14歳・張本智和、超攻撃的卓球で王者・水谷を圧倒 宮崎強化本部長「中国も倒せるスタイル」

スポーツ報知
男子シングルス初優勝の張本はNO1ポーズで笑顔を見せる(カメラ・堺 恒志)

◆卓球 全日本選手権最終日 ▽男子シングルス決勝 張本4―2水谷(21日・東京体育館)

 男子シングルスで張本智和(14)=エリートアカデミー=が史上最年少優勝を成し遂げた。決勝では昨年の世界選手権2回戦で勝利して以来の再戦となった、今大会4連覇中の水谷隼(28)=木下グループ=を4―2で撃破。14歳208日での優勝は男女を通じ、女子で前回大会の平野美宇の16歳283日を上回る最年少。2020年東京五輪の試合会場で、2年後の個人&団体金メダル獲得を誓った。

 日本卓球界の歴史が動いた。張本は勝利の瞬間、両手を広げて静かに喜びをかみしめ、コーチ席の父・宇さんに駆け寄って抱きついた。得点時や勝利で叫ぶ「チョレイ!」は1ポイント目から全開だったが、最後は「うれしすぎて声が出なかった。今までやってきた中で、一番最高の瞬間です」。普段は記念品を実家に送るが「今まで取ったトロフィーで一番重い物。自分の部屋に飾れたら」と笑顔がはじけた。

 昨年は4回戦で敗れた全日本で恐るべき成長を見せつけた。18日のジュニアを最年少で制し、準決勝では森薗政崇(22)=明大=にストレートで完勝。決勝では昨年の世界選手権に続き水谷を破った。前回は勢いに乗っての大金星だったが、水谷が「一番の脅威だった。中国の(世界選手権銀メダルの)樊振東と同じレベル」と振り返ったバックハンドで翻弄。6連続失点で落とした直後の第4ゲームを11―2で奪う精神面の強さも見せ「今回はしっかり実力で勝った。今でも憧れの選手。相手が水谷さんだったから120%を出せた」と胸を張った。

 超攻撃的な卓球は関係者にも衝撃を与えた。水谷は「たくさん中国の選手とやってきたけど、彼らと同じレベルにある。彼が100%の力だったら、日本の誰がやっても勝てないでしょう」と脱帽。男子日本代表の倉嶋洋介監督も「プレーが水谷よりワンテンポ速い。新しい時代に突入した」とうなった。所属の総監督で日本協会の宮崎義仁強化本部長は「レシーブから全部攻める。中国をも倒せる卓球スタイル、金メダルを取れる卓球スタイルが確立されたと思う」と目を細めた。

 旺盛な学習意欲が進化を導いている。練習では「最後の1球。あと1分」と言いながら、1時間を超えることも珍しくない。代表合宿では倉嶋監督の個別指導を受け、サーブの種類も格段に増えた。マット運動や側転が苦手な一面もあるが、指揮官も「弱点を指摘されたら、やれるまで徹底的にやる」と負けん気の強さに舌を巻く。母・凌さんの方針で学業にも全力で、小学校時代の成績は学年トップクラス。海外遠征中も学校や塾の課題に励んでいる。

 東京五輪の会場となる東京体育館は、7月に改修工事に入る。聖地で行われる五輪前最後の全日本を制し、場内インタビューでは6500人の大観衆に「2年後ここに戻ってきて、東京五輪で金メダル2つ(個人&団体)取れるように頑張ります」と宣言した。歴史的勝利から「張本時代」を築いていく。(林 直史)

 ◆主な14歳での快挙

 ▽岩崎恭子 92年バルセロナ五輪女子200メートル平泳ぎで金メダル(14歳6日)

 ▽浅田真央 05年フィギュアスケート世界ジュニア選手権で、女子で大会史上初のトリプルアクセルを決め初優勝(14歳5か月)

 ▽山口すず夏 15年にゴルフの全米女子オープン予選会を日本人最年少で突破(14歳10か月)

 ▽藤井聡太四段 17年6月に歴代最多となる将棋公式戦29連勝を達成(14歳11か月)

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