星野監督「あいつに勝ち星つけるぞ」で1球勝利…元楽天・山村宏樹氏が秘話語る
中日、阪神、楽天の元監督で、現楽天球団副会長の星野仙一氏が膵臓(すいぞう)がんのため、70歳で亡くなった。2013年に楽天を日本一に導き、東日本大震災の被災地に希望をもたらした闘将の訃報に、東北は深い悲しみに包まれた。元楽天投手で現スポーツコメンテーターの山村宏樹氏(41)が、現役最後の2シーズンに監督だった星野氏との秘話を語った。
星野氏が楽天の監督1年目だった2011年。山村氏はプロ17年目。2軍キャンプからのスタートだった。6月に1軍昇格。宮城・利府町の練習場から北海道・旭川遠征中の1軍に慌てて合流した。
「監督が『山村を呼べ』と言ってくれたと、後で聞きました。結果は打たれたけど、(監督は)1軍に上げたら、すぐ使っていただいた」
その年の8月25日の日本ハム戦。1―1の7回裏、4番手で登板した山村氏は、プロ野球史上32人目の「1球勝利」(2○1)を挙げた。
「リリーフで僕が中田翔を1球で打ち取り(左飛)、ベンチに帰ってきたら、監督が野手に『あいつ(山村氏)に勝ち星つけるぞ。よーし、行け』とハッパをかけてくれた。当時の僕の主な役割は、負けている試合のリリーフ。そんなベテランに気を使ってくださったんでしょうが、うれしかった。直後にチームが本当に勝ち越したんですよ。試合後には『ごほうびだな。もう1回頑張れ』と言っていただきました」
現在、山村氏は仙台市を中心にスポーツコメンテーターの仕事をする一方、母校の山梨・甲府工野球部の非常勤コーチを務めている。
「監督は勝ちにこだわり、『優勝する』と言葉に出し続けた。僕が高校球児を教えることになったときも『子供達の夢をかなえてあげたいなら、高校生自身が夢を言葉にして甲子園、甲子園と言い続ける―そういう指導も必要だ』と教えていただきました」
甲府工の、今年の練習始めとなった5日、山村氏は生徒に、星野氏の名前を出して、その教えを伝えた。その翌日に知った訃報。
「今朝(6日)、テレビをつけて言葉を失いました。生徒に監督の言葉を伝えたばかりだったので」
闘将は逝ったが、その教えは世代を超えて脈々と受け継がれていく。