本田、香川、岡崎…経験値はW杯でとても大事 エディー前HCからハリル監督への提言(後編)

スポーツ報知
ロシアW杯の公式球を蹴るエディー・ジョーンズ氏

 サッカーの日本代表が挑むロシアW杯(6月開幕)に関する企画を随時掲載する「アレ・ル・ニッポン!(いくぞ 日本)」の第2回は、2015年ラグビーW杯日本代表ヘッドコーチで、現イングランド代表監督のエディー・ジョーンズ氏(57)が、本大会に向けたメンバー構成について語った。ラグビー界の名将は、経験の重要性や選手の自立の大切さをカギに挙げた。(取材、構成=斎藤成俊、小河原俊哉)

 代表監督を悩ませるのが選手選考だ。戦術への適性なども考慮しながら、W杯で戦える選手を見極めなければならない。ハリル監督は現在、FW本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)、MF香川真司(ドルトムント)の“ビッグ3”を招集外としている。エディー氏は「やはり戦術に合った人を選ぶこともある」と話す一方、大舞台では経験がモノを言うと指摘した。日本を3勝に導いた15年ラグビーW杯では、先発15人の代表キャップ総数は600前後。同氏は、4年かけて1人平均40の試合経験を積ませていた。

 「経験値というのはワールドカップでとても大事。経験ある選手は大舞台のプレッシャーを理解し、何をしないといけないか、成功するための準備も知っている。本田、香川、岡崎選手は本当にすごい高いレベルで試合をしています。彼らがベストの状態になれば、W杯でチームとして良いパフォーマンスを出せるかもしれない。私はサッカーも大好き。昨年、レスターの岡崎の試合を見ましたが、彼はベストプレーヤーで、試合後のスタッツも素晴らしいものだった」

 厳しい海外リーグでもまれ経験も豊富な“ビッグ3”が代表から外れている現状を、エディー氏は、チーム強化を狙うハリル監督の“秘策”だと読んでいる。

 「呼んでいないのは、おそらく監督の戦術でしょう。さらに高いパフォーマンスを発揮させるためにモチベーションを与えている。そのやり方は間違っていない。ただ、モチベーションが何によって変わるかは1人、1人違う。フレキシビリティーが求められる部分ではある」

 代表活動において、普段の試合のレベル、コンディションも異なる国内組と海外組をまとめるのは至難の業だ。しかし、エディー氏はマイナスではなく、チームに“相乗効果”を生むと捉えている。

 「この問題はディスアドバンテージ(不利)ではない。まず国内組はチーム構成において(序列が)下の方にいると考える。だから、彼らは誰よりもハードに練習をしなければならない。そして、いざ代表活動が始まったときに国内組の状態が上であれば、海外組を一生懸命トレーニングさせて、その上に行かせる。これがチームを前進させる」

 チームマネジメントにおいて、監督が全てを掌握した上、ピッチ内では選手の自立も結果を左右すると考える。

 「選手は試合中、自分たちでリードできるようにもならないといけない。例えば香川が中盤の責任を負い、岡崎がフロントライン、吉田(麻也)がバックラインと。W杯の成功は、そういう人がどのぐらい影響力を及ぼせるかで決まる。もし、自分がサッカーの監督ならキーパーソンとなる3人とかなりの時間を共有する。彼らに何をさせるか、その3人がいかにコミュニケーションを取り合えるかを考える」

 ハリル・ジャパンの下馬評は低い。それでも、何が起こるか分からないのがW杯。エディー氏は、5か月後の日本代表の躍進を願い力強くエールを送った。

 「私もとても興奮しています。失敗を恐れないでほしい。勇敢に、ジャパンウェーをやってください」

 ◆エディー氏、6か国対抗で史上初の単独3連覇に挑む

 日本代表HCを退任した後、15年11月に外国人として初めてイングランド代表監督に就任したエディー氏は、2月に開幕する6か国対抗戦で史上初の単独3連覇に挑む。「誰もやったことがないこと。追われる立場になるが、こちらから追うんだというメンタリティーを選手たちに植えつけている最中だ。狩猟民族のごとく狩る。ハンティングしにいく」と意気込んだ。

 03年優勝などW杯4強の常連だったイングランドだが、自国開催の15年W杯は初の予選落ち。エディー氏の就任後は、6か国対抗で13年ぶりにグランドスラム(5戦全勝優勝)を達成し昨年は2連覇。ラグビーの母国を見事に再建し、日本初開催の19年W杯では、V3を狙うニュージーランドと肩を並べる優勝候補に挙がっている。11月17日にはラグビーの聖地、英トゥイッケナムで古巣の日本代表とテストマッチも行う。エディー氏は「イングランド式の熱い歓迎をするよ。ジェイミー(ジョセフ日本代表HC)に言っといてくれ」と笑った。

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