【日本ダービー・藤原英調教師インタビュー】エポカドーロ2冠へ「勝つだけの器はある」

スポーツ報知
エポカドーロでダービー2勝目を目指す藤原英調教師。2冠を取れる器だと強調した

◆第85回日本ダービー・G1(5月27日・芝2400メートル、東京競馬場)

 第85回日本ダービー・G1(27日、東京)で主役の一頭として注目を浴びるのは、牡馬クラシック初戦の皐月賞を制したエポカドーロ。史上24頭目の春2冠制覇へ向けて、10年のエイシンフラッシュ以来2勝目を目指す藤原英昭調教師(52)=栗東=に意気込みなどを聞いた。

 ―皐月賞を制したエポカドーロ。7番人気でしたが、終わってみれば2馬身差の完勝でした。

 「最初は逃げる予定でいろいろ準備をしてきたが、何通りかのパターンにはまったというところ。そういう意味では3頭が前に行って実質ハナを切るような形になり、しめしめと思って見ていた」

 ―強い内容でしたが、自信はありましたか。

 「自信というよりも皐月賞でいい結果を出すため、計算して馬をつくってきた。ここを狙ってプロセスを踏んで、馬がグッと良くなっていた。展開が向いたのもあったとはいえ、ここまで余裕の勝ち方ができるとは想像していなかった。本当に爽快な勝利だった」

 ―エポカドーロの長所はどのあたりにあるのでしょうか。

 「オルフェーヴル産駒というところ。とんでもない馬が出てくる可能性、未知の魅力がある。それを今も探っている最中。だから馬をつくっていて楽しい。父の現役時代で印象的なのは逸走して2着まで来た阪神大賞典(12年)。普通なら終わりなのに考えられないこと。あのレースにスケールの大きさと難しさが集約されている」

 ―今回の舞台は初めてとなる左回り、2400メートルに替わります。特別な対策を考えていますか。

 「いつもやっていることを信じて動かない。プロスポーツの世界で真のトップは、そこに何かあるからって簡単に普段のスタイルを変えたりしない。レースに向けて馬を健康にする、フレッシュな状態にするということに尽きる」

 ―今回のメンバーで特に気になるのはどの馬でしょうか。

 「そりゃダノンプレミアムに決まっている。開業して5年目の中内田調教師は今やトップトレーナーになった。見ている方は楽しいかもしれんが、こっちは脅威しかない」

 ―今年は驚異的な成績を挙げています。現在35勝。2位の角居調教師(24勝)に11勝差でリーディングを独走。平成では01年に藤沢和調教師が挙げた68勝を大幅に上回るペースです。

 「リーディングが最終的な目標ではない。ただ、今の勝利数について言うなら、育成、生産のレベルはみんな上がっていて、その集大成。2年以上も休んで勝ったグリュイエール(4月21日、東京・府中S)なんて、我々だけの力でできたものではない。北海道の牧場の力が大きい。そんな関係者の成果が数字として表れている」

 ―藤原英調教師にとってダービーはどんなレースととらえていますか。

 「ダービーは関係者の夢、最大の目標だから、背を向けることはできない。重いものを背負っている。だって、そこで勝つために(競走馬を)買う、生産する、育成するのだから。送り出す我々はアンカーの立場で、大きな目標を達成するために常に努力を続けている」

 ―今までダービーに出走したのは9頭。振り返ってください。

 「一番印象的なのは、開業してまだ3か月で出たテンザンセイザ。出るべくして出たのではない。まだ知られていない藤原厩舎の名前を売るために、京都新聞杯を勝ってから中2週で無理をして使った。経営戦略に応えてくれて本当に感謝している。それがあったから、勝つべくして勝ったエイシンフラッシュにつながったのだと思っている」

 ―そのエイシンフラッシュは上がり3ハロン32秒7という衝撃の末脚でダービーのタイトルをもたらしました。

 「最初からダービーを目指していた馬。だから、あのパフォーマンスができたのはうれしかった。反対にエポカは皐月賞を目指していた馬。もちろん勝てたのはうれしい。ダービーが目標ではなかったけど、出すからにはプロとして納得のいく準備をしないといけない」

 ―最後にダービー2勝目への意気込みを聞かせてください。

 「1週前追い切りはしまい重点で予定通り。今年は1か月ごとに使って5戦目だから、もう上積みはない。それを求めると馬はおかしくなる。大事なのは目いっぱい気持ち良く走れる態勢を整えてあげること。あとは運があるかどうか。エポカは勝つだけの器はある。普段の積み重ねがつながると信じたい。それを受け止めるだけの心技体のある馬だと思う」(聞き手・内尾 篤嗣)

 ◆藤原 英昭(ふじわら・ひであき)1965年6月29日、滋賀県生まれ。52歳。同志社大学では馬術部で活躍。89年9月に栗東・星川薫厩舎の調教助手となり、00年2月に調教師免許を取得。01年3月開業。今年35勝、JRA通算658勝、重賞47勝。G1は10年の日本ダービー(エイシンフラッシュ)、今年の皐月賞(エポカドーロ)をはじめ9勝。地方交流G1・3勝。

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