【記者の目】小室哲哉「もうできない」探していた引き際「僕の中ではゴールしている」

スポーツ報知
記者の質問に応じる小室哲哉(カメラ・小泉 洋樹)

 音楽プロデューサーの小室哲哉(59)が19日、東京・南青山のエイベックスビルで会見を行い、芸能界を引退することを表明した。18日発売の「週刊文春」で看護師の女性Aさんとの不倫疑惑が報じられた小室は、会見でくも膜下出血で闘病中の妻・KEIKO(45)やファンに謝罪。「僕なりの騒動のけじめとして引退を決意しました」と明かした。1983年に「TM NETWORK」を結成してから35年。プロデュース作品の総売り上げは約1億7000万枚超。一時代を築いた男が、あまりに突然に表舞台から姿を消す。

 「また(90年代のような)音楽プロデュースの時代を―、みたいなことは考えていない。というよりは、もうできないですね」

 17年2月、インタビュー中でのひと幕。小室哲哉は「もうできない」とはっきりと言った。TKサウンドを聴いて育った記者が話をするのは初めて。「孤高の人」という見た目のイメージとは対照的に、何でも気さくに話す人だな。会話が盛り上がってきた後半とはいえ、衝撃を受けた。

 恐る恐る理由を聞くと、間髪入れずに「(プロデューサーとして)僕の中では、ゴールしているんです。やり切ってしまったから(今は)これまでのおさらいのイメージ。10代、20代の感覚は分からないから」。時代を築いたヒットメーカー。あの栄光を再びと、ヒット作品を作ることに力を注いでいるとばかり思っていた。燃え尽き症候群のようなフレーズは意外だった。

 引退会見の1年以上前から、自らの引き際を模索していた。世間的には突然の発表でも、小室の中では決まっていたことだった。「起爆剤」という言葉を使っていたが、背中を押すきっかけが週刊誌の不倫疑惑報道ではあまりに惜しい。

 印象的な言葉がある。

 「牧場でのんびりしたい」。余生について語った時、自らを競走馬に例えた。「乗り手がレコード会社やマネジメント会社。また誰か乗せるの? G1を走らなきゃいけないの? 競走馬の気持ちと全てが当てはまるんです…。一度、(名騎手の)武豊さんと対談してみたい。馬のコンディションも分かるだろうし」

 自らの健康問題や妻・KEIKOの介護疲れ、孤独の中で精神的に追い詰められていたかもしれない。信頼できる人間がもっとそばにいれば。それが看護師の女性だったのだろうが―。音楽界の功労者。きれいな形の引退が見たかった。(音楽担当・加茂 伸太郎)

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