市村正親、鹿賀丈史のW主演で黒沢映画が世界初ミュージカル化 上映から66年「生きる」

スポーツ報知
黒澤明監督の映画が原作のミュージカル「生きる」にダブル主演する市村正親(左)、鹿賀丈史

 9月に没後20年を迎える映画監督の黒澤明さん(享年88)の作品が、世界初ミュージカル化されることが18日、分かった。1952年公開の「生きる」で、俳優・市村正親(69)と鹿賀丈史(67)がWキャストで主演する。

 「世界のクロサワ」の名作が66年ぶりに“復活”する。

 没後20年記念作としてホリプロが企画・制作。黒澤さんの全30作品から、歌唱するラストシーンがあるなどミュージカルと一番相性がいいとして「生きる」が選ばれた。演出は宮本亜門氏(60)が手掛け、日本発のオリジナルミュージカルとして初の米ブロードウェー進出を狙う。

 黒澤作品の中でも「七人の侍」などと並ぶ最高傑作の呼び声が高い同作。胃がんで余命わずかと悟った市役所の市民課長・渡辺勘治が余生を公園づくりにささげ、雪の夜にブランコに座り「♪いのち短し~」で始まる「ゴンドラの唄」を歌いながら死を迎える感動作。名優・志村喬さん(82年死去)が演じた渡辺を市村と鹿賀が演じる。

 ともに劇団四季出身で、40年以上の親交がある2人。劇団退団後は5作目の舞台共演となる。黒澤さんと対面経験はないが、市村は舞台「NINAGAWA・マクベス」主演時に(マクベスが題材の)「蜘蛛の巣城」を研究するなど「黒澤作品はとにかくすばらしい」。鹿賀も「舞台の世界から映像の世界に飛び込んだきっかけは、黒澤明監督の作品への憧れがあったからだと思います」と思いは深い。

 30代の頃にラジオドラマで志村と共演するなどゆかりがある市村は、「僕自身も含めて、お客さんに『生きる』エネルギーを与えられたら」。鹿賀も「黒澤明監督没後20年の年に、お客さまの心に突き刺さるような、一生忘れない作品を届けたい」と力を込めた。

 10月に東京・TBS赤坂ACTシアターで上演される。

 <コメントは以下の通り>

 市村正親「黒澤監督の映画『生きる』をミュージカルにすると最初に聞いたときは、非常に目のつけどころが面白いと感じました。普段、私は海外で出来上がった作品に出演することが多いですが、今回はオリジナル作品ですので、新しい楽曲との出会いを楽しみたいと思っています。鹿賀丈史と同じ役をダブルキャストで演じるのは今回が二度目になりますが、それぞれの持ち味があるので、僕は僕、丈史は丈史で、作品に向き合うことになります。ただ、今回は丈史の方がこの役にぴったりだと感じていますけど(笑)演出の宮本亜門さんとは、スウィニートッド以来ですが、もともとダンサー出身の演出家なので、自分とは波長が合います。今回の物語の中で、主人公が、生まれて初めて夜の街を遊んでまわるシーンがありますが、亜門さんのアイデアが存分に発揮されて楽しいシーンになるのではと、今から楽しみです。僕自身も含めて、お客さんに『生きる』エネルギーを与えられたらいいなと思います」

 鹿賀丈史「この映画は、自分が2歳のときの作品です。今回、改めて映画を観ましたが、ミュージカルになる要素がたくさん含まれていることに気がつきました。黒澤監督もすごいタイトルをつけたと思いますが、「生きる」という意味を真剣にとらえて、お客さんに届けたいと思います。これまでは自分より若い役を演じることが多かったですが、今回は無理をせずに演じられる等身大の役なので、少し気がラクかもしれません(笑)。宮本亜門さんとは、ファンタスティックスという作品でご一緒していますが、とにかくエネルギッシュで、明るい方です。亜門さんのエネルギーが作品に与える影響は大きいと思います。海外生まれの作品を40年以上演じてきましたが、とうとう日本から世界へ作品を発信する時代が来たと思うと感慨深く、長くこの仕事を続けてきて良かったと思います。黒澤明監督没後20年の年に、お客さまの心に突き刺さるような、一生忘れない作品を届けたいと思います」

 演出家・宮本亜門氏「『世界のクロサワ』の作品であり、しかも名作『生きる』の初舞台化ができることはこの上ない名誉です。以前、お仕事をご一緒したことがある市村さん、鹿賀さん。舞台にとても真摯(しんし)に向き合うお二人が、余命少ない主役をそれぞれ違った個性で演じ、それを私が演出できると思うと身震いします。あと数日しか生きられないと宣告された時、人はその時、何を考え、何を知るのか。『生きる』ということを深く、またはユーモラスに展開する、ミュージカル版『生きる』。映画とは違う感動をお届けできるよう尽力します。」

 ◆「生きる」(1952年公開)生涯で30作品を手掛けた黒澤明監督の13作目。54年「第4回ベルリン国際映画祭」で市政府特別賞を受賞。2007年には松本幸四郎(現・白鸚)が主演し、テレビ朝日系でドラマ化された。今回のミュージカルでは、音楽はブロードウェーで活躍するジェイソン・ホーランド氏、脚本・歌詞はアニメ映画「アナと雪の女王」の訳詞を手掛けた高橋知伽江氏が担当する。

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