山田洋次監督の夢は新派喜劇「もっとやりたい」…舞台「家族はつらいよ」

2018年1月12日14時0分  スポーツ報知
  • 新派でも山田ワールド全開。妻から離婚理由を聞き、夫が倒れる寸前のシーン
  • 初日にあいさつした山田洋次監督
  • 妻(水谷八重子)が夫(田口守)に隠し持っていた離婚届を見せる衝撃の場面

 創始130年を迎えた劇団新派は、東京・三越劇場で山田洋次作・演出による「家族はつらいよ」(25日まで)を上演中。ヒット映画の舞台版で、脚本や構成を練り直してリニューアルした。新派といえば、悲劇のイメージが強いが、“新派の救世主”山田監督のもと、実力者ぞろいのメンバーが喜劇に挑戦。客席は連日、笑いと涙に包まれている。(内野 小百美)

 山田監督が130年の歴史を持つ新派を手掛けるのは、小津安二郎監督の映画を舞台化した「麥秋」(2010年)、「東京物語」(12、13年)に続いて5年ぶり、3作目。新派は映画、歌舞伎と並ぶ松竹の財産だが、「映画監督の僕が新派を演出することはまったく考えもしなかった」。しかし、山田監督の参加で世間の注目度は飛躍的に上がった。“新派の救世主”として、いまや行く末のカギを握る一人となっている。

 今年で87歳。「僕に“働き方改革”はまったく関係ないんだよね」と苦笑する。それもそのはず。5月公開の映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3」の撮影を終えると、すぐ今作の稽古に突入。大みそかに舞台リハーサルを終え、2日に開幕した。

 テーマの熟年離婚こそ同じだが、映画版とは違った世界が広がる。客席は、笑い声が聞こえたかと思うと、いつの間にか涙をぬぐう人も。初日の乾杯後、出演者、スタッフが安堵(あんど)する中、「もっと良くしたい」という山田監督は「これからもう一度、稽古します」と呼び掛け、出演者たちを驚かせた。

 「俳優は喜劇に戸惑っただろうが前2作やって、できる確信があった。家族的な新派しか出せないものを。コメディアンがウソっぽい笑いを取るのとは違う。どこまでも真面目に演じる中で生まれるおかしみを大事にしたい」

 新派を率いる水谷八重子(2代目)が、映画で吉行和子が演じた平田富子役。長年、連れ添った夫・平田周造(田口守)に積年の不満と離婚の決意を突然ぶちまけ、家族じゅうはパニックに。周造は激しいショックで倒れ、救急車で運ばれる。

 水谷は「監督からは『今回は僕の頭の色をイメージしてほしい』と言われ、私も白髪に。山田監督と巡り合えたことはうれしく、私たちは本当に幸せ者です。松竹に叱られるかもしれませんが、監督には年に一度は演出をお願いしたいです」

 映画を見た人は、小ぶりの三越劇場でどう場面が変わっていくのか気になるだろう。例えば周造夫妻の部屋は2階だが、舞台では息子夫婦のリビングと隣り合わせの構造になっている。

 山田氏は「2つの部屋で話が同時に進む。これは最初から考えていたことでね」と話し、「観客が、そのどちらかを選びながら見ていくのもいいな、と思って」と意図を説明する。

 新派は写実的な芝居で歴史を刻み、軽妙さより重い悲劇的な作品で定評を得てきた。

 「僕らが若い時、古い“新派悲劇”を軽視していた。なのに、いまその新派と組んでいる不思議さ。これから新しい“新派喜劇”というものをもっとやりたくてね。今の僕の夢なんですよ」

 【「新派」誕生メモ】 明治時代に「旧派」とされた歌舞伎に対し、新しい演劇の動きが起こり「新派」が誕生。政論宣伝の手段として壮士芝居の大阪上演(1888年)が源流。「オッペケペー節」で知られる川上音二郎が一座で上京。伊井蓉峰(ようほう)らが男女合同改良演劇の劇団を結成。離合集散を繰り返し、続いてきた。明治後期、大正には歌舞伎以上の人気を誇ったこともある。

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