気軽に楽しむヌード200年の歴史…「ザ・ニュースペーパー」福本ヒデが鑑賞リポート

スポーツ報知
展示のハイライト、ロダンの大理石彫刻「接吻」を前に福本ヒデは大興奮

 横浜美術館で開催中の展覧会「ヌード(NUDE)英国テート・コレクションより」(読売新聞社など主催)が大好評だ。題目に驚かれる方もいるかもしれないが、人間にとって最も身近といえる裸体表現は、純然たる芸術に他ならない。本展で約200年にわたるヌードの変遷をたどれば新たな発見があることは間違いなしだが、難しい話よりも、まずは楽しむことが第一だ。美術に造詣が深い社会風刺コント集団、ザ・ニュースペーパーの福本ヒデ(46)と一緒に未知なるヌードの世界をのぞいてみよう。(甲斐 毅彦)

 ヌードの軌跡200年をたどる本展は、時代別、テーマ別に8つに分かれて約130点が展示されている。第1章は「物語とヌード」。性の倫理に厳しかった19世紀の英国ビクトリア朝時代の作品が中心だ。まず目に飛び込んでくるのは展示室正面の「プシュケの水浴」。ギリシャ神話を題材にしたフレデリック・レイトンによる1890年の作品だ。足を止めたヒデは安倍晋三首相のような口調で「これは西洋流の忖度(そんたく)ですね」とつぶやいた。

 当時の西欧の社会風土では、裸体を描くこと自体が許されていなかった。唯一ヌードを描くことができるジャンルだったのが、歴史や物語を主題とした絵画だった。「ま、神話だったらいいんじゃないの」ということか。ヌードの歴史の始まりが忖度だったとは…。

 第2章は「親密な眼差し」。20世紀に入ると、そんな忖度はなくなる。物語や神話に由来しない同時代の女性の体をモデルとしたヌードが描かれるようになるのだ。ドガ、ルノワールなどなじみ深い画家の作品も登場する。ヒデが関心を示したのはピエール・ボナールの「浴室」(1925年)。浴槽に浸かっている女性が描かれているのだが、モデルはなんとボナールの妻だ。「自分の奥さんのヌードを描くとは、どういう心境だったのでしょうか…」

 第3章は「モダン・ヌード」。ヌードそのものが物語という文脈から離れ、独立したジャンルとなる。すでに普及した写真との差別化を図るためにも、絵画ならではの造形的な視点で描かれたものが台頭し始める。パブロ・ピカソの作品もここに分類されている。

 第4章「エロティック・ヌード」には本展のハイライト、オーギュスト・ロダンの大理石彫刻「接吻」がある。20世紀初頭に英国で初めて展示された時には「若者たちには刺激が強すぎる」との理由で布で覆いかぶせられる事件が起き、物議を醸した作品だ。

 展示は第8章まであるが、徐々に説明が難しいものになっていく。ヒデは「言葉ですべて説明できるなら、そもそも絵にする必要がない。分からないことを楽しむのもいいし、見たことのないものを見たというだけでもいいんです。一点でも心に残るものがあったら、それを自分で調べれば世界は広がりますよ」と話す。

 残り少ない春休み。ヒデはこれから行く家族連れにアドバイスした。「あまり説明書きを一生懸命、読まずに気楽に楽しむことです。飽きてしまったら、疲れてしまうよりは奥さんより先に出て待っているほうが良いでしょう。そこは忖度してはいけないところです(笑い)」

 ◆ヌード展 6月24日まで。開館時間は午前10時~午後6時。休館日は毎週木曜日(祝日の5月3日は開館)と5月7日。一般1600円、大学・専門学校生1200円、中学・高校生600円、小学生以下無料。会場の横浜美術館は、みなとみらい線「みなとみらい駅」3番出口から徒歩3分。JR、横浜市営地下鉄線「桜木町駅」から動く歩道を利用して徒歩10分。

 ◆福本ヒデ 1971年7月14日、広島県神石郡神石高原町生まれ。46歳。舞台、ライブなどで政治家キャラを演じ、アベ首相、ノダ前首相、ハトヤマ元首相、アソウ元首相の4首相役をこなす。絵画(観る、描く、語る)が筆頭趣味で美術検定2級。2016年には初の個展を開催。文化放送「The News Masters TOKYO」のHPで「あの人に見せたい絵」の動画配信中。

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