「浅見光彦シリーズ」生んだ人気作家・内田康夫さんが死去

　テレビドラマ化もされた「浅見光彦シリーズ」で知られる作家の内田康夫さんが１３日午前８時２５分、敗血症のため東京都内で死去した。８３歳だった。

　ＣＭ制作会社の経営をしていた１９８０年に自費出版した長編「死者の木霊」が注目され、４６歳で作家デビュー。その後専業作家になった。８２年の「後鳥羽伝説殺人事件」から始まった浅見シリーズで人気に火が付き、西村京太郎さん（８７）と並ぶ旅情ミステリーの書き手として活躍。浅見シリーズは映像化され、テレビドラマでは俳優の榎木孝明（６２）や辰巳琢郎（５９）、中村俊介（４３）らが浅見役を演じた。「天河伝説殺人事件」は市川崑監督によって映画化された。

　浅見シリーズは累計約９７００万部。信濃のコロンボシリーズなどを含め、著作の累計発行部数は計約１億１５００万部。０８年に日本ミステリー文学大賞を受けた。１５年７月に脳梗塞で倒れ、リハビリに励んだが、１７年３月に休筆宣言。浅見シリーズ１１４作目の「孤道」を未完のまま出版、完結編を公募した。

　読者との交流を大切にし、文壇きっての囲碁の打ち手としても知られた。プロットなしで書き始めることでも知られ「決めてから書くとスリルがない」と生前話していたという。

　葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は作家で妻の早坂真紀（はやさか・まき、本名・内田由美）さん。お別れの会は行わず、２３日から４月２３日まで、軽井沢町の浅見光彦記念館に献花台を設ける（休館日を除き、開館時間帯のみ）。この期間は入館無料。

　◆中村俊介（俳優、２００３年からドラマシリーズで浅見光彦役）「あまりにも突然で大変驚いています。浅見光彦と同じ３３歳になった僕の誕生日をみんなで祝ってくださったり、撮影現場まで応援に来て出演もしてくださったり、本当にたくさん思い出があります。浅見光彦として過ごした１６年間は僕にとって一生の宝物です」

　◆内田　康夫（うちだ・やすお）１９３４年１１月１５日、東京都生まれ。ＣＭアニメの制作スタッフ、コピーライター、テレビＣＭ制作会社社長を経て、８０年に「死者の木霊」でデビュー。８２年に専業作家となり、８３年に軽井沢へ転居した。「浅見光彦シリーズ」のほか「岡部警部シリーズ」「信濃のコロンボ」シリーズなどがある。著作数１６３冊、うち浅見シリーズが１１４作。