将棋の長谷部新四段、黒田投手から学んだ男気と地元・栃木へのこだわり

スポーツ報知
互いを祝福する長谷部浩平新四段(左)と池永天志新四段

 将棋の棋士養成機関「奨励会」三段リーグ最終節が4日、東京都渋谷区の将棋会館で行われ、長谷部浩平三段(23)と池永天志(たかし)三段(24)がそれぞれ2連勝し、通算14勝4敗で四段(棋士)昇段を果たした(正式な昇段日は4月1日付)。

 前節終了時点で上位9人に昇段の目があった激戦を制した長谷部新四段は「(奨励会時代は)とても長かった。まだ実感はないです。今期も苦しい戦いが多かった。他の方の成績は気にせず、自分の将棋に集中しようと思いました」と控えめに喜びを口にした。両親には「今まで苦労を掛けて申し訳ありませんでした。今後とも宜しくお願いします」と電話で伝えたという。

 栃木県出身者としては1937年の故・永沢勝雄八段以来、81年ぶりの四段昇段となった。「地元の方が応援してくれていますし、戦後出ていなかったので、地元の普及も頑張りたいです」。趣味は野球観戦で「広島の黒田(元)投手が好きでカープを応援しています。単純にカープが大好きなんです」と告白。「選手がどんどん出て行ってしまう球団なのに、黒田投手は21億円のオファーを蹴ったのがすごい」と男気に惚れている。「自分もそういうの(男気)が好きなんです」

 出身地の栃木県小山市に今も在住。地元にこだわり続ける姿は、自らを育てた球団への恩返しを最優先させた偉大な右腕とも重なる。「県外に出て将棋を頑張るのは違う、責任を欠くと思いました」。宇都宮大学教育学部を今月卒業する。「同級生が就職活動とかをしていて焦りはありましたけど、もう引き返せないと思いました」。胸を張って春を迎える。

 調査書に記した得意戦法は「居飛車力戦型」。通常は「矢倉」など戦型名を挙げるが、あえて定跡にとらわれない「力戦」と書いた。「綺麗な将棋でなくとも簡単には崩れないのが自分の長所だと思っています。(数々の新手を指した伝説の棋士)升田幸三先生(実力制第四代名人)に憧れています。直系の弟子なんです」。師匠を選ぶ際も、升田名人の孫弟子にあたる大平武洋六段(40)にお願いした。

 一方の池永新四段は、16歳の時に三段昇段を果たしながら8年16期にわたってリーグを戦い続けた苦労人。ついに悲願を成就させた。「ホッとしたのが一番です。運が良かったというか、自分の実力以上の結果が出ました」。三段昇段当初は下位で低迷し続け、降段点も取ったが、成長を続け、近年は昇段争いに絡んでいた。「長かったような、あっという間だったような感じです。最初は若かったというか、年齢的に切羽詰まってなくて。なかなか上がれなくて、年齢もだいぶ厳しくなってしまった。でも、次また勝てばいいと思うようにしました」。1日に7~10時間に及ぶ研究で夢をつかみ取った。

 居飛車党。目標の棋士として、同じ関西所属の豊島将之八段(27)と斎藤慎太郎七段(24)の名前を挙げた。関西には藤井聡太六段(15)もいる。「あまりにも見習うことばかりです。対戦するとしたら…強敵だなと思います」

 偶然にも、長谷部新四段が「憧れ」と評した黒田元投手の母校である上宮高(大阪市)の卒業生。やはり「大リーグから広島に復帰された時、21億円を蹴ったことが印象に残っています」と語っていた。

 〇…女性初の棋士を目指しながら、年齢制限による退会が決まっていた里見香奈三段(26)=女流名人、女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花=は2連敗を喫し、通算7勝11敗で挑戦を終えた。今後は女流棋士として男性棋戦に参戦し、規定の成績を残して三段リーグ編入試験、あるいは棋士編入試験を受ける道が残る。里見は今後について「今は何も申し上げられません。これからの事はゆっくり考えたい」とのコメントを日本将棋連盟を通じて寄せた。

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