大竹しのぶ、芝居は恋愛「さあ、どんな演技見せてくれるの―」「―きょうはこんな感じです」

2016年8月26日15時2分  スポーツ報知
  • 大竹しのぶ

 女優の大竹しのぶ(59)が主演する映画「後妻業の女」(鶴橋康夫監督)が27日に公開される。原作は直木賞作家・黒川博行氏の「後妻業」で、大竹は主人公の武内小夜子を演じている。「原作はちょっと裏社会の暗さがありますが、小夜子には罪悪感がみじんもなくカラっとしていて、演じていて楽しかった」という。高校1年でドラマデビューし、翌年に大作「青春の門」(浦山桐郎監督)、高3ではNHK朝の連続テレビ小説「水色の時」のヒロイン役に。10代から役者の王道を歩み、日本を代表する女優は芝居をすることを宿命として受け止めているようだ。

 主人公の小夜子は資産家の老人を次々に色香で籠絡し、後妻に入っては金品を巻き上げる“後妻業の女”だ。コンビを組む結婚相談所所長役の豊川悦司(54)とは新藤兼人監督の「一枚のハガキ」などで共演しており、心強かったという。

 「小夜子はとんでもない女ですが、パワーがあって自分が不幸になるワケがないと信じている。お金を取るという目的に向かって毎日走っている感じで、撮影していて楽しかったです。豊川さんとはプライベートでも新藤監督を交えて一緒にご飯を食べに行ったり、仲良くしていたので心の中でご一緒できれば、と思っていました。映画の舞台が大阪なので(同地出身の)豊川さんのセリフのリズムにも助けられました」

 ―原作は知っていた。

 「『面白そうだな』と思って本屋さんで買って読みました。きっと映画になると思ったけど(原作で小夜子は)70歳ぐらいのおばあさんで、自分はそこまでの年じゃないから、話が来た時には『私はそんなおばあさんなの』って思いました(笑い)。鶴橋監督が『チャーミングにするから』と、原作より若くしてくれ、暗いお話を爽やかで小気味よい悪女に仕上げていただきました。『黄昏のビギン』を歌いながら注射を打って(夫を)殺しちゃうシーンはおしゃれですよ」

 9番目の夫(津川雅彦)の娘、尾野真千子(34)が父親の死に疑問を抱き調査を進める中で、小夜子の正体が次第に暴かれていく。尾野との壮絶な殴り合いシーンも見どころの一つだ。

 「真千子ちゃんは私を『大御所』と呼んでくれて仲良くなりました。(ケンカのシーンは)一応の流れはありましたが、ビンタとか髪の毛の引っ張り合いはアドリブ。ビンタが決まった時は『よし入った!』って気持ちはいいんですが、真千子ちゃんの顔がみるみる赤くなってきてね。2人で興奮状態になって撮影を楽しむ感じでした。この長回しのシーンを現場では『1回でいこう』と。みんな気合が入っていて1カットにかけるという、これぞ映画の醍醐(だいご)味を久々に味わいました。1回でOKが出て大盛り上がりでした」

 高校時代はどこにでもいる普通の女学生だった。芸能界入りのきっかけはドラマ「ボクは女学生」のオーディション。そこから映画「青春の門」、NHK「水色の時」でヒロインに抜てきされていく。

 「父が教師だったので、私もいずれは先生になりたいと思っていました。妹とテレビを見ていたらフォーリーブスの北公次と共演できる募集が…。コーちゃんに会えるかもというミーハー感覚で受けたら合格。ドラマの脚本を書いている方に『青春の門』のオーディションの話をいただき、運良く映画も決まりました」

 ―ご両親は応援してくれた。

 「親は反対で、学校を休むことにいい顔をしませんでした。父が大好きな『キューポラのある街』を浦山監督が撮っていたことを知ると、態度が急に変わって『頑張りなさいよ』という感じになっていました(笑い)。高2で映画、高3で朝ドラに出演しましたが、やはり学校を休むのは心苦しくて、ドラマが終わったらやめようとも思っていました」

 注目の若手女優となり、次々に出演依頼が舞い込むが、仕事に前のめりになることはなかった。職業としての役者を意識したのは友人のひと言だったという。

 「お芝居が楽しいと思ったのは『青春の門』からですが、職業欄に俳優と書くのを意識したのはそこから2年ぐらいたってからです。初舞台を見に来た高校の友人から『もう、しのぶは自分の道を見つけたんだね』と言われました。カーテンコールに立った私の顔を見て思ったそうです。この時、『私はこの道なんだ。もう職業を持っているんだ』と初めて気づかされました」

 ―初舞台は大御所・宇野重吉氏の演出だった。

 「18歳の時ですが不安は全くなかったです。宇野先生ということで出演者みんなが緊張していました。私はずうずうしいのか、とにかく稽古が楽しくて楽しくて…。出番の多い役ならもっと先生から教えてもらえるのにと思ってました。ドラマは役になる楽しみ、映画には1カットに懸ける喜びがありますが、1か月毎日稽古ができる喜びは舞台しかないです。稽古でこれだけ楽しいんだから本番はもっと楽しいだろうとワクワクしていました」

 日本を代表する女優として故・蜷川幸雄氏始め野田秀樹氏、栗山民也氏とそうそうたる演出家からラブコールを受けてきた。大竹は舞台では自分のスタイルを貫いているが、意見が合わなかったことはないそうだ。

 「演出家の先生で(自分の演じ方が)変わることはないです。台本を読んで『私はこういうお芝居をします』と、私がやりたいものを提示をする気持ちで稽古に臨みます。すごい感じ悪いかもしれませんが、今まで演出家の先生に何か言われたことはないですね。(蜷川氏の)灰皿が飛ぶこともなかったです。先生はいつも笑っていて、私が芝居することでニコニコしてくれることが喜びでした。『さあ、どんな芝居見せてくれるの』『今日はこんな感じです』という空気感で、一種の恋愛というか、この人に喜んでもらいたいというのはありました」

 “大竹しのぶ”の名前が表舞台から消えたのは2度目の結婚をして長女を出産をした時だ。子育てのため1年半ほど休んだ時に、今まで味わったことがない感情に全身が襲われたという。

 「娘が生まれて普通にお母さんをやっていたんですが、ある日、何か細胞が塞がれている感じがして『芝居ができなくて、なんだろうこの気持ち。お芝居したいお芝居したい』という感情が一気にあふれました。感情をどこへ持っていけばいいんだろうって…。この時に自分は本当に芝居が好きなんだなと実感しました。自分が結婚に向かないとは思わないし、両立もできないことはないと思う。ただ芝居をしている時が自分を解放しているという感じで楽なんです。どんなに疲れても体が動かなくても、2時間半前に劇場へ行ってストレッチして何か食べて声出す。幕が開くと『こんな元気なんだ、私って』というぐらいエネルギーが湧きます」

 芝居の神様に選ばれて、愛されている。演じることから一生逃れられない十字架も、彼女は望んで背負っているのだ。

 ◆大竹 しのぶ(おおたけ・しのぶ)1957年7月17日、東京都生まれ。59歳。74年にフジテレビ系「ボクは女学生」の一般公募でドラマ出演。75年に映画「青春の門」のヒロイン役で本格的デビュー。同年、NHK「水色の時」に出演し、国民的ヒロインとなる。78年に「事件」などで報知映画賞最優秀助演女優賞を受賞し、その後は日本アカデミー賞や菊田一夫演劇賞など映画、演劇界で数々の賞を受賞。2011年には紫綬褒章を受章した。88年に明石家さんまと再婚し、89年に長女(IMALU)をもうけるが92年に離婚。血液型A。

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