•  スポーツ報知のWebサイト限定コラムがスタートしました。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

馬トク指数・外厩データ入り馬トク出馬表・指数データ・成績

全レース出馬表・データ・成績を提供中 中山 京都 中京

“テンポイントと寺山修司”講談師・旭堂南鷹が語り継ぐ昭和の物語

2017年12月13日15時0分  スポーツ報知
  • 講談師の旭堂南鷹
  • 第22回有馬記念・G1。優勝はテンポイント、鹿戸明騎手。中央は2着のトウショウボーイ。3着グリーングラス(右)
  • 当時の競馬面を毎週飾った寺山修司さんの人気コラム

 競馬ファンには伝説かもしれない。ちょっと昔の競馬の物語を大阪に本拠に構える講談師・旭堂南鷹(44)が寺山修司原作の「テンポイント物語」を詠んだ。浅草寺の裏手の古びた劇場「木馬亭」座席数は130、昭和香りが漂う小さな劇場だった

 調べてみると1983年の亡くなる直前までスポーツ報知の競馬面に「風の吹くまゝ」という予想のコラムを書いていたというからびっくり。

 「テンポイント先頭だ、テンポイント先頭だこれが関西の期待テンポイントだ、もうムチなどいらぬテンポイント先頭…」ハリ扇で小気味よく釈台をたたく南鷹の目の前にはテンポイントが駆け抜けたターフが広がっていた。

 物語は寒風の吹く1977年12月18日、第22回有馬記念の中山競馬場一人の女性ファンがいた。まだまだ競馬場に女性客が珍しい時代だった。男が女性が持っていた新聞に目をやると「テンポイント」の馬名に赤いペンで線が引いてある。馬名の横に「ひろしちゃん」と書いてある。騎手でも馬主の名前でもない。

 この女性の横にロングコートの紳士がやってくる。

 男「あなたは、この有馬記念、どの馬を買ったんですか?」

 女「はい、テンポイントを買いました」

 男「私はトウショウボーイです」

 女「私、この馬に思い入れがあるんです」

 男「発走までに少し時間がある、その話し、聞かせてもらいませんか?」と聞くと女が語り出す。

 女は、4年ほど前16歳になる子供(ひろし)が家を飛び出した。不倫相手とのあいだに生まれた息子と自分の数奇な運命を病気を理由に処分されかけたテンポイントの祖母馬の「クモワカ」いわゆる「クモワカ伝貧事件」に自身をなぞっていた。

 「テンポイントが走るとき、20になったひろしちゃん元気にしてるかなって、ひろしちゃんどうしてるだろうって、テンポイントを応援しているんです」と話す物語。

 歌人で劇作家の故・寺山修司さん(享年47)が1978年中央競馬会の機関誌、月刊「優駿」に寄せた「テンポイント物語」を講談に仕上げた。91年に3代目旭堂小南陵に入門した6年目の97年、南鷹は寺山氏の元夫人、映画プロデューサーの九條今日子さんに講談化の許諾を得た。

 マイケル・ジャクソンは自伝で「最も優れたエンターテインメントはストーリーテラー(語り部)である」と書いたという。語り部となった南鷹は今日子元夫人に「講談になれば物語は1000年生き続けます」と話した。「『太平記』も『源平合戦』も語り部がつないで現代に残っているんです」と。

 修羅場(講談で盛り上がる場面)に入りゴール前の中山競馬場の情景が目に浮かんだ、南鷹が声を張り上げ、釈台を張り扇でパンパン「トウショウボーイかテンポイントか、トウショウボーイかテンポイントか……残念ながらここでお時間となってしまいました、お後はユーチューブでご覧下さい」講談にありがちな終わりかた、拍手に送られ劇場は中入りになった。

 まもなく今年も有馬記念が行われる。キタサンブラック、ルージュバック、クイーンズリング、シュヴァルグラン、名馬がグランプリをめざし出走する。現代の語り部・旭堂南鷹師の予想はいかに。私は「風の吹くまゝ」を探してみる。(記者コラム・コンテンツ編集部 越川 亘)

  • 楽天SocialNewsに投稿!
PR
コラム
今日のスポーツ報知(東京版)