藤井六段、師匠に「恩返し」!奥の手動じず「とてもいい経験」 

スポーツ報知
千日手指し直しの末、師匠の杉本昌隆七段(右)に勝利した藤井聡太六段

 将棋界初の「中学生六段」に上りつめた藤井聡太六段(15)が8日、大阪市福島区の関西将棋会館で指された王将戦1次予選2回戦で、師匠の杉本昌隆七段(49)に勝ち、初の師弟対決で“恩返し”を果たした。千日手成立による指し直しで“一日2局”の師匠との真剣勝負を制した中学3年生は「公式戦で対局できるのは楽しみにしていました。とてもいい経験になりました」と感謝した。

 粘り腰を見せる師匠を、的確な寄せで冷静に振り切った。昨年の29連勝のフィーバー時を思わせる23社約70人の報道陣が詰めかけた注目の師弟対決。勝者の15歳は「楽しみにしていましたが、対局に関してはいつも通り。いい経験になりました」と、平常心を強調した。

 長い将棋だった。午前10時に始まった対局は午後1時18分、同じ局面が4回続いて「千日手」が成立。30分後に、先後が入れ替わって始まった「指し直し」局では先手で終始、優位に立ち、午後6時20分、111手で危なげなく勝利した。

 指し直し局では杉本七段が「自分の原点」という、四間飛車を選択。終局後に「(練習将棋でも)あまりなかったよね?」と杉本七段から聞かれ「あっ、はい」と苦笑しながらうなずく場面も。師匠の“奥の手”にも屈しなかった形だ。

 公式戦で白星を挙げ「恩返し」(弟子が師匠に勝つことを示す将棋界用語)を果たしたが、天才児は5年前にすでに“師匠超え”を経験している。小学4年だった2013年、名古屋市内での杉本七段の研究会で、後の師匠と初対面。杉本七段はプロの力を体感させようと、平手(ハンデなし)で胸を貸したが、聡太少年はあれよあれよという間に勝ってしまった。

 非凡な才能を感じ取った杉本七段は、弟子に取って以降は、自力思考を促すために「彼とは意識的に指す機会を減らしていた」。練習将棋は100局ほどしか指していないが、「私が勝つのは2割ほど。ここ1年は全然勝ってない」という。

 少年は成長ぶりを証明するように今年2月に四段から六段に。藤井六段は「師匠には奨励会時代からたくさん教えていただいた。公式戦という舞台で対局することができ、本当にうれしい。これからも、さらに活躍していかねばと思います」と、師匠の目の前で誓った。

 藤井六段はこれで14連勝。通算成績を69勝11敗とした。年度別成績では59勝11敗。対局数(現在70)、勝数(同59)、連勝(29=年度またぐ)、勝率(同約8割4分2厘)の4冠制覇が迫ってきた。

 ◆杉本七段、完敗も「記念に」

 弟子に完敗を喫した杉本七段は「やりにくさはなかった。藤井六段の強さはすでに証明されてますので、改めて私が話すことではない」と納得の様子。「自分の棋士人生でも一番注目された対局。彼の大変さが分かった。記念になりました。勝負は残念でしたが、素晴らしい日。お礼を言いたい」と笑顔で話した。

 ◆千日手 同じ局面が4回現れると成立。その勝負はなしとなり「指し直し」になる。この日の対局では、互いの銀の押し引きが4回続き、「打開を模索はしたんですが、なかなか難しかった」(藤井六段)、「じっくり長くやりたかったので、指し直しの手にするつもりだった」(杉本七段)。藤井六段は昨年2回、公式戦での千日手成立を経験している。

 ◆藤井六段の今後

 ▼15日 順位戦C級2組・三枚堂達也六段(24)戦。10戦全勝を目指す。

 ▼4月頃 竜王戦5組ランキング戦準々決勝で阿部光瑠六段(23)戦。

 ▼5月頃 (阿部六段に勝利した場合)準決勝で石井健太郎五段(25)と船江恒平六段(30)の勝者と対戦し、勝利すると史上最年少で七段昇段。

 ▼秋 最短でのタイトル挑戦の可能性は王座戦5番勝負。

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