【二宮寿朗の週刊文蹴】「オフ優先」南アでの成功体験生かしたい

スポーツ報知
日本代表・西野朗監督

 ロシアW杯を戦い抜くには、何より「良いコンディション」が大切になる。追い込んでいく“ムチ”だけでは、その条件は満たされない。心身を休ませる“アメ”とのセットで成り立つものだ。

 日本代表の西野朗新監督が就任会見で、本大会に入る前にオフを与える意向を示したことはヒットだと思えた。「4、5月における国内組のマッチスケジュールを見ると、ルヴァン杯を含めて相当な数の試合になる。いい形でリフレッシュしたうえで、キャンプに入ってきてもらいたい」。Jリーグが5月20日に中断すると当初、代表チームはすぐに国内キャンプを張る予定だったという。これを数日間のオフを先に与える方針に切り替えたわけである。

 国内組はW杯のシワ寄せで過密日程にあり、海外への移動が伴うACL組は負担がかかっている。オフなしで代表合宿に入ってしまえば今度は23人に残る最後のメンバー争いが待ち受ける。息をつく暇もないのだから“勤続疲労”のリスクが高まってもおかしくはない。シーズンを終える海外組にしても、1年間の疲労は小さくない。リフレッシュさせる方針は海外組にも適用されるだろう。

 8年前、南アフリカW杯の前に、わざわざオフを設けたのが当時の岡田武史監督であった。「休ませないことには本大会で体が持たなくなる。休ませるというのは怖いんだけど、それでも休みを優先させたい」。スケジュールは5月16日でJリーグが中断し、24日に壮行試合の韓国戦を行う流れであった。すぐに合宿をスタートさせるのではなく4、5日間のオフを与えて試合3日前に集合させている。

 韓国戦は完敗に終わり、指揮官に対する批判が巻き起こった。だが、先を見据えた「オフ優先」の決断は当たり、本大会はベスト16に躍進した。“アメ与えてコンディション固まる”。南アフリカでの成功体験を生かしたい。(スポーツライター)

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