関学大負傷のQBが日大・宮川選手へ檄熱エール「選手として戻って正々堂々また勝負」

スポーツ報知
第3Q、狙い澄ましてパスを出す関学大QBの奥野耕世選手〈3〉(カメラ・谷口 健二)

◆アメリカンフットボール 関西学生大会 関学大27-16関大(27日、大阪・エキスポフラッシュフィールド)

 日大との定期戦(6日・東京)で相手選手の悪質タックルで負傷した関学大QB奥野耕世(こうせい)選手(19)=2年=が27日、3週間ぶりに実戦復帰を果たした。試合後、問題のタックルそのものは「本来起こらないプレー」と非難したが、反則行為を猛省してアメフトから離れる決意を示している日大DL宮川泰介選手(20)=3年=に対して競技続行を促し「また正々堂々と勝負できたらいいなと思う」とエールを送った。関大戦に途中出場し、第4Qには勝ち越しタッチダウン(TD)パスを決める活躍だった。

 悪質タックルを受け腰部打撲などで全治3週間と診断された奥野選手は、負傷した日からちょうど3週間でフィールドに復帰した。そしてアメフトと別れる覚悟を固めた宮川選手に熱いエールを送った。復帰戦後「(22日の)会見で宮川君は『(自分に)フットボールをする権利はない』と言ったが、それは違うと思う。またフットボール選手として戻ってきて、グラウンドで正々堂々とルール内でプレーして、また勝負できたらいいなと思う」。しっかりと前を見つめて語った。

 18日に当事者2人と各家族の計6人で会い、奥野選手は宮川選手から直接謝罪を受けた。その時のことは「すごく心苦しく、かわいそうだという気持ちだった」と振り返った。自身が被害者ながら、悪質タックルに及ぶに至った宮川選手の追い詰められた心境を思いやった。「あのタックルは本来起こらないプレー」と行為そのものは非難したが、学生日本代表にも選ばれた宮川選手のセンスはリスペクトしている。「本人は(会見で)もうやる気がないと言ったが、すごくうまい選手。戻って活躍できる選手だと思う」とフィールドから呼び掛けた。

 自身は最高の復帰劇だ。関大戦の第2Qでキッカーを補助するホルダーとして途中出場を果たすと、第4Qの10―10の場面では一度パスをためらって切り返したが、前方にWRの姿を見つけると、170センチ、71キロと決して大きくない体を躍動させ、相手守備を翻弄するかのような山なりの38ヤードTDパスを通した。2年生QBは「初めは(パスコースが)あいていなくて。切り返したら22番(WR)が見えた。すごくうれしかった」と興奮気味。この日はパスを9回中7回成功させ、計127ヤードを稼いだ。

 父で大阪市議の康俊氏(52)は、悪質タックルを指示したことが浮上している日大・内田正人前監督(62)と井上奨(つとむ)前コーチの厳罰を求め、大阪府警に被害届を提出。管轄する警視庁が捜査中。手続き上、加害者は宮川選手だが、康俊氏は「反省し、十分に社会的制裁を受けている」として寛大な処分を求めている。

 この日、内田氏らへの思いは口にしなかった奥野選手。決着には時間を要しそうだが、今は強く、こう願っている。「アメフトだけでなく、スポーツ界全体がフェアなプレーをルール内でできるような世界になってほしい。アメフトは危険なスポーツではなく、面白いスポーツなんだと分かってもらって(この問題が)終わってほしい」。曇りのない表情で言い切った。(田村 龍一)

 ◆奥野選手に聞く

 ―フィールドに立った時に特別な思いはあったか。

 「特になく、自分のプレーを普通にやろうと思った」

 ―けがをした恐怖心は。

 「タックルに対しての恐怖心はなかった」

 ―試合を振り返って。

 「練習できなかった時にしていた頭の整理を生かし、ワイドにプレーしようと思った」

 ―けがの影響は。

 「膝に痛みはある」

 ―悪質タックルの瞬間は。

 「何が起こったか分からなかった。気づいたら、痛みとともに上を向いていた」

 ―問題の試合の後は。

 「一人になると、考えてしまったが、学校で友達や先輩に普通に接してもらった。『家に泊まりにおいでや』とか励ましてもらい、普通にアメフトができた。戸惑うこともあったが」

 ―アメフトを続ける決意をしたのは。

 「一人で悩んだが、家族は『そんなこと考えなくていい。別に悪いことしていない』と。先輩にも声をかけてもらって、気持ちが吹っ切れた」

 ―日大指導陣に対して。

 「それについては答えられない。すいません」

 ―今後の目標は。

 「チームの目標が日本一。プレーでファイターズに貢献して日本一になりたい」

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