【グレ釣りの名手藤原義雄の南紀直送便】ゼロスルスル釣法の誕生秘話・前編

スポーツ報知

 もう27年ほど前になるだろうか。0号のウキを使い、ウキ止め糸を付けずにタナを固定しない、いわゆるゼロスルスル仕掛けのきっかけになったものがあった。

 一切オモリを使わず、水面ギリギリに浮くゼロウキを固定にして釣る方法だ。オモリを使わないのは、グレはより自然に沈む餌を好むと思ったから。ウキを固定するのはアタリがハッキリ出るからだ。

 これを駆使して当時、頻繁に通っていたすさみの口和深で好釣果を上げていた。自分なりにこの仕掛けを最高だと思っていた。

 ある日、よく釣れていた「トヤ」という磯に上げてもらった。この日はベタ凪、無風で最高に釣りやすい状況。開始30分ぐらいで数尾、グレを釣った。グレはよく見えていたし2ケタ釣果は間違いない手応えだった。

 ところが、1時間ぐらいたつと潮の流れが緩くなったこともあり、パタッと食わなくなった。グレが沈んでしまったのかと、まき餌をまいて海中をのぞくとアッと驚いた。何とグレはたくさんいた! まき餌も拾っているじゃないか。「なぜ釣れないのだ…」。観察するとハリの付いた餌だけを完全に無視していた。でも時々、刺し餌はなくなっていた。餌取りは居なかったので、取っていたのは明らかにグレ。ただ、ウキにアタリが全く出なかったのだ。

 意地になってタナ、ウキ、ハリス、ハリを様々に交換。見えているグレをしつこく攻め続けた。相変わらず食わなかったが刺し餌は時折、なくなった。ウキがピクッとでも動いたら即、合わせる作戦にした。結果は出なかった。

 しばらく休憩してから再開。いきなり食ってきた。それも1尾だけではなく連発だ。不思議に思って仕掛けを点検すると、道糸にウキを固定していたつまようじが外れてフリーになっていた。ウキもギリギリ水面に浮かぶものに交換しており、それが功を奏したのだ。

 この瞬間にゼロスルスル釣法は誕生したが、今のものに到達するには、さらに長い時間がかかった。水面ギリギリに浮かぶウキを作るのが、とにかく厄介だったのだ。

 ※次週の後編に続く。

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