若松孝二という男 自ら資金を調達し映画撮影 新藤兼人監督と並ぶ「独立プロの雄」
スポーツ報知

映画「キャタピラー」などで知られ、2012年に交通事故で死去した映画監督の若松孝二さん(享年76)が設立した若松プロダクションが再始動したことが31日、分かった。若松プロ出身の白石和彌監督(43)がメガホンを執り、映画「止められるか、俺たちを」(今秋公開)を製作した。主演は女優の門脇麦(25)で、俳優の井浦新(43)らが出演する。
若松監督は、100歳まで「生涯現役」だった新藤兼人監督と並び「独立プロの雄」として知られた監督だった。
現在、映画製作では複数の会社が出資する「委員会方式」が取られることが多い。これは資金を集めやすい一方、さまざまなしがらみで作品の内容に制限がかかることもある。若松監督はそれに立ち向かい、撮りたいものを撮るために、自ら資金をかき集めた。撮影日数やスタッフは必要最小限だが、作品への「熱」をパワーに変え、海外でも注目される作品を世に送り出した。
同時に、自分の作品も含め「完成したものの上映できない」という映画がファンの目に届くようにする努力も続けた。自らフィルムを背負って日本各地に出向いたほか、1983年には名古屋に映画館「シネマスコーレ」をオープン。同劇場は現在もインディーズ映画や小規模作品の上映を続けている。
その精神は、今作のメガホンを執る白石監督や、若松監督の「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」で主演するのを機に芸名を変えたという井浦ら、若松監督に薫陶を受けた“弟子”に受け継がれている。