【OB戦】宮崎沸いたゴジラ劇場 大飛球にヘルメット叩きつけ「ヒット打ったということで30点」

スポーツ報知
工藤(左)からみごと中前安打を放った松井(カメラ・佐々木 清勝)

◆巨人宮崎キャンプ60年記念 ジャイアンツOB11―3ホークスOB(10日・サンマリンスタジアム宮崎)

 巨人の宮崎キャンプ60年と南海(現ソフトバンク)の球団創立80周年を記念した巨人とホークスのOB戦が10日、サンマリンスタジアム宮崎で行われ、往年の名選手の競演が1万7642人の観衆を沸かせた。主役に躍り出たのは、4年ぶりにGIANTSのユニホームに袖を通した松井秀喜(43)だ。右翼へ大きな当たりを飛ばして喝采を浴びるなど、4打数2安打の活躍で「ゴジラ劇場」を演出。宮崎に笑顔をもたらした。試合は11対3で巨人が勝った。【本文中の出場者は敬称略】

 現役時代さながらの弾丸ライナーだった。松井が一振りで球場を劇場に変えた。初回2死の第1打席。先発・工藤の2ボールからの3球目だった。121キロ直球をフルスイングすると、打球は右翼ポールへ一直線。「フェンスは越えるだろうけど、打った瞬間にファウルでしょ、と」。感想通り、わずかに切れたが飛距離十分の一打に、球場がどよめいた。工藤もたまらず、外野陣をフェンス前まで下げるよう指示を飛ばした。

 ショーは終わらない。4回の第3打席。加藤の初球、外寄りの直球を捉えた。右中間へいい角度で上がった当たりはフェンス手前、アンツーカーの部分で右翼手のグラブに収まった。「あれが精いっぱいです」。アウトになった瞬間、大げさに悔しそうな表情を見せ、ヘルメットを叩きつけた。対戦相手への敬意を忘れないゴジラにしては珍しいシーンだった。

 「今日はお客さんを喜ばせることに徹する日だから。普段というか、現役のころは絶対にしないですよ」。開始は雨のため、1時間遅れたが、待ち続けてくれた1万7642人の観衆へ、感謝のオーバーリアクション。引退しても、松井はプロフェッショナルだった。

 12年限りで現役を引退して、丸5年以上が経過した。6日から巨人の宮崎キャンプに臨時コーチとして指導に当たる。その間、自身の打撃練習は行っていないのに、この打撃には驚くほかない。4打数2安打の結果に「全然イメージと実際のスイングが一致しないですね。ヒット2本打ったということで、30点です」と辛口に自己採点したが、ファンの満足度は十分だった。

 GIANTSのユニホームを着るのは東日本大震災の復興支援を目的とした14年11月16日の巨人VS阪神OB戦(コボスタ宮城)以来、1182日ぶり。球場中が、松井のアーチを見たかった。第1打席では8球目をバックネット前へと打ち上げたが、捕手の城島があえて落球。これには松井も握手を求めた。第4打席でも3ボール1ストライクからインローへと明らかに外れた球も、ストライクの判定で歩かせてもらえなかった。そんな“アシスト”を受けたのも、何が一番観客を喜ばせるか、誰もが分かっていたからだ。

 ミスターにも元気な姿を見せられた。01年以来となる「監督・長嶋、選手・松井」の師弟関係。試合前にはゆっくりと2人の時間を楽しんだ。「『長嶋さんがそこにいる』っていう、それだけでみんなが幸せになる。『フッフッフッ』って感じがします」。恩師ばりに擬音交じりで感謝を表した。

 由伸とともにフルイニング出場。何度もG党に歓喜をもたらした中堅・右翼コンビも復活した。「懐かしかったですね。ヨシノブが右翼にいて、清水さんが左翼にいてね。前に仁志さん、元木さんがいて。いい光景でしたね、久しぶりに」。色あせることない思い出にまた、新たな一ページが加わった。(西村 茂展)

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