ファウルがビデオ判定で決勝弾も再検証でファウル 試合後“リプレー誤審”認めた

スポーツ報知
10回2死一塁、ライトポール際に打球を打った中村晃

◆オリックス3―5ソフトバンク(22日・ほっともっと神戸)

 リーグ戦再開初戦のオリックス―ソフトバンク戦(ほっと神戸)で大誤審が起きた。延長10回、ソフトバンク・中村晃が放った右翼ポール際への打球はファウルと判定されたが、ソフトバンク・工藤監督のリクエストで本塁打に。これが決勝2ランとなりソフトバンクが勝利したが、試合後、オリックス・福良監督の抗議を受けた審判団が再検証を行った結果、ファウルだったことを認めた。今季から導入されたリクエスト制度で、まさかの“リプレー誤審”が発生した。

 試合終了から約1時間後、責任審判の佐々木二塁塁審が、誤審を認めた。報道陣に「(審判団と)いろいろ話しました結果、(当初のファウルの)ジャッジ通りだった」と説明した。試合後、オリックス・福良監督や球団首脳とともに異例ともいえるビデオ“再検証”を行い、ホームランではなくファウルだったとの最終結論を出した。

 問題の場面は同点の延長10回2死一塁。ソフトバンク・中村晃の右翼ポール際のスタンドに飛び込んだ飛球は、ファウルと判定された。しかし、工藤監督のリクエストにより、審判団は約3分間のリプレー検証を行った。その結果、判定を覆し、本塁打とした。これが結果的に決勝2ランとなった。

 この打球を巡る検証のビデオは、本拠地球場でないということもあり、バックネット側からの一方向のみだった。この時点での判定について佐々木責任審判は「ポールにボールが隠れている(ポールを巻いた)ように見えたため、審判団と話して本塁打にした」と説明した。

 リクエストの判定に異議をとなえることは許されないため、福良監督は試合終了直後に抗議した。ベンチ裏の通路で審判団をつかまえて大激怒。「誰が見てもファウルやないか!」「しっかり見てくれよ!」「なんであんなことが起きる」と声を荒らげた。10分近い激論の末、審判団とオリックス球団側がビデオ“再検証”することになり、ファウルという最終的な結論に至った。

 審判側は福良監督や球団に誤審と認めたものの、試合結果や選手成績は覆らないという。審判団の処遇や、この件の処理についてはNPBにゆだねられることになった。オリックスはこの大誤審で、試合に敗れて4位に転落。ペナントレースの結果も左右しかねない事態となった。

 ◆誤審経過

 ▽3―3の延長10回2死一塁。ソフトバンク・中村晃の右翼ポール際への打球はファウルと判定。

 ▽協議していた審判団が、ベンチを出たソフトバンク・工藤監督に「リクエストされますか」と確認。工藤監督が藤本打撃コーチらの進言を受けてリクエスト。

 ▽3分間のやや長めのビデオ検証の結果、本塁打に判定が覆った。これが決勝2ランに。

 ▽試合終了直後、オリックス・福良監督が通路で猛抗議。審判団は約20分間、福良監督、長村球団本部長、横田球団本部長補佐らオリックス球団幹部も交え、ビデオ映像で再確認。誤審だったことを認め、オリックス球団に説明し、NPBへ報告した。

 ◆2018年度パシフィック・リーグアグリーメント

 ▽第55条(リプレイ映像使用)

 別紙21 4 リプレイ検証にあたっては、グラウンド審判室に設置されたモニターの中継映像のみを使用する。実際に放映されなかった別角度からの映像などは使用しない。

 別紙22 8(6)リプレイ検証によって出た全ての決定に対して異議を唱えることは許されない。異議を唱えた場合、監督は試合から除かれる。(原文まま)

 ◆3年前は逆の誤審

 15年9月12日、甲子園で行われた阪神―広島20回戦の延長12回に広島・田中が放った中堅への飛球がビデオ判定の末に三塁打と判定され、結局その回に得点は入らず2―2で引き分けた。翌日、広島の鈴木清明本部長が再検証を求めると、14日にNPBはセ・リーグの杵渕和秀統括、NPBの友寄正人審判長が映像を再検証。打球は本塁打だったと判断し、公式に誤審を認め、当時の熊崎コミッショナーも謝罪した。広島はこの年、結局4位に終わったが、この試合に勝っていれば3位の阪神を抜いていただけに“世紀の誤審”と言われた。

 ◆オリックスは要望出す

 オリックスはNPBに何らかの形で要望を出す方針を示した。今回の一件は、検証結果に抗議できないことも要因となり、長村球団本部長は「リクエストに抗議できないのであればリクエストの意味がない」と首をかしげた。横田球団本部長補佐は「意見書といっても、向こうは誤審を認めている。シーズンの結果にも関わる。制度を考えてもらわないと」と強調した。

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