日本のプロレスはWWEではマイナーリーグなのか…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
戸澤陽(左)にキックを見舞うヒデオ・イタミ(C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved.

 世界最高峰のプロレス団体WWEのクルーザー級専門のテレビマッチ「205 Live」で、日本人同士による初のメインイベントが22日(日本時間23日)に実現した。元プロレスリング・ノアのKENTAことヒデオ・イタミ(37)と元ドラゴンゲートの戸澤陽(アキラ・トザワ、32)のシングルマッチだ。

 「205 Live」でのタッグマッチで仲間割れをしたことによって戦うことになった両者。試合前にヒデオは「戸澤は元々好きじゃないし、なんで俺にパートナーが必要なんだ?」と言い放ち、戸澤も「ヒデオはレジェンドだから尊敬していたが、ヒデオは俺に対してリスペクトがない」と火花を散らして、対戦をあおった。日本では、元GHCヘビー級王者だったヒデオと米国では短命ながら先にWWEクルーザー級王座についた戸澤の激突。ドラマとしては面白い。

 試合内容も日本スタイルだった。互いを知り尽くす元パートナー同士の対戦は一進一退の攻防を展開。ヒデオは、戸澤の顔面にサッカーボールキック、ストンピング、ニードロップとえげつない攻撃を仕掛ける。“当て身”はWWEのリングでは珍しい日本式だ。

 戸澤は、ミサイルキック、トペ・コンヒーロとドラゲー仕込みの空中戦を展開。トップロープに上ってブレーンバスターを双方が見舞おうとする日本でおなじみの攻防の末、ヒデオが雪崩式ファルコンアローを決める。戸澤は卍固めから、場外に逃げたヒデオにトペ・スイシーダで逆襲。さらにリングに戻って、必殺技のセントーンを見舞ったが、ヒデオに逃げられ自爆した。

 コーナーでダウンする戸澤に、ヒデオは低空の串刺しドロップキック2発を顔面に決めると、最後はドラゴンスリーパーの体勢から裏返してヒザを叩き込んで片エビ固めで3カウント。ヒデオが戸澤からフォールを奪って日本人対決を日本スタイルの試合で制した。

 この「205 Live」は2016年11月からスタートしたクルーザー級のリミット205ポンド(約93キロ)以下の選手による特番。この下にWWEのファーム的ブランド「NXT」があるわけだが、上にはご存じの2大メジャーブランド、「スマックダウン」と「RAW」がある。

 「スマックダウン」には元新日本プロレスの元IWGPヘビー級王者・中邑真輔(シンスケ・ナカムラ、38)がいて、同じ日に、マサチューセッツ州ウースターでのスマックダウンに出場している。中邑はAJスタイルズの持つWWE王座をめぐって抗争を展開中。この日は、PPV「マネー・イン・ザ・バンク」(日本時間6月18日)でのWWE王座戦の試合形式が、KOのみで勝敗を決める「ラストマンスタンディング戦」に決まった。中邑はパイプ椅子でAJスタイルズを痛めつけてキンシャサ(ボマイェ)を叩き込み、AJから自ら10カウントを取ってKOをアピールした。

 日本でも名勝負を繰り広げた中邑とAJは、これまで3度のタイトルマッチを行っているが、日本スタイルが、そのまま輸入されたわけではない。中邑がヒールに転向することによって、スタイルを変えてきた。AJの股間に右手を差し込み、上腕で急所を打つ、大げさなローブローが2人の試合の見せ場になっているのだ。日本でなら寒いブーイングになろうものだが、米国では大ウケのブーイングとして評価されている。

 ヒデオVS戸澤のような試合はメジャーでは求められていないのか。テレビマッチではリアルに映るが、メジャーの大会場では伝わりにくいかもしれない。そして誰もができるスタイルでもない。時を同じくして新日本プロレスが、米国進出を本格化させ、現IWGPヘビー級王者のオカダ・カズチカ(30)や初代IWGP・USヘビー級王者のケニー・オメガ(34)の日本スタイルの試合を米国で披露している。

 WWEがここにきて、「205 Live」で日本人対決を組んだのは、新日本を意識してのことなのか。メジャーとは別枠ですよ…という思惑があるのでは…、というのは深読みしすぎか。そんな疑問を吹き飛ばすためにも、ヒデオと戸澤には早くメジャーに昇格してもらいたい。(酒井 隆之)

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