中邑真輔がまさかのヒール転向で日本凱旋へ…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
AJスタイルズに急所打ちを見舞う中邑真輔(C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved.

 プロレス世界最大の祭典WWE「レッスルマニア34」が8日(日本時間9日)、米ルイジアナ州ニューオーリンズのメルセデス・ベンツ・スーパードームで7万8133人の観衆を集めて開催された。そこで日本人スーパースター、中邑真輔(37)がAJスタイルズ(40)のWWE王座に挑んだが、2つのガッカリと1つのドッキリがあった。

 第1のガッカリは、この試合がメインイベントではなかったことだ。何とセミファイナル前のいわゆる“セミセミ”の扱いだったのだ。メインイベントは、ブロック・レスナー(40)がロマン・レインズ(32)の挑戦を受けたWWEユニバーサル王座戦だった。セミではRAWタッグ戦が行われた。

 2016年1月4日に新日本プロレスの東京ドーム大会「レッスルキングダム10」で両雄が戦ったIWGPインターコンチネンタル選手権(王者・中邑が、24分18秒、ボマイェ→エビ固めで防衛)はセミファイナルだった。この時のメインは王者、オカダ・カズチカが棚橋弘至を退けたIWGPヘビー級選手権で、王座の序列(格順)としては納得できた。

 WWE王座はユニバーサル王座よりも格上だと思っていた。それぞれWWEの2大看板番組、スマックダウンとRAWのメイン王座で、同格のような位置付けだが、WWE王座は、バディ・ロジャース、ブルーノ・サンマルチノのWWWF世界ヘビー級王座(1963年)からの伝統を受け継ぐ、タイトルのはずだ。一方のユニバーサル王座は2016年に新設されたばかり。

 130キロのスーパーヘビー級のレスナーに対して、AJと中邑は100キロそこそこ。文字通り、軽く見られたのかもと思うと残念だ。第2のガッカリは、そこで中邑が負けたこと。

 中邑はセカンドロープからのライダーキックを決め「カモーン」と挑発。AJはフォアアーム、ガットバスター、カーフ・クラッシャーで反撃。さらにスプリングボード450スプラッシュ。これをヒザで迎撃した中邑は、リバースパワースラムを決めてキンシャサへ。AJはこれを捕らえて、必殺のスタイルズクラッシュを叩き込み3カウントを奪った。

 ドッキリはここからだ。抱き合ってAJの健闘を称えた中邑は、膝をついてチャンピオンベルトをAJに手渡すと、突然金的の急所攻撃を食らわせた。会場が騒然とする中、中邑はさらにAJの顔面を蹴って場外に落とし、キンシャサを叩き込む暴挙に。ブーイングの中、不敵な笑みを浮かべて去った。

 そして10日(11日)のニューオーリンズでのスマックダウンで、AJはダニエル・ブライアンと対戦中に、中邑が乱入。まずキンシャサでブライアンを排除すると、AJに襲い掛かって急所打ち。さらにコーナーでたぎると渾身のキンシャサを放った。2度目の急所打ちを見舞い、不気味で狂気に満ちた表情を浮かべてリングを後にした。

 完全なヒールターン(悪役転向)だ。WWEでは“ロックスター”と呼ばれ、ミステリアスな動きとハイレベルのプロレスで全米を魅了してきた中邑だが、かなりオーバージェスチャーの急所打ちという、わかりやすい反則技でヒールを演出。キラー・カーン、ザ・グレート・カブキ、グレート・ムタ…。日本人はヒールの方が評価される歴史はあるが、中邑こそベビーフェースで世界を獲れると思っていただけに残念。

 今年の日本公演「WWE Live Japan」は6月29、30日に、東京・両国国技館で開催されることが決まっている。新王者として凱旋帰国することを期待していたが、ヒールとして“来日”することが濃厚となった。いや、まだそれまでに王座を奪取している可能性もある。日本ではもちろんメインイベントだろうが、逆にその期待を裏切る展開にも期待しておこう。(酒井 隆之)

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