【巨人】原辰徳さん、9回阿部への送りバントのサイン絶賛…特別観戦記

スポーツ報知
試合前、高橋監督(左)と談笑する原辰徳氏

◆日本生命セ・パ交流戦 巨人3x―2西武(10日・東京ドーム)

 巨人前監督の原辰徳氏(59)が、スポーツ報知に特別観戦記を寄せた。9回無死一塁で、高橋監督が出した阿部への送りバントのサインを「迷いなく出せたことが素晴らしい」と称賛。若手とベテランが融合してつかんだ1勝を今後に生かしてほしいと願った。(構成・高田 健介)

 9回、高橋監督は無死一塁で、調子のいい阿部に迷いなく送りバントをさせた。非常に勇気のいる決断だっただろうが、積極的な送りバントの采配が勝利をもたらしたと言っても過言ではない。非常に評価できる動きだった。

 なかなか勝率が上がらず下位に沈んでいるが、悲観するような状況ではない。坂本勇、岡本が元気だし、阿部、亀井らベテランもいい状態をキープしている。歯車がうまくかみ合っていないだけで、一度ガチッとはまれば前に進める。

 私が指揮した2006年も、この交流戦の時期に非常に苦しんだ。高橋由、小久保、阿部ら主力が続々けがで離脱して、打線を組むことだけでも苦労した。開幕当初は14あった貯金を使い切り、終わってみれば借金14。今だから言えるが、こんなに弱いチームで野球をやったことはないな、と思ったほどだった。

 幸い、今は故障者が少なく元気な選手が多い。高橋監督も毎日打順を変えたりと、用兵面でも動いている。この観戦記でも何度か書いたが、さらに求めるなら、勝てない時ほど首脳陣がチームを動かすということだった。前回は「裏の裏をかけ」とも言ったが、8回、吉川尚の打席で出したエンドランも含めて「何とかチームを活性化させよう」という高橋監督の意図が見て取れたゲームだった。

 いろいろなサインが出ることで、選手も「ここはエンドランがあるな」「この状況なら俺が決めなくちゃいけないな」と野球を考えるようになる。12年も開幕当初に調子が上がらず、4番・阿部に送りバントのサインを出したことがあった。「阿部さんに出るなら俺にも出るな」と他の選手も考えて練習するようになった。漫然とプレーするのではなく、流れを読めるようになればチームは自然と一つになり、打線が点での攻撃ではなく、線で束になって襲いかかれる。

 この日の勝利を選手もベンチも大きな転機にとらえてほしい。若手の岡本がきっかけをつくり、ベテラン・阿部が自己犠牲を見せて、最後に若い大城が決めた。動いて、選手全員で手にした勝利を無駄にしてはいけない。(巨人軍前監督)

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