【クイーンエリザベス2世C・能力分析】日本馬に立ち塞がる地元の有力馬を分析

スポーツ報知
昨年の香港C・G1を制したタイムワープ(左)

 G1クイーンエリザベス2世Cが29日に迫った。今年は地元香港馬と日本馬による争い。小欄では日本のアルアインとダンビュライトに立ち塞がる香港の有力馬を取り上げたい。

 ピンハイスター(セン4歳、香・サイズ厩舎)は、今年の香港ダービー馬。ステップレース分析で述べたとおり、最後方から豪快な追い込みを決めて快勝した。レース後、手綱を取ったライアン・ムーア騎手は、ピンハイスターについて「非常に優れた馬だ」と絶賛。馬群からやや離れた最後方の位置取りとなったことは予定外だったようだが、道中は自信を持って乗っていたという。

 今回騎乗予定のジョアン・モレイラ騎手は、香港ダービーの前にピンハイスターとともに芝1400メートルの一般戦を3連勝。ムーア騎手と同じく、同馬の資質を高く評価しており、クセもつかんでいるようだ。

 550kgを超える大型馬が繰り出す追い込みは迫力満点で、決め手も鋭い。日本馬を含む一線級とは初対戦となるが、ムーア、モレイラの名手ふたりが認める逸材の走りに注目したい。

 タイムワープ(セン5歳、香・Aクルーズ厩舎)は、昨年のG1香港C(芝2000メートル)を逃げ切り勝ち。今年2月のG1香港ゴールドC(芝2000メートル)でもハナを切る展開となったが、道中で他馬に絡まれたこともあって1200メートル通過が1分12秒42のハイペースに。それでもワーザー、パキスタンスターらの猛追をしのいで押し切った。勝ちタイムの1分59秒97はコースレコード。シャティンの芝2000メートル戦で初めて2分を切る好タイムを記録した。

 抜群の機動力とスピードは魅力だが、両刃の剣でもある。前走のG2シャティントロフィー(芝1600メートル)では、800メートル通過が46秒88というG1級のハイペースで飛ばしてしまい、最下位10着に惨敗。有り余るスピードの制御が難しい面をのぞかせた。向こう正面でいかに息を入れるか。これがタイムワープの勝敗を分けるカギになりそうだ。

 最も取捨に悩むのがパキスタンスター(セン5歳、香・Aクルーズ厩舎)。昨年のクイーンエリザベス2世Cでは逃げ粘るネオリアリズムに首差まで迫る2着に好走。飛躍を期待されていたが、その後はレースや調教の際に走るのをやめてしまうクセを出すようになり、ちぐはぐな競馬が続いている。

 4月20日には審査を兼ねたバリアトライアル(実戦形式の調教)に参加。好スタートを決めて逃げる形となり、最後までやめずに走り切って出走13頭中5着でゴール。審査にも合格した。

 当ホームページの「アンソニー・クルーズ調教師インタビュー」でも語られているように、調教、ゲート試験の積み重ねによる成果が出始めているのだろう。しかし、気性的な問題ということもあり、筆者としては半信半疑。今回は押さえの評価が妥当と見ている。

 ◆成田幸穂(なりた・さちほ) 1984年8月8日、東京生まれ。(株)サラブレッド血統センター所属。週刊競馬ブック連載「海外競馬ニュース」の編集を担当。同誌のほか、南関東版・競馬ブックと研究ニュースで予想コラム「血統アカデミー」を執筆中。

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