーズ戦を行ったレッドソックス本拠地のフェンウェイ・パーク。ナイター明けのデーゲームで、両軍共に全体練習はなかったが、この日のボストン・ファンは幸運だった。

 サッカーW杯の日本対セネガル戦開始直後の午前11時過ぎだった。マリナーズのイチロー球団会長特別補佐(44)がグラウンドに現れ、キャッチボールを開始した。徐々に距離を伸ばし、センターのブルペン壁際まで後退する遠投を行った後、再び距離を縮め、捕手を中腰にして投球練習を行った。全力で直球を投げた後、スライダー、スプリットも。中堅から左翼に向けてあるグリーンモンスター上段席は、カメラを構えたファンで人だかりができた。

 普段と変わらないルーチンを終えたイチローは、観客席に歩み寄り、ファンにサインを行った。「将来の殿堂入りだからね。プレーはみられないけど、宝物になったよ」という一般の男性ファンの言葉を聞いて、1996年の記憶が蘇った。

 ドジャース・野茂英雄投手の取材でカージナルスの本拠地をセントルイスのブッシュ・スタジアムを訪れた時のこと。試合前練習で最も注目を集めたのは、その年限りでの引退を表明していたオジー・スミスの守備練習だった。

 2002年に野球殿堂入りすることになる名遊撃手が、セカンドを一瞥もせずスローイングする神業的なドリルを、人々はその目に焼き付けようとしていた。

 この日の試合前のフェンウェイ・パークにも、そんな至福の時間が流れていた。

 イチローが来年どうなるか、それは、分からない。だが、イチローは、現役続行を目指して日々、練習を継続している。美しいスローイングをみながら、そんなことを考えていた。(ボストン通信員 一村順子)

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