09年世界陸上代表・寺田明日香、娘の前で7人制ラグビーで再び輝く

2017年1月24日11時0分  スポーツ報知
  • 7人制女子ラグビーに転向して東京五輪を目指す寺田(カメラ・池内 雅彦)

 ラグビー7人制女子日本代表に有望な新戦力候補が加わった。09年ベルリン世界陸上100メートル障害代表の寺田明日香(27)=東京フェニックス=が昨年末、一般公募で人材を発掘するトライアウトに合格した。13年の引退、結婚、出産を経て、リオデジャネイロ五輪を見てラグビー挑戦を決意。最速50メートル6秒2の快足で代表入りをつかみ、東京五輪では娘・果緒ちゃん(2)の前で活躍するという目標にトライする。(取材、構成・大和田 佳世)

 トップハードラーからママになった寺田が、7人制女子ラグビー代表入りへの第1ハードルを越えた。昨年末のトライアウトに合格。「良かったという気持ちと、選ばれたからには合宿をクリアしていかないと」。19~22日には練習生として強化合宿に参加し、リオ五輪代表選手らと共にトレーニングを積んだ。

 東京五輪出場をラグビーで目指す―。そんなことは半年前まで考えてもいなかった。小4から陸上一筋で09年の世界陸上に出場。12年ロンドン五輪の出場権を逃して13年6月に引退した。その時、同じ北海道出身で高校時代からの友人で7人制女子五輪代表の桑井亜乃(27)=アルカス熊谷=に「ラグビーやろうよ」と誘われたが「体も心もボロボロ。アスリートでいたくない」と号泣して断った。14年3月には峻一さん(33)と結婚し、8月に長女を出産。開催が決まった20年東京五輪は「子供に見せたい」と思っていた。その後は早大に入学し、アスリートとは離れた生活を送っていた。

 転機はリオ五輪だった。「亜乃の応援」で見ていた試合。チームNO1の快足・山口真理恵さえ、海外勢には簡単に捕まった。「私だったらこう動いて走るな」と選手目線で考えている自分がいた。「速さを取り戻せば、メダルを取る助けになるかもしれない」。以前から誘われていた知人のチーム関係者、夫の後押しもあり、挑戦を決めた。

 選手、母親、妻、学生の4役をこなす日々は「チョーきつい」。午前6時に起き、朝食を作って家を出る。7時から1時間の朝練を終えて帰宅すると、娘にご飯を食べさせ、出勤する夫を送り出す。娘が昼寝する間に勉強し、夕ご飯を作り、再び練習へ。夫はもちろん、近くに住む義母のサポートも受ける。

 競技歴は4か月。初めて触れる楕円(だえん)球を「どうやって持つの? どうやって投げるの?」から始まり、キックはまだできない。しかしタックルを受けても「出産より痛くない」。話に聞いていたハードな合宿も「練習で吐く方が、胃腸炎よりマシ」。超プラス思考に加え、競技は違えどトップ選手としての経験と、自己ベストは6秒2だが、50メートルは7秒2から6秒52まで戻ったスピードで新たな挑戦を楽しんでいる。元々、一度決めたら突き進む性格。寂しい思いをさせている娘のためにも「活躍するしかない」と腹をくくった。東京五輪まで数々のハードルを越えながら、真っすぐ走っていく。

 ◆寺田 明日香(てらだ・あすか)現姓・佐藤明日香。1990年1月14日、札幌市生まれ。27歳。小4から陸上を始め、恵庭北高で高校総体100メートル障害3連覇。08年に北海道ハイテクAC入りし、同年から日本選手権3連覇。09年ベルリン世界陸上出場、アジア選手権銀メダル。当時出した13秒05は現在も20歳未満の日本記録。13年6月の日本選手権を最後に引退。14年3月に結婚し、4月に早大人間科学部人間情報科学科へ入学。8月に長女を出産した。16年8月に東京フェニックスでラグビーを始める。167センチ、54キロで「60キロまで増やしたい」。

 ◆代表に欲しい逸材

 リオ五輪で日本女子代表は1勝4敗の10位に終わった。最大の課題は選手層の薄さ。5年の準備期間で合計1100日超の代表活動を行ってきたが、ヘッドコーチを務めた浅見敬子氏は「けがやコンディション不良に悩まされた」と振り返った。

 東京五輪に向けて、稲田仁ヘッドコーチ代行(34)は「鍛えながら、国際経験をしながら選手層を厚くしていくこと」と目標を掲げる。再出発となる今年は、1~3月に個人の基礎体力をつけることを重視。リオ五輪代表、昨年世界学生選手権で3位になったメンバーらを中心に18年W杯(7月・米サンフランシスコ)の代表を争う。

 他競技からの転向組は「世界でも本当にスペシャルな選手じゃないと活躍は難しくなっている」と稲田氏。トライアウトで出した寺田の40メートル走の記録(非公表)は、関係者によるとリオ五輪で金メダルを獲得したオーストラリア代表のトップを超えたという。トライを取り切る力とスピードが欲しい代表にとっては、大きな武器に可能性がある。

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