張本、世界1位を撃破「100%以上の力が出せた」東京五輪金メダルへ自信

スポーツ報知
世界1位の樊振東からポイントを奪い、雄たけびをあげる張本智和(カメラ・森田 俊弥)

◆卓球 アジア杯第1日(6日・横浜文化体育館)

 世界ランク13位の張本智和(14)=エリートアカデミー=が世界NO1を倒す大金星を挙げた。男子1次リーグA組で樊(はん)振東(21)=中国=に3―1で勝利。日本男子が世界1位に勝つのは、12年4月ロンドン五輪アジア予選の丹羽孝希(対馬龍、中国)以来で、シニアの国際大会では初めて中国勢を撃破。歴史を塗り替え続ける14歳が、世界選手権団体戦(29日開幕・スウェーデン)を前に、王国・中国に大きな衝撃を与えた。

 喜びのあまり張本は代名詞の雄たけび「チョレイ」すら出なかった。世界1位の樊振東を相手にマッチポイントを握り、バックハンドで試合を決めた。両手で頭を抱えて「信じられない。何も考えられない。100%以上の力が出せた」と言葉を失った。馬龍に続く中国の次世代エースから挙げた大金星をかみしめ、しっかりと握手を交わした。

 1試合目でゲラシメンコ(カザフスタン)を下した後、ふがいない試合ぶりに倉嶋洋介・男子日本代表監督(41)から30分の“お説教”を受けた。「長所を最大限生かせ。マークされても勝つのがトップ選手。調子がどうこう言っていたら上へあがれない」。1月の全日本選手権を最年少で制した後、国際大会ではバック主軸の攻めを封じられ、フォアが大振りになって体付近への打球に苦戦。「調子が悪い」と言い訳をした。全日本の決勝後に対戦相手と握手する前にコーチ席に駆け寄ったことを日本協会に注意されたのを報じられ、落ち込んだこともあった。

 迎えたこの日2試合目。全てを振り払うように、倉嶋監督が「世界一」と称するバックハンドで昨年の世界選手権銀メダリストに挑んだ。対戦は2度目。2月のW杯団体戦では敗れたが、その時に手応えを得た「スキがある」フォアを突いた。第4ゲームはサーブへの対応が遅れて3連続失点で5―5に追いつかれた。タイムアウトで一呼吸を置き、「1番の武器じゃないと勝てない」と強気にチキータ(バックハンドの攻撃的サーブレシーブ)でポイントを取り、流れを渡さなかった。

 世界選手権団体戦でも立ちはだかるライバルに存在を知らしめ、憧れの21歳の樊から「勢いがあった。バックが強くコースの変化もよかった。中国で既に警戒している選手」と認められた。シニアの国際大会で中国勢から初勝利を手にし、1つ壁を越えた。「20年東京五輪金メダルへ少し自信がついた。バックハンド以外も良くなればどうなるか、自分でも楽しみ」。伸びしろ無限大の14歳にとって、王者撃破も通過点なのかもしれない。(大和田 佳世)

 ◆張本の主な快挙

 ▼V6 小学1年時から世代別の全日本選手権を6連覇。

 ▼世界選手権 17年に13歳11か月で出場し、2回戦でリオ五輪団体銀、シングルス銅メダルの水谷隼を4―1で撃破。史上最年少で8強入りを果たした。

 ▼ワールドツアー 17年8月のチェコ・オープン決勝で、元世界ランク1位でドイツの、ティモ・ボルに勝利。伊藤美誠が持っていた14歳152日を塗り替え、男女を通じてツアー史上最年少となる14歳61日で優勝。

 ▼全日本選手権 14歳208日で男女を通じ、史上最年少優勝を飾った。決勝では4連覇中だった水谷隼を4―2で下した。

 ◆張本に聞く

 ―勝因は。

 「集中していいプレーができた。中学の友達が見に来てくれていて、気になるかと思ったけどモードに入ったら気にならなかった」

 ―戦略は。

 「相手を動かしていった。(ゲームカウント)2―1で焦らせることができて良かった。細かいプレーが今日だけ僕の方が上だった」

 ―会心のプレー

 「マッチポイントで(相手の)フォアに入った。それが今日の試合を物語っていると思う」

 ―憧れの存在に勝った。

 「勝ったから目標がなくなるわけではなく、次も勝ち続けられるようにしたい」

 ―3試合目も難敵だった。

 「勢いだけではどうにもならない相手。サーブの種類を増やして対応できた」

 ―今大会の目標。

 「ラリーは調子がいい。サーブレシーブを的確にして優勝したい」

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