【有森裕子コラム】卓球南北合同チーム 大会中の結成は決して美談じゃない

スポーツ報知

 先日閉幕した卓球の世界選手権で、女子の韓国チームと北朝鮮チームが大会期間中に急きょ合同チーム「コリア」を結成し、準決勝で日本と対戦するという出来事がありました。4月末に南北首脳会談が行われ、政治では融和に向けた動きが急速に進んでいるようですが、それと今回のものとは全くの別の問題です。

 大会前に合同チームを結成するのなら、理解できます。でも、これが途中でいきなり「一緒になろう」というのには驚かされました。これは、美談…ではないですね。出場している選手が最もリスペクトしなければいけないのは、直接対戦する相手も含めた全ての出場選手。その人たちに対して、あまりにも配慮が欠けていたと思います。何より、大会運営側が結成を認めてしまったことに疑問を感じざるを得ませんでした。

 平昌五輪では両国が一緒に行進をしましたが、それを批判はしません。また、女子アイスホッケーチームが合同チームで出場しましたが、大会前から決まっていたことですし、問題ありません。でも今回は、この2つとは全く事情が異なります。順位そのものに影響を与えているわけですし、何より勝ったからよかったものの、対戦した日本チームにも動揺を与えたかと思います。

 「スポーツに政治を持ち込んではいけない」とはよく聞く言葉ですが、現実問題でいえば五輪をはじめ現代でそれを貫き通すことは難しいといえます。ただ、今回の件は、なぜそうする必要があったのか意図はよく分かりませんが、単純にわがままを通しただけというか、そのために政治をいいように使ったといえるのではないでしょうか?

 とはいえ、スポーツが人と人、国と国のいがみ合いに働きかけ、それを緩和させるという精神そのものは大いにあっていいことですし、それこそがスポーツの力だと思っています。今回の大会でも、両国が互いのベストを尽くして戦い終わった後に「次の大会からは一緒に頑張ろう」と握手をすればよかったのでは…と強く感じました。(女子マラソン五輪メダリスト)

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