二宮和也の覚悟「毎回これが最後」 役者業への思い年々強く

スポーツ報知
~vol・18~

 嵐の二宮和也(34)が主演するTBS系日曜劇場「ブラックペアン」(後9時)が佳境を迎えている。手術成功率100%を誇る天才外科医の一方、傲慢な言動から“オペ室の悪魔”と呼ばれる主人公・渡海征司郎を好演する。連ドラ主演は4年ぶり。常に「これが最後」という思いで作品と向き合い、今作にも強い覚悟で臨んでいる。グループは来年デビュー20周年、自身は今月17日に35歳を迎える。年齢を重ねていく中で今後、プロデューサー業や監督業への興味も明かした。

 「失敗したら、共々死ね」―。二宮演じる渡海が、自身の母の手術に難航する高階権太(小泉孝太郎)に向けたセリフだ。自身は手術成功率100%を誇り、腕のない医師を忌み嫌う。傲慢な言動で医局内でさまざまな軋轢(あつれき)を生み出すさまを、巧みな表現力で見事に演じきっている。

 「渡海が常日頃、掲げているプライド、責任の高さは、割と僕にとって普通のことだったりすると思う。すごくきつく聞こえるけど、結局そこが正論だよねって。自分も、これを言うと傷つけてしまう恐れがある正論だったら選択しないけど、基本は正論で動いているところもある。ウソになったり、嫌みになったりしないように慎重に言葉は選んでいますけど、割と普通に演じています」

 皮肉屋で真意がどこにあるのかつかめない渡海。表現が難しい難役だ。

 「僕らも撮っているのと同時に、見ている。見ている人にちゃんと届いているかなと気を付けながら撮影をずっと続けている。伝えられる部分は伝えられているのかなとは見ています。でも、それこそ物語が進むにつれてスナイプ(手術器具)が出てきて、ダーウィン(手術ロボット)が出てきて。何て言うのか、見どころを作るのが、なかなかどうして、これは難しいものだと、なっていきましたね」

 第1話では医療ドラマならではの見応えある手術シーンがあったが、徐々に機械手術に取って代わるシーンが増えていった。

 「最初は1話みたいな形で、やっぱり見どころは象徴的に(手術シーンで)作れるだろうなと思っていたけど。命を救うさまを分かりやすくというのが難しい。でも、みんなもそうですけど、出ている人も視聴者。自分が見た感想は、割とあんまり…こう率直に伝えてます。そうやって現場で精査していくという感じです」

 連ドラ主演は、意外にも14年4月期「弱くても勝てます」(日テレ系)以来。4年ぶりということを、二宮自身は重く受け止めながら撮影に臨んでいる。

 「前回も4年ぶり。そうすると、30代で出られるドラマって単純計算で2本だけしかない。映画も含めたら、1年に1本は作品に触っているのかなとは思うけど、今のペースでいっちゃうと…。そうなると、何事もなく終わっていくのはどうかなと思う。次が4年後だったら。これが、5年6年になることもゼロじゃない。そう考えると、思っていることだったりを(監督や共演者に)提案することは多いかもしれないですね」

 4年ぶりだからこそ、思うことは多い。オファーを受けたときは、竹内涼真演じる研修医・世良雅志を演じるものだと考えていた。

 「だいぶ大人になったんだなと思いました。驚きで言えば『母と暮せば』(15年公開)で学生役のときに『えっ、30超えているんですけど…』とか『最初から死んでます』って言われて、そうなんだ…と。でも、ずっと見習いとか、そういうのばっかりやっていた。一世代、上がっている」

 17日には35歳を迎える。演じる役の幅も広がってきたからこそ、役者業への思いを強くする。

 「渡海という役も、自分の空間で物語が展開していくわけじゃなく、周りの思惑だったりがあって、医療の世界というものの一端にしかいない。それは自分の中でも新鮮でした。この辺のゾーンが定期的にやれるんだったら、やっぱりもっとやっていきたいなと」

 ドラマの放送が終われば、木村拓哉(45)と初共演する映画「検察側の罪人」(8月24日公開、原田眞人監督)がある。来年は嵐のデビュー20周年に向け、これから機運が高まっていく。

 「単純な話ですけど、僕らにとって20周年を目指してやってこなかった。今、何か特別なことを考えているかというと、考えていない。世の中のスピードが速い。何がどうなって20年を迎えることができないかもしれない。『20年、20年』って目標を置いちゃうと、転んじゃうこともあるだろうし。ただ迎えるんだったら、みんなでお祝いはしたい。感謝しかないけど」

 そのときを迎えるまでは努めて冷静に振る舞う一方、やはり「20年」というものには特別な思いもある。

 「20周年になったらなったで成人式というものがあるように、そういう“式典”はあっていいのかなと思う。ちゃんとお返しができたらなとは思う。人間に置き換えて、じゃあ10歳で盛大に祝ったかというと、8歳と9歳と11歳と変わらない。15歳も変わらない。やっぱり“ハタチ”で、ちゃんと式典を開くということにおいても、何か理にかなっているのかな」

 冷静に考える背景には、ジャニーズ事務所の中での自分たちの立場がある。松本潤(34)と自身の最年少メンバー2人が35歳となり、気が付けば後輩の方が多くなっていた。

 「10周年でお祝いをするってなったときも、TOKIOのお兄さんたちだって15周年だった。でも、それは『譲りますよ』って。我々も譲らなきゃいけない部分も出てくる。先輩も我々も後輩も、ちゃんとみんなで横に並んで前に行かなきゃいけない。15周年(記念ライブ)でハワイに行ったとき、こんなことまでしてしまって…っていうときに思ったことでしたね」

 グループは昨年まで6年連続9度の5大ドームツアーを行うなど、長く第一線で活躍を続けてきた。それだけでも並大抵のことではないが、続けてこられたからこそ、次なるステップを見据える。

 「年も年だし、僕らはもう関係性が出来上がっちゃっているから、変わらぬ味を届けることしかできない。でも、それで言うなら興味はてんでバラバラ。今まで頂いたものをどうやって消化させていくかという考えがあったけど、好奇心だけで動ける状態にはなっている。興味だけでやってみる仕事がたまにあってもいいのかなと考えたりする」

 メンバーの中では相葉雅紀(35)が趣味を生かし、今夏のABCテレビ(テレビ朝日系)「熱闘!高校野球100回スペシャルナビゲーター」に就任した。

 「本当に仕事にするつもりはなかっただろうけど、まさに自分の熱量だけで展開できる仕事だと思う」

 相葉の姿を横目に、二宮は今後、どうありたいのか。

 「自分の中で面白いと思うものがあって、これだったら還元できると思うんだけどなっていうものを提案したりしたい。さすがに先輩に言うのははばかられるけど、後輩とか。自分が読んだり見たり何だりしたものとして『これ、あの子に合いそうだな』とか。例えばプロデューサーをやってみたりとか監督をやってみたりとか。表現というもののレンジをちょっと広げてみたりもしてみたい」

 演じる役柄に向き合うときのように、常に自分自身としっかり向き合いながら、次なる一歩を踏み出そうとしている。

 「先を見ちゃうと見えちゃうところもあるから見ないようにしている。算段で動くと、いやらしくなる。一つ一つに誠意持てなくなる。意図せず、遺作になっちゃうのは嫌だとずっと思っている。毎回これが最後と言い聞かせている。やらなきゃいけないこと、やりたいことを常々考えて、ちゃんと提案して、作品を残していく。これは自分の人生の中で常に決めていること」(ペン・畑中 祐司)

 ◆二宮 和也(にのみや・かずなり)1983年6月17日、東京都出身。34歳。96年にジャニーズ事務所入所。99年に嵐としてシングル「A・RA・SHI」でデビュー。2006年にTBS系「少しは、恩返しができたかな」で橋田賞受賞。同年「硫黄島からの手紙」でハリウッド映画初出演。15年「母と暮せば」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞など受賞。血液型A。

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