永野芽郁主演の「半分、青い。」は、“ヒットの2大要素”をあえて外した革命的な朝ドラになる

スポーツ報知
3月14日午後9時半頃、ドラマの撮影に臨む永野芽郁(奥右)と余貴美子(同左)。この日、永野の出演シーンの撮影は計約9時間に及んだ

 女優の永野芽郁(18)が主演するNHK連続テレビ小説「半分、青い。」(月~土曜・前8時)が4月2日にスタートする。脚本は「ロングバケーション」「愛していると言ってくれ」などで知られる北川悦吏子氏(56)。初挑戦の朝ドラで、近年の朝ドラのヒロイン像にみられた「実在の女性がモチーフ」「時代と戦う女性」という“ヒットの2大要素”を外し、新たなヒロイン像を生み出した。北川氏いわく「革命的な朝ドラ」は、いかにして生まれたのか―。制作統括の勝田夏子氏(48)に聞いた。(江畑 康二郎)

 ホームドラマの脚本は初めてという“恋愛ドラマの神様”北川氏が、98作目の朝ドラで、その常識を覆した。

 「半分、青い。」は、高度成長期の終わりから現代にかけて岐阜と東京を舞台に、小学生で左耳の聴力を失った永野演じるヒロイン・鈴愛(すずめ)が失敗を恐れず駆け抜け、一大発明を成し遂げる物語。

 これまでにない句読点で終わるタイトル。身体に障害を抱えたヒロインも異例。加えて今月9日に行われたドラマの第1週完成試写会で、ヒロインの胎児の頃のCG映像が披露された。ヒロインが胎児から描かれるのも初めてだ。

 2010年「ゲゲゲの女房」、12年「梅ちゃん先生」など朝ドラ6作品の演出に携わり、本作で制作統括を務める勝田氏は、初めてタッグを組んだ北川氏の「ひらめき」に「自分の中で『こういうものだよね』と思っていた常識みたいなものが壊されていく快感があった」と驚く一方で、意見の違いもあったという。

 北川氏は当初、胎児のシーンにこだわり「胎児で1週間やりたい」と訴えたが、勝田氏が「早く人間が出てきた方がいいのでは」と提案し、2話分の“出演”にとどまった。リアル過ぎない胎児のCG映像は、完成に約半年間要した。

 実は本作の企画は、北川氏が数年前に同局に持ち込んだもの。企画書には同じタイトルで、「何かを失っても、別のやり方で前に進めばいい」などという内容が記されていたという。12年に突発性難聴を発症し、本作ヒロイン同様に左耳を失聴した北川氏の思いがにじむ。2年前に企画が通り、台本作りに着手した。数年かけて、企画が実現することもまれだ。

 ヒロイン像は“ヒットの2大要素”をあえて外した。「ゲゲゲ―」以降、朝ドラは「実在の女性がモデル」「時代と戦う女性」が主流となってきた。その理由について「現代のヒロインが自分探しをするという内容が続いた時期があったが、生きるのに制限がある時代の方がドラマに深みが増す」と勝田氏。この“要素”を取り入れた14年「花子とアン」、15年「あさが来た」、16年「とと姉ちゃん」などが高視聴率を記録した。

 北川氏は当初「朝ドラだから、時代ものにした方がいいのかしら」と話していたといい、最初から“要素”を度外視していたわけではなかった。勝田氏は「北川さんの脚本は、ご自身が体験したこと、見聞きしたことから膨らませているから、あれだけ生きたセリフが書ける。だったら時代を遡らなくても、現代に近い方が北川さんらしく、書いていただけると思った」と、話し合いの末に“異端”の道を選んだ。

 現在放送中の「わろてんか」の平均視聴率は20%前後を順調に推移。このままバトンタッチできれば、本作も初回から高視聴率を期待できそうだが、勝田氏は、「たくさんの人に見ていただいて、数字を取れたらうれしいですけど、視聴率だけではなくて、ちゃんと見た人の記憶に残るものが作れれば本望。多分、北川さんもそう思ってらっしゃると思います」と話した。

 苦境があっても、発想を転換して乗り越えるという根源的なテーマで、家族を軸に恋愛、仕事が折り重なり展開していく本作。北川、勝田両氏が二人三脚で生み出した“新たな物語”が、どのような広がりをみせていくのか。注目したい。

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