木梨憲武、16年ぶり主演「いぬやしき」はほぼ木梨家!? 

スポーツ報知
俳優としても存在感を示した木梨憲武(カメラ・小泉 洋樹)

 お笑いコンビ「とんねるず」の木梨憲武(56)の主演映画「いぬやしき」(佐藤信介監督)が20日に公開される。2002年「竜馬の妻とその夫と愛人」以来16明日公開年ぶりの主演作。超人的な能力を駆使して、敵と戦うヒーロー・犬屋敷壱郎を演じるが、その実態は家族や会社から疎外される定年間近のサラリーマン。木梨のイメージとはほど遠いが「私生活はほぼ同じ」と共通点を明かした。(水野 佑紀)

 犬屋敷は末期がんを宣告されても家族にさえ打ち明けられず、唯一の話し相手は野良犬のハナコ。ロボット化しても悲壮感が拭えず、テレビ番組に出るお調子者の木梨のイメージとは真逆のさえない“ジジイ”ぶりを熱演している。原作は2014~17年にかけて講談社「イブニング」で連載された奥浩哉氏の同名漫画。木梨はオファーが来るまで原作を知らなかったという。16年前の主演作で共演し、今でも交友が続く中井貴一(56)も「犬の映画だと勘違いして、今だに僕が犬役だと思っている」と苦笑い。未知の作品への出演を後押ししたのは家族だった。

 94年に女優の安田成美(51)と結婚。長男(22)、次男(19)、長女(14)の父親だが、「『パパ、いぬやしきやるの?』『やったほうがいいよ』と言われ、次の日から毎日漫画を読んだら、『うわうわうわ、じいさんおもしろい!』って」。夢中で読み進めた。「絵のタッチもストーリーもすごい大きなスケールだったので、映画でこれ一本にまとめるってどうするの」と期待と不安を抱いたという。

 16年ぶりの本格演技には思い通りにいかないことも多々あった。「16年前、市川(準)監督から『何やってもいいよ』って言われて毎回違う演技をした」。一風変わった演技指導を間近で見ていた中井から「よそでは多分こういうのないからね」と忠告されたが、今回その言葉を無視。「同じようにやったら、どうやってもつながらなかった」と笑う。

 現場ごとで求められているものが違うと肌で感じ、本作では監督の意見に全力で応えた。「監督にiPadで『機械になっています。そのヨリを撮ります』と説明されたら『了解』ってね。後半は1カット、1シーンと時間かけて自分の『こうやるんだ』『ああやるんだ』という考えと、監督の意見をすりあわせた。監督のOKだけを頼りにしてたから、自分でもう一度やらせてくださいってことはほぼなかった」。

 木梨の適応力の高さはどこからくるのだろう。「『矢島美容室のママになれ』って言われたらドレス着て胸とおしりを入れたらすぐなれる」と自信を見せたが、数え切れないほどの役に挑戦してきたコントのおかげだけではなさそうだ。

 フジテレビ系「みなさんのおかげでした」が3月いっぱいで終了したが、6月から英・ロンドンで個展を開催するなど、多才ぶりも健在だ。「歌手も俳優もコメディーも免許証も判子もいらない。正解がないようであったり、あるようでなかったり。いかに感じてみるかが大事で、どの仕事もやってみる」この柔軟な思考とフットワークの軽さが原動力だと感じた。

 ほとんど語ることのない私生活。犬屋敷家とは違うのか? 「ほぼ同じ。木梨家は犬屋敷よりぐいぐい言葉で発していくタイプだけど、結果は一緒。いまだにテレビのチャンネルの取り合いして、最後には『誰が買ったと思っているんだ』って言ってる。僕も今は犬しかかまってくれないので」。どこにでもいる父親像をのぞかせた。

 これからの仕事について「スタンスは今までと何も変わらない。(実家の)自転車屋さんもやりながら。長男だからね」木梨サイクルのネタなど冗談を交えてはぐらかされそうになったので、「役者として挑戦したいことは?」と聞くと木梨の想像力が爆発した。

 「俺だけがフリー。みんな芝居しているけど、ストーリーに折り合う俺が『どうした?』『ほんで?』『おうおう、どうした?』って言うのをやりたい。どこのシーンに俺がいて、何をするのかは俺だけで決めるから。妄想は自由でタダだからね(笑い)そっか、それをまとめる監督がいないんだ。じゃあ…俺がやるわ」

 ◆木梨 憲武(きなし・のりたけ)1962年3月9日、東京生まれ。56歳。帝京高サッカー部出身。同校の同級生だった石橋貴明と「とんねるず」を結成し、80年日本テレビ系「お笑いスター誕生!」で10週勝ち抜き、グランプリを獲得。「オールナイトフジ」「ねるとん紅鯨団」などバラエティー番組を担当し、人気を得た。歌手としても91年「情けねぇ」で日本歌謡大賞を受賞。

 ◆いぬやしき あらすじ

 事故によって超人的な能力を手にした、さえない初老の犬屋敷壱郎(木梨)と高校生の獅子神皓(佐藤健)。人助けに力を注ぐ犬屋敷が、大量殺りく兵器と化した獅子神の暴走を食い止めようと奮闘する姿を描く。最新VFX技術を駆使した新宿上空での戦闘シーンなどが評価され「ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭」でゴールデン・レイヴン賞に輝いた。

 ◆監督の一言

 佐藤信介監督「犬屋敷は、ある意味で生活感や日常感がありながらも、フィクション性も蓄えられる雰囲気、力のある風情を持たれた方がいいなと思いキャスティングし、木梨さんは見事に、こちらが望んでいるもの以上のものを出してくれました! 俳優は空気や雰囲気で存在感を作っているのだなと改めて思いました」

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