「オッサンをミュージカルに連れて行きたい」ホリプロ社長が「メリー・ポピンズ」にかける思い

スポーツ報知
日本での初上演が決まった「メリー・ポピンズ」(c)Disney/CML

 1月にスタートした演劇企画「感動のHo!庫」も3回目。今回は18日に開幕するミュージカル「メリー・ポピンズ」(東京・東急シアターオーブ、5月7日まで)を特集する。1964年に公開され、アカデミー賞5部門を受賞した世界的大ヒット映画のミュージカル化。06年にロンドンで観劇してから、10年がかりで日本公演を実現させた主催のホリプロ・堀義貴社長(51)に作品への思い入れや魅力を聞いた。(土屋 孝裕)

 ウォルト・ディズニー自らがプロデュースし、ミュージカル、アニメーション、実写が一体となった映像で世界中を驚かせた映画「メリー・ポピンズ」。フィギュアスケート女子の浅田真央さん(27)が2012~13年のエキシビションに同作の楽曲をメドレー形式で使用し、映画に主演したジュリー・アンドリュースさながらに傘を持ったパフォーマンスでも話題を呼んだが、今度はミュージカルとして日本に初上陸する。堀社長は「メリーが観客の頭上を飛ぶフライングシーンは、日本版が世界最長なんです。本当にファンタジックです」と自信をのぞかせた。

 堀社長が、友人の振付家マシュー・ボーン氏の勧めで英ロンドンの劇場を訪れ初観劇したのは、06年に遡る。製作はディズニーと、「CATS」「レ・ミゼラブル」などを手がけた世界を代表するプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュ氏。内容はもちろん、3階建ての家がステージを上下する巨大なセットに度肝を抜かれた。「映画で曲は全部知ってるし、客席は老若男女であふれてるし、すごいとは思ったけど、セットが大きすぎて日本じゃ無理だと。ウチがやるという意識はなかったです」

 ほどなくして関係者から「(上演に)興味があるか?」と声がかかり、世界ツアー用に少し小さくなったセットが製作されたことを知ると、意識は変わった。「ツアー用(のセット)なら日本でもできるぞ。なんせディズニーとマッキントッシュの奇跡の合体ですから。日本でやる意味は大きい」と交渉に動き出した。

 以前から多くの海外作品を招聘(しょうへい)しているホリプロだが、「メリー―」は想像を超える“難産”だった。今回は日本人キャストによる上演だが、全員が海外スタッフによるオーディションを受けて決定。スタッフに妥協は一切なかった。「なかなか決まらなくて、オーディションだけで3年ぐらいかかりました。公演時期が決まっても、間に合わずに成立しないんじゃないかと何度も思いました。キャストが全員決まったのが去年の夏。(契約書に)サインしたのが秋。直後に宣伝しないと間に合わなかった。最後だけネジを巻かれました」。苦笑いしながら振り返った。

 自身と同じ50代の男性に見てほしいという思いが強くある。

 「オッサンをミュージカルに連れて行きたいんですよ。一生に一度も舞台を見ることなく死ぬのは、どれだけ損かと思うんです。ウチの作品は見に来てもらえば絶対に面白いと思ってもらえる自信がある。その中でも、今回は家族で見るということに関してはこれ以上ない作品。見ていただければ奥さんとの会話で、次は何を見に行く?って話になって、余生に幅が出ると思います」

 ◆メリー・ポピンズ役は濱田めぐみと平原綾香がWキャスト

 女優の濱田めぐみ(45)と歌手の平原綾香(33)が、主人公のメリー・ポピンズ役をダブルキャストで演じる。

 1月上旬から2か月以上の稽古を重ね、魅惑的な歌声と迫力のダンスに磨きをかけてきた。濱田は「ずっと曲を聴いたりメリーだったらどうするかと考えたり、24時間態勢で臨んでいます。この感覚は初めて」。ディズニー作品は4作目の出演。「普段ミュージカルに苦手意識がある方や、あまり劇場に足を運ばない男性の方、家庭で悩みがあったりする方にもこっそり見に来てほしい」と呼び掛けた。

 一方、平原は「お稽古は長期にわたり、バレエやタップダンスで体はバキバキ。でも踊ることが大好きなので、とても幸せです。傘で空を飛ぶシーンでは、ぜひ手を振ってくださいね!」と呼び掛けた。

 メリーの親友・バート役は大貫勇輔(29)と柿澤勇人(30)がダブルキャストで務める。

 ◆メリー・ポピンズ 1910年のロンドン。一向にナニー(子守)が居つかないバンクス家に、メリー・ポピンズが舞い降りてくる。魔法で部屋を片づけたり、カバンから何でも取り出したり不思議な力を持つメリーと、煙突掃除屋のバートと過ごす毎日に2人の子供は大喜び。一方、銀行員の父・ジョージはあることをきっかけに苦境に立たされてしまう。2004年に初演。これまでに世界10か国以上で上演され約17万人を動員。

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