戦え日本人!ハリル監督植え付ける「W杯マインド」

スポーツ報知
サッカーミュージアムにあるW杯のレプリカトロフィーを手にして笑顔を見せるハリルホジッチ監督(カメラ・竜田 卓)

 6月14日開幕のロシアW杯に挑む日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(65)が新年のインタビューに応じ、半年後に迫った本大会に向けて選手たちに「W杯マインド」を植えつけると宣言した。「たたかれたらやり返すくらいの気持ちが必要」と語る指揮官が、2014年ブラジルW杯でアルジェリアを16強に導いた経験を生かし、6大会連続出場で2大会ぶりの決勝トーナメント進出を狙う日本に闘争心を注入する。(斎藤 成俊)

 W杯での成功に向けて残り半年で選手に一番伝えたいことは何か。ハリル監督が迷うことなく挙げたのは“闘争心”だった。

 「W杯に向けた精神、W杯マインドです」

 相手の分析、戦術などももちろん大切だが、勝負を左右するのは気持ち。安易に聞こえるかもしれないが経験から導き出した答えだ。アルジェリアを率いたブラジルW杯、結果的に延長戦で敗れたが決勝トーナメント1回戦で、優勝国となった強豪のドイツに臆することなく戦いを挑み世界から称賛された。15年3月の日本代表監督就任以来、物足りなさを感じるのが日本人の精神面だ。真面目で温和な性格を評価する一方、ピッチ内での闘志の足りなさを指摘し続けてきた。

 「激しくいけば日本人は何もできなくなるという評価を私は避けたい。実際にそういうことを耳にしている。相手にたたかれたら、やり返すくらいの気持ちが必要だ。おとなしくなってはダメ。W杯への精神は、そういうのも含めて準備しないといけない」

 メッシを手本に 熱を帯びたインタビューでは、凍えたように身を縮め弱さを、胸を大きく張って勇敢な姿を表現した。1―4で敗れた東アジアE―1選手権の韓国戦でも、激しいプレーでくる相手に対して「やり返せ」とゲキを飛ばしていたという。

 「体格で劣っても果敢な姿は見せられる。例えばメッシ。あの体格(身長169センチ)で勇敢さ、勇気を持っている。日本人ももっと思い切りプレーしてほしい」

 気持ちの緩みは、体調管理にも直結すると指摘する。就任以降、口を酸っぱくして言い続けている体脂肪率問題にも改めて言及した。

 「結果を残したいなら変えていかないといけない部分もある。例えばJリーグの選手たち。テストでは9割の選手が体脂肪率の問題を抱えている。この問題は国内の選手だけで海外組にはない。体脂肪率を測るということは、自分の体が戦う準備ができているのか、ということ。理想的な体を求めるために9、10%というところまで持っていってほしい。けがも少なく、より走れるようになる」

 これまで基準としていたのは12%以下。W杯で戦うために、さらに数字を引き下げた。

 「体脂肪率が高ければ、その選手は戦う準備ができていない。少なくともW杯レベルでは戦えない。みんなW杯でプレーしたいと思っているだろうが、それに値する状態に自分で持っていかないといけない。条件は国内も海外も同じ。現時点でW杯メンバー入りを確約されている選手は一人もいない。4年前のW杯で状態が良かったことはロシアW杯に行く条件ではない。『やる気がある』と口で言うのは簡単だが、その意欲はピッチ上で見せないといけない。意欲があっても体脂肪率14、15%だったら準備ができていないということ。真実はピッチ上にある」

 口よりも結果。2大会ぶりの16強、そして史上初の8強に向けて指揮官の要求は高い。

 「監督として細部にわたって判断を間違わないよう考えていきたいが、最終的に主役は選手。選手側からも変わりたいという部分がなければ進化はない。気持ちと101%のフィジカルコンディションが必要だ。勇敢に戦って、それでも負けたなら仕方ない。おとなしく負ける姿は見たくない。これからの仕事はムズカシイが、日本は果敢に戦ってベストを尽くしたと、みんなが誇りを感じるようなチームにしたい。アレ(頑張れ)ニッポン」

 高圧的と取られる言動は批判も浴びることも多いが、日本を強くしたいという気持ちにウソはない。ハリル監督の闘志あふれる言葉とともにW杯イヤーが幕を開けた。

 ◆「大きな影響力持つ」長谷部に仏医師を紹介

 W杯メンバー選考において心配されるのが右膝痛を抱えるMF長谷部誠(フランクフルト)の状態だ。「選手、人間としてチームにとって重要な存在。他の選手に対して大きな影響力を持つ」。ハリル監督は、信頼を寄せる主将に対してフランスの医師を紹介した。「かなりポジティブな報告を受けた。改善できるというものだった」。仮に満足にプレーできなくても精神的支柱として選出するかについては「旅行者として連れていく選手はいない。ピッチに立つことができる選手を選ぶのが正常だ」と断言した。

 パフォーマンス不足を理由に選外としているFW本田圭佑(パチューカ)、MF香川真司(ドルトムント)については「他の選手同様、W杯に向けた候補」と特別視していないことを強調。その上で「試合をチェックしているが、まだ満足いくレベルではない。あとは代表がどういうサッカーをやっているのか、そして彼らがどういうスタイルなのかということも考えないといけない。経験ある選手たちだと思うが、私は現時点のパフォーマンスを見ている。高いパフォーマンスを見せれば呼ぶ」とした。

 ◆14年ブラジルW杯のアルジェリア代表

 ハリル監督率いる同国は1次リーグでベルギー、韓国、ロシアと同組。ベルギー戦は1―2で敗れたが、韓国に4―2、ロシアに1―1で同国を初めて16強入りさせた。決勝トーナメント1回戦では優勝したドイツと対戦。延長の末に1―2で敗れたが、闘志を前面に出した激しいプレーで強豪をあと一歩のところまで追いつめ世界中から称賛を浴びた。ハリル監督も4試合で先発を代えるなど、相手を分析した臨機応変な采配で評価を高めた。

 ◆バヒド・ハリルホジッチ 1952年5月15日、ボスニア・ヘルツェゴビナ生まれ。65歳。旧ユーゴスラビア代表FWで82年スペインW杯出場。82~83年、84~85年にフランス1部ナントで得点王。87年に引退。97年にラジャ・カサブランカ(モロッコ)の監督に就任し、アフリカクラブ王者。2008~10年にコートジボワール代表監督。11年からアルジェリアを率いて14年ブラジルW杯で同国初の16強。同年7月にトルコ・トラブゾンスポルの監督に就任、11月に退団。15年3月に日本代表監督に就任した。

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