【二宮寿朗の週刊文蹴】前橋育英V 果たせた約束

2018年1月12日12時0分  スポーツ報知

 鬼の目に涙である。

 サッカーの全国高校選手権は、前橋育英の初優勝で幕を閉じた。就任36年目で悲願を達成した山田耕介監督の目には光るものがあった。

 山口素弘、松田直樹、細貝萌、青木拓矢…。個性あふれるJリーガーを多く育ててきた名将について、生前の松田から「先生は、人のいいところを伸ばしてくれる」と聞いたことがある。長所を大事にする指導方針で、前橋育英を屈指の強豪校に仕立て上げた。

 松田からは一方で「とにかく普段の生活や規律に厳しかった」とも。誰かが遅刻をすれば連帯責任。アイシングをやっていないだけでも、雷が落ちた。何度も“愛のムチ”を食らったそうだが、恩師のことになると彼はいつも楽しそうに話していたのを思い出す。

 「俺が勘違いすると、先生にはよく鼻をへし折られた。でも人間味があって、一緒の目線になって言ってくれる。厳しいけど、先生は温かい」

 11年夏、練習中に倒れて帰らぬ人となった松田の告別式。山田監督は遺影の前に立って、高校選手権優勝を誓った。

 2人の交流はずっと続いていた。09年の正月には群馬県のサッカーイベントに松田が呼ばれ、前橋育英OBで食事会が開かれた。その思い出話を山田監督に語ってもらったことがある。

 「夜遅くまでいろんな話をしました。真顔になったマツに『先生、優勝しなきゃダメだよ』と言われたことは胸に響きました。昔、マツに対しては本当によく怒りました。日本を代表する選手にさせなきゃいけないと思って、より厳しく接しました。『偉そうにするな。掃除、洗濯もしっかりやれ。すべて率先してやれ』とね。マツは分かってくれていたと思います」

 やっと果たせた約束。母校の初優勝を、天国の松田も喜んでいるに違いない。(スポーツライター)

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