秋山をキレさせた丸藤に、J鶴田を本気にさせた川田を見た…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
丸藤正道(右)に生ヒザを打ち付ける秋山準

 14日に亡くなった元全日本プロレス社長の馬場元子さん(享年78)と18日に亡くなった元WWWF(現・WWE)世界ヘビー級王者のブルーノ・サンマルチノさん(享年82)の追悼式が行われた25日の全日本プロレス後楽園ホール大会を取材した。

 そこでは、全日本プロレスの創業者で99年に亡くなったジャイアント馬場さん(享年61)がうなったであろう激闘が繰り広げられた。春の祭典「2018チャンピオン・カーニバル」のBブロック公式戦最終戦としてメインイベントで行われた全日本プロレスの秋山準社長(48)とプロレスリング・ノアの元副社長、丸藤正道(38)の恩讐を超えた戦いだ。ともに勝ち点8で並び、チャンピオン・カーニバルの優勝決定戦進出をかけた一戦となった。

 昨年にチャンピオン・カーニバルからの撤退を宣言していた秋山は、土壇場での欠場者が出たため、社長の責任として自らが強行出場。その時点で丸藤に勝てるとは思っていなかったし、実際、社長として「一番面白いカード? うーん、宮原(健斗、現三冠ヘビー級王者)VS丸藤。それが一番面白いだろうね」と予想していた。

 秋山VS丸藤は、結果の予想を上回る内容を見せた。グラウンドから始まり、空中戦。そして試合中盤に、秋山が右ひざのニーパッドを外した。骨が凶器になる生ヒザを丸藤の顔面にヒットさせたのだ。乱れ打ち(数える余裕がなかった)は、これまで見たことのない秋山の怖さだった。

 ふと思い出した。怪物と呼ばれるあまり、手を抜いているんじゃないかと思っていたジャンボ鶴田(2000年に49歳で死去、敬称略)が、川田利明に見舞った本気のジャンピングニーの恐怖だ。ストンピングにサッカーボールキックと平気で何発も顔面を蹴ってくる川田にジャンボがキレた。91年のチャンピオン・カーニバルだったか(4月6日・大阪府立体育会館)。本気のニーとバックドロップ連発で圧勝。あの時もレフェリーは和田京平だった。

 珍しく殺気を見せた秋山に対抗して、丸藤もパンタロンをたくし上げ、生ヒザで対抗。「虎王」を生で見舞い続け、丸藤が20分53秒、体固めで秋山を破った。勝ち点10を獲得し、30日の優勝決定戦(後楽園ホール)への進出を決めた。

 敵地だけに、マイクアピールを辞退して下がった丸藤は、バックステージで振り返った。「強くて怖かった。秋山さん、ありがとう」。秋山の怖さを言葉にした。全日本プロレス、そしてプロレスリング・ノアで秋山は、常に雲の上の存在だった。

 秋山の怖さを引き出した上で仕留めた丸藤は、真のプロレスラーだと思う。その丸藤を、こちらもヒザの必殺技、ブラックアウトを持つ宮原健斗がどう料理するか。いや、Aブロックの代表がまだ宮原と決まったわけはない。しかし、新たな全日本プロレスを築くためには、宮原は何としてでも勝ち上がらなければならない。(酒井 隆之)

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