降旗康男監督、「若き日の健さんと重なる」岡田准一の姿 映画「追憶」6日公開

2017年5月4日16時0分  スポーツ報知
  • 木村大作カメラマンと「追憶」の撮影に臨む降旗康男監督
  • 本紙インタビューに応える降旗康男監督
  • 完成披露舞台あいさつでの降旗康男監督
  • 完成披露会見で笑顔を見せる(左から)木村大作、吉岡秀隆、木村文乃、柄本佑、小栗旬、長澤まさみ、安藤サクラ、降旗康男監督

 2014年に死去した名優・高倉健さん(享年83)の主演作を撮り続けてきた降旗康男監督(82)の新作「追憶」が6日に公開される。偉大な先人を継いで主演を務めたのは岡田准一(36)。降旗監督は両者の共通点を「役柄より実人生の方が重く、何かを背負っているなと感じるところ」と見つめる。在りし日の名優の姿を追憶しながら撮影に臨んだ。

 荒れ狂う海、水平線に沈む夕日、土砂降りの雨、辺りを覆う純白の雪、山を望む町、心の奥底に悲しみを抱えた4人の男と3人の女…。ファーストカットからエンドロールまで、完璧な「降旗康男の映画」である。心に傷を負った人を描くことは、映画を撮り始めた半世紀前から一貫している。

 「立派ではない人の温かさや美しさを、純粋な形で受け取る側につないでいくのが映画だと思っているからでしょうか。映画は作っても完成しないもので、見る者が何かをくみ取ることで広がっていく。広がりを持つために、一番共感を誘うのはマイナスの人間像なんじゃないかと、いつも思うんです」

 2014年11月、心に傷を負った男を目の前で演じ続けた人を失った。44年間、20本の主演作を撮った高倉健さんを亡くした3か月後の翌15年2月、失意の底にいた監督の元に届いたのが本作の原型になる脚本だった。

 「最初から強く興味を引かれたシナリオでした。人物設定を変えれば、もう一つボルテージの上がる作品になると思ったんです」

 映画人の血がたぎり、自ら作品化に舵(かじ)を切った。

 「茫(ぼう)然自失の自分から抜け出すためには、何かを作るよりしょうがなかった。自分の弱いところを立て直そうと思った。僕自身の救済のためでもあったんです」

 共に健さんを追い続けた木村大作カメラマン(77)と10年ぶり16作目のタッグを組み、先人を継ぐ主演俳優に岡田准一を迎えた。

 「健さんと岡田さんでは個性が違いますが、役柄よりも実人生の方が重く、何かを背負っているように見える姿が似ていた。架空の人物に入っていくのではなく、自分の中に役を引きずり込んでいく俳優さんになったら面白いと(岡田の代表作)『永遠の0』を見た時に思ったんです」

 正統派の二枚目で、アイドルでありながら、本格俳優の道を歩み出した岡田の姿を若き日の名優と重ねた。1957年、新入社員の助監督として出会った26歳の健さんは「二枚目すぎる男」だった。

 「東映は売り出そう売り出そうとしていましたけど、とにかく顔も体格もいいスターという印象で、いわゆる俳優としてのオーラはなかったんです。リアリズム作品を撮る監督からは敬遠されたりもしていた」

 周囲の視線が変化したのは、高倉さんが34歳で主演した「日本侠客伝」(64年)の頃だったと回想する。

 「本当は中村錦之助(後の萬屋錦之介)さんが主演するはずだったのに、健さんに回ってきた。健さんは俳優を辞めるか辞めないかの時と、まなじりを決して(決意して)挑んだ。すると『錦之助さんより迫力があったね』と評判になって、変わっていったんです。岡田さんも同じで、あと何本かやっていけば健さんのようになっていける年代を迎えていると思います」

 岡田への期待感は本作の演出方法にも表れた。

 「岡田さんに言ったんです。台本通りでなくていい、ダイアローグ(セリフ)の通りでなくていいって。『岡田准一の有りさまを示してくれ』と。邪魔しないからと」

 事実、岡田がアドリブで小栗に向かって「俺たちはもっと早く出会うべきだった!」と叫んだセリフは、作品の象徴になった。

 「殻を破ってくれたら、もっと大きな俳優さんになるんじゃないかと思います」

 若い役者を撮りながら育てたのは、今も未来への夢を抱きながら生きているからだ。

 「僕は、きっと活動屋の水が合っているんでしょうね。性に合ったというか。悔いはないですよ」

 悔いはないが、まだ退く気持ちもない82歳は優しい顔をして笑った。

 ◆降旗 康男(ふるはた・やすお)1934年8月19日、長野県松本市生まれ。82歳。57年に東大文学部を卒業し、東映入社。66年「非行少女ヨーコ」で監督デビュー。69年の「新網走番外地 流人岬の血斗」で初めて高倉健さんの主演作を監督。以降、「駅 STATION」「居酒屋兆治」「ホタル」や、高倉さんの遺作となった「あなたへ」などでメガホンを執る。99年には「鉄道員」で日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞。

 ◆「追憶」あらすじ

 幼なじみだった少年3人が25年後に殺人事件の刑事(岡田准一)、容疑者(小栗旬)、被害者(柄本佑)となって再会する。親に捨てられ、かつて女主人の営む喫茶店に身を寄せていた3人は、ある出来事を機に心に傷を負い、別れ、それぞれの人生を歩んでいた―。刑事の妻を長澤まさみ、容疑者の妻を木村文乃、喫茶店の女主人を安藤サクラ、常連客を吉岡秀隆が演じる。99分。

さまざまな背景を抱えた刑事を演じた岡田准一((C)2017映画「追憶」製作委員会)

 ◆ワンポイント 

「レジェンド」なる表現も、2人に対して使うと軽薄に聞こえるのは気のせいだろうか。降旗×木村コンビの織り成す日本的、あるいは昭和的映像美は衰えを見せるどころか、むしろ輝きを増している。私など、タイトルロールを見終えた時点で1000円分は満足してしまったくらいだ。千住明による音楽も優しく美しい。主演映像賞と助演音楽賞を進呈したくなるような作品である。

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