チャンピオン・カーニバルを沸かせた「秋山全日本」流の演出…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
チャンピオン・カーニバルでの秋山準(右)と丸藤正道

 全日本プロレスの春の祭典「2018チャンピオン・カーニバル」は丸藤正道(38)=プロレスリング・ノア=が、優勝決定戦(4月30日・後楽園ホール)で三冠ヘビー級王者・宮原健斗(29)をエメラルド・フロウジョンで撃破して初出場初優勝を飾り、幕を閉じた。

 当然のように丸藤は宮原の三冠挑戦を表明し、早くも24日の後楽園大会でタイトルマッチが決定した。先のことは置いておいて、まだしばらくチャンピオン・カーニバル(CC)の余韻に浸っていたい。今大会はそれだけ濃密な大会だった。

 昨年はフリーの石川修司(42)が初出場初優勝し、新しい風を吹かせたが、今年は丸藤という大物に加え、火野裕士(33)=フリー=、鷹木信悟(35)=ドラゴンゲート=らも初出場し、伝統ある大会の“復興”をさらに後押しした。CCといえば、かつてはジャイアント馬場、ジャンボ鶴田が、ブルーザー・ブロディ、アブドーラ・ザ・ブッチャーらと激闘を繰り広げた大会。NWA世界ヘビー級王者は参加しないが、チャンピオンの座にふさわしい日本流の最強を決めるリーグ戦だった。

 今回は参加16人中、外国人はジョー・ドーリング、ディラン・ジェイムスの2人だけだったが、昨年に“CC引退”宣言していた社長の秋山準が復帰し、元三冠王者の諏訪魔(41)らの熱戦で、大物外国人に依存しない今のプロレス界で、昨年をさらに上回る大会となった。

 優勝決定戦は、秋山社長が「見たいカード」として予想した丸藤と宮原になったが、その過程が面白かった。Aブロック、Bブロックともに、公式戦最終戦として組まれたカードが準決勝のような“代表決定戦”となった。

 25日(後楽園)のBブロックは丸藤VS秋山、29日のAブロックは宮原VS火野で予定調和のようにも見えるが、それぞれの試合前に告げられたアナウンスが、会場を大いに沸かせたのだ。奥田亮リングアナウンサーが得点状況を説明した。25日はこうだ。「次の試合で秋山選手が勝利した場合は秋山選手が優勝決定戦進出。丸藤選手が勝利した場合は丸藤選手が優勝決定戦進出。時間切れ引き分けの場合は、勝ち点9で秋山選手と丸藤選手が並ぶため、本日のメインイベント終了後、秋山選手と丸藤選手のBブロック代表者決定戦を行います。両者リングアウト、両者反則、無効試合の場合は勝ち点8で諏訪魔選手、ゼウス選手、秋山選手、丸藤選手の4選手が並ぶため、この4選手によりますBブロック代表者決定トーナメントをメインイベント終了後に行います。Bブロック最終試合にどうぞご期待下さい」

 29日も宮原、火野、石川、鷹木、ジョーによる5人による代表者決定トーナメントの可能性まで説明され、爆笑をまじえた大喝采となった。すでに午後8時40分になろうとしており、常識的には残り1試合が適正な状況だったが、予定調和をぶち壊すかのようなこのアナウンスを聞かされれば、ワクワクせざるを得ない。会場で初めて経験した演出だった。

 先週も書いたが、丸藤と秋山の意地と意地のぶつかり合いは最高潮で、「武道館でやってくれ!」という声が飛んだし、場外乱闘になった時には「両者リングアウトになってもいいぞ」という、通常ではあり得ないヤジもあった。一度は全日本を飛び出して、ノアで自由な航海を経験した秋山社長が、復帰した王道マットで繰り広げる“伝統の進化”を見ていきたい。(酒井 隆之)

 ◆「2018チャンピオン・カーニバル」

 ◇Aブロック戦績

 ▽宮原健斗 5勝2敗(10点)

 ▽火野裕士 4勝3敗(8点)

 ▽石川修司 4勝3敗(8点)

 ▽鷹木信悟 4勝3敗(8点)

 ▽ジョー・ドーリング 4勝3敗(8点)

 ▽崔領二 3勝4敗(6点)

 ▽ボディガー 2勝5敗(4点)

 ▽野村直矢 2勝5敗(4点)

 ◇Bブロック戦績

 ▽丸藤正道 5勝2敗(10点)

 ▽秋山準 4勝3敗(8点)

 ▽諏訪魔 4勝3敗(8点)

 ▽ゼウス 4勝3敗(8点)

 ▽KAI 3勝4敗(6点)

 ▽ヨシタツ 3勝4敗(6点)

 ▽ディラン・ジェイムス 3勝4敗(6点)

 ▽吉江豊 2勝5敗(4点)

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