くっきー、映画「ドルメンX」で初の音楽プロデューサー「どうして僕なんやろ」

スポーツ報知
インタビューに応じ音楽やお笑いについて語った、くっきー

 お笑いコンビ「野性爆弾」のくっきー(42)が初めて音楽プロデューサーを務めた、映画「劇場版 ドルメンX」(小室直子監督)が15日に公開された。

 くっきーは昨年、「白塗りものまね」でブレイクした一方で、ロックバンド「ゲスの極み乙女。」のボーカル・川谷絵音(29)らとバンド「ジェニーハイ」を結成。音楽に絵画、俳優とジャンルを超越した活躍を見せる異端の芸人は、どこへ向かうのか―。

 「音楽プロデューサー」のオファーを受けた当初、「別に僕は(音楽の)プロじゃないので、金のかかってないチンケな映画なのかなと思った」。後日、主演の志尊淳(23)、浅香航大(25)ら人気俳優が出演する大作と知り、「どうして僕なんやろ」と驚いた。

 今年3月に放送された日本テレビ系連続ドラマ「ドルメンX」の映画版で、くっきーは主題歌「参上!ドルメンX」、劇中歌「ナミダまで心臓(ハート)」の作曲を担当。2曲の作成期間は、わずか一日だったという。「参上!―」は、テンポがコロコロと変わり、サビはヘビーメタル調の重厚感が漂う“ジャンル不詳”の楽曲に仕上がった。

 楽譜が読めず、作曲方法は独特だ。鼻歌でメロディーを作り、20年前から使い慣れた約3万円の子供用キーボードで音を合わせていく。「例えばドラムを、キーボードのパーカションの音を使って乗せていく。完全に感覚です」

 音楽のルーツは、パンクロック。高校の頃、英国の「セックス・ピストルズ」「ザ・クラッシュ」にハマりギターを始め、バンドを結成。2003年頃にはフットボールアワーの後藤輝基(43、ギター)、相方のロッシー(43、ベース)らとバンド「盆地で一位」を組み、08年にアルバム「一枚目」をリリースした。

 さらに昨年、BSスカパー!の番組企画で音楽家・新垣隆氏(47、キーボード)、小籔千豊(44、ドラムス)らと、川谷がプロデュースする「ジェニーハイ」を結成し、ベースを担当。今年3月にシングル「片目で異常に恋してる」を配信した。「アルバム作るんやったら、1曲でいいから、(自身が作った曲を)ねじ込みたい。バカ売れして夢の印税生活をしたい」

 94年にデビューした「野性爆弾」は、時に下ネタや非道徳的なボケを連発するシュールな芸風で芸人仲間には評価されながらも、万人受けするコンビではなかった。「地獄だった」という10年ほど前までは、月収5~8万円の時期も。だがデビュー24年目の昨年、くっきーがブレイクした。

 人気を決定づけたのが、「白塗りものまね」だ。白く塗った自らの顔を“キャンバス”にして、黒いラインで有名人の顔を描く。2~30分で完成するというデフォルメされた“顔”は、X JAPANのToshl、柴田理恵、雨上がり決死隊など変幻自在。最近のお気に入りは「嵐のニノさん」。実は15年前から始めた芸で、「最初にやったのは和田アキコさん。その時は真っ白じゃなかった。次に美川(憲一)さんをやって面白くなった。過去のものが今はやるなんて、ラッキーですよ」とニヤリ。

 15年9月に「ベッキーみたいになりたい」と、本名の川島邦裕から「くっきー」に改名。その効果もあってか、30~40代の男性が多かったお笑いライブに、若い女性や親子連れも訪れるようになった。ただ「営業に行って、出てくる時はワーッとなるけど、ネタをやりだしたら滑り始める。ネタは気持ち悪いものしかやってないので…」と苦笑い。

 3月に台湾で開催した個展「超くっきーランド in台北」には10万人が来場し、独創的な世界観は海外にも支持を広げている。 一方で、“コンビ格差”が広がりつつあるロッシーの反応については、「一緒に取材を受けると『僕も良かったと思います』とか言うんですけど、絶対ウソ。嫉妬に狂ってる」と断言した。

 盛り上がる周囲をよそに、本人にブレはない。今後、芸人とアーティスト、どちらに比重を置くかと尋ねると「そりゃ、芸人でしょ」と即答。「これまでお客さんに合わさないようにしてきたので、ポップになりすぎないようにする」と、異端の矜持(きょうじ)をのぞかせた。

 小室直子監督のひと言
「宇宙人のアイドルが不器用ながらも熱い思いの丈を込め、地球人の心を動かす歌…そんな突飛なオーダーに応えていただけるのは、多種多様な才能と超独創的なアイデアの持ち主のくっきーさんしかいないと、確信をもってお願い致しました。『参上―』は期待を大きく上回る新感覚の曲で、一回聴いただけで口ずさんでしまうくらい中毒性が強い。『ナミダ―』は、繊細ながらブルースのような力強さを感じました」

 ◆「劇場版 ドルメンX」 高木ユーナ氏の人気漫画『ドルメンX』が原作。地球侵略のためにアイドル活動を始めたイケメン宇宙人4人が、地球人を巻き込みながらやがて人間の心を知り、トップアイドルを本気で目指す姿を描いた笑いあり涙ありの青春コメディー映画。

 ◆くっきー 本名・川島邦裕。1976年3月12日、滋賀県守山市生まれ。42歳。93年3月、滋賀県立守山北高卒業後、吉本総合芸能学院(NSC)大阪校入学。94年4月、野性爆弾を結成。2018年、テレビ東京系ドラマ「MASKMEN」などに出演。04年12月に結婚。08年3月に長女、12年1月に長男が誕生。同期に徳井義実、次長課長、ブラックマヨネーズ。身長180センチ。

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