落合博満氏が2000安打達成のソフトバンク・内川をオレ流解説「ヒットの延長がホームラン」

スポーツ報知
落合博満氏

◆西武0―3ソフトバンク(9日・メットライフドーム)

 通算2000安打を達成したソフトバンク・内川の打撃を、日本プロ野球史上唯一となる3度の3冠王で、通算2371安打の落合博満氏(64)が“オレ流”に解説した。両者は、右打者で歴代1位の7年連続打率3割以上という共通項もあり、中日監督として見てきた打者としての特徴、自分との違いについても語った。

 この写真(〈〉内数字は8枚の連続写真を左から数えた順番)を解説するにあたって、一番重要視しなければいけないのは〈3〉〈4〉の2枚。内川の良さがここにある。この形が作れるから2000本ものヒットを積み重ねることができる。

 〈2〉から〈3〉へ左足を下ろしてくる時、手と足を一緒に上げていくタイプっていうのは足が下がってくる時に手も一緒に動くことが多い。ただ、内川はグリップエンドの位置が高いまま、腕が張れている状態を保つことができている。

 トップ(スイングの動き出しの位置)が深い位置にあるのも特徴。ボールとの距離を作ることができている。いわゆる間があるから、いろいろな球種、コースに対応できるし、ボールだと思えば途中でバットを止めることもできる。スイングスピードも出る。体の遠いところから振りなさい、ということだ。

 次にいいのは〈7〉〈8〉の振り抜き。〈7〉まで手首を返さず、最後までヘッドの遠心力を使えている。バットをこねていない。こね回すとバットが波打つ。最後は前へ放り投げるイメージ。到達点まで行ってから〈8〉で肘をたたんでフォローに持ってくる。最後、バットが肩のラインに収まっている。無理に上げすぎようとしていないのもいい。

 あえて難を言うなら〈5〉で右膝が折れて、落ちてしまっている。そのせいで右肩のラインも下がって受ける形になってしまっている。〈4〉の肩のラインを保ったまま水平に回ってくれば理想だが、それを補えるだけのものが〈3〉〈4〉にある。理想のバッティングっていうのは試合ではなかなかできない。それはあくまで一番打ちやすいボールに限ったことだから。

 試合は応用編。練習では理想のフォームで打てることができても、試合では相手も打たせまいと思って投げてくる。これはあくまで技術、応用編の世界。ただ〈3〉〈4〉までの打つための準備っていうのはいいものを作れるし、作らないといけない。準備ができるから対応できる。

 〈3〉〈4〉と〈7〉〈8〉だけをみれば、シーズン30本塁打とかもっとホームランを打っていても不思議ではない。ただ、打席に入った時の意識の問題というか。ヒットの延長がホームランというかね。俺は現役の頃、ホームランの打ち損ないがヒットだと思っていた。内川はホームランを狙いにいく感じではないと思う。ヒットを打ちにいって、打ち損なってもヒットゾーンに運ぶというか。それは人それぞれの意識の違いだから。

 このスイングができればコース、球種に対応して満遍なく打てる。グラウンドの幅も使えるしね。内川は「右打ちが上手」って言うけど、覚えてしまえば簡単なこと。フェアゾーンは360度の4分の1、90度しかない。センターを中心に45度ずつと考えれば、あとはバットを出す角度だけだから。走者が一塁にいると一、二塁間や三遊間が広くなるとか状況に応じて考えてやればね。それを覚えるか覚えないかだけの話で、内川にはその技術を得るために費やした時間があるということ。この世界で生きていくにはそれが必要。今は4番を打ってるけどタイプ的には3番ではないかな。

 横浜(現DeNA)時代に中日の監督として対戦しているが、ベンチの考え方は内川と村田(修一=現BCリーグ栃木)では全然違った。内川に関して言えばヒットを打たれる分にはどうぞ。フォアボールもヒットも同じというスタンス。その代わり、率は残すだろうと。「ホームランだけは打たれるな」っていいながら結構、打たれたことがあるんだけど。村田の場合は10回アウトになっても11回目にホームラン打つかもしれない。それだけはダメだよ、と。内川はヒットOK、村田はフォアボールOK。怖いのはどちらかというと村田だった。一発っていうのはゲームが決まってしまうから。ただ、吉村(裕基=現ソフトバンク)も含めた主軸3人のなかでの役割分担っていうのは決まっていたと思うよ。

 今年の打率は2割を超えた程度。内川も7年連続で打率3割以上打っていたように、毎年、3割を打つバッターというのはこういう時、全く打てていない気がしていると思う。俺もそうだった。例えば打率3割と2割台後半っていうのは1年で(安打数は)10本も変わらないんだけど、シーズンを通じて全く打てていない感覚になる。ただ、2000安打を達成したことで変な気負いもなくなると思う。ここから本来の姿を取り戻すでしょう。

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