【クイーンエリザベス2世C・ステップレース分析】地元香港の有力馬は?海外競馬通・成田幸穂が香港ダービーを分析

スポーツ報知
香港ダービーを制したピンハイスター

 G1クイーンエリザベス2世C(芝2000メートル)が4月29日に香港のシャティン競馬場で行われる。小欄では当レースに向けたステップレースとして、3月18日の香港ダービー(シャティン競馬場・芝2000メートル=14頭立て)を取り上げたい。

 香港ダービーは、香港調教の4歳馬限定戦。香港クラシックマイル(芝1600メートル)と香港クラシックカップ(芝1800メートル)を加えた3レースで構成される「4歳シリーズ」最後の1冠となっている。

 歴代の香港ダービー馬には、2005年のヴェンジャンスオブレイン、2011年のアンビシャスドラゴン、2014年のデザインズオンローム、2016年のワーザーなど当地を代表する名馬が並ぶ。ちなみに、列挙した4頭はいずれも香港ダービー優勝後に同年のクイーンエリザベス2世Cも制している。

 今年は4番人気のピンハイスター(セン4歳、香・サイズ厩舎)が優勝した。スタートの際、ゲートが開くと同時に少し立ち上がる態勢になって出遅れ。道中は最後方を追走し、しんがりのまま最終コーナーを回った。直線に向いてライアン・ムーア騎手に追い出されると、馬群の外から力強く伸びて前を行く各馬を次々と抜き去り、最後は後続に1馬身3/4差をつけて完勝した。勝ちタイムは2分1秒18。ラスト400メートルはメンバー中最速の21秒99。

 香港クラシックカップの勝ち馬で2番人気のシンガポールスリング(セン4歳、香・ミラード厩舎)が2着。中団7番手からロスなくレースを進めたが、勝ち馬の強烈な決め手に屈した。ラスト400メートルはメンバー中3位の22秒60。1番人気のエグザルタント(セン4歳、香・Aクルーズ厩舎)が3着。後方2番手からしぶとく伸びたが、前の2頭を捉えるにはいたらなかった。ラスト400メートルはメンバー中2位の22秒26。

 ラップタイムを振り返ると、1200メートル通過は1分14秒80。香港ダービーとしては例年どおりの流れで、シャティンの芝2000メートル戦としてはハイペースだった。勝ちタイムの2分1秒18は、香港ダービーが芝2000メートルで行われるようになった2000年(1999/2000年シーズン)以降で最速のもの。今シーズンのシャティンの芝レースは速い時計が出やすい傾向にあるが、それを考慮しても優秀なタイムといえる。

 勝ったピンハイスターは、3歳時にオーストラリアで3戦2勝の成績を残して香港へ移籍。その後は芝1400メートルの一般戦に3勝。香港クラシックマイル、香港クラシックカップの2戦には出走しておらず、今回が初の大舞台だった。豪快な追い込み、好タイム、確かな決め手と、大物感たっぷりの勝ち方。本番のクイーンエリザベス2世Cでも注目の存在である本馬については、能力分析で再度取り上げたい。

 ◆成田幸穂(なりた・さちほ) 1984年8月8日、東京生まれ。(株)サラブレッド血統センター所属。週刊競馬ブック連載「海外競馬ニュース」の編集を担当。同誌のほか、南関東版・競馬ブックと研究ニュースで予想コラム「血統アカデミー」を執筆中。

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