村田諒太、世界戦前夜…ロンドン五輪「金」からプロ転向、不安乗り越えいよいよ見えた

2017年3月11日14時0分  スポーツ報知
  • いよいよ世界タイトル戦が見えてきた村田諒太
  • 2016年12月30日のスーパーミドル級10回戦 村田諒太(帝拳)-ブルーノ・サンドバル(メキシコ)戦

 ボクシングの2012年ロンドン五輪ミドル級金メダリスト・村田諒太(31)=帝拳=が、プロで勝負の時を迎えようとしている。現在、WBA・WBO世界同級2位など、主要4団体全てで上位にランクインし、昨年末には「世界前哨戦」を快勝した。いよいよ世界タイトル戦がはっきり見えてきた中で、背負い続けてきた金メダリストとしての苦悩や今の思いを告白。家族との過ごし方などプライベートも語った。

 プロになった五輪金メダリスト・村田の世界へのカウントダウンが、最終段階を迎えようとしている。

 「具体的に世界戦という話も至るところでされるし、自分も意識しています」

 WBA、WBO世界ミドル級2位、WBC、IBF同4位とすべて上位に名を連ねる。昨年末は、「世界前哨戦」と銘打たれた元WBC米国王者サンドバルとの試合を3回KOの快勝で制した。1月に31歳になり、間違いなく勝負の年になるであろう一年に向け、はっきりと世界を見据え、気持ちを高ぶらせている。

 五輪のボクシング金メダリストゆえに周囲は大きな期待を抱く。それだけに重圧を背負い、悩み苦しんできた。五輪王者についての“持論”があるからだ。

 「みんなが金メダルすごいというけど、ラッキーなんですよ。仮に総当たり(リーグ制)でやったとして、全部勝つ人間はまずいないと思う。(トーナメント制の)五輪は『アマチュアの王者』じゃない。あくまで五輪、しかもロンドン大会の王者ということだけ、だと思います。自分のできることだけに焦点を合わせなければいけないのに、五輪は結果にフォーカスされる。だからプレッシャーにもなるし、結果ありきになると動きも悪くなる」

 そうした重圧をくぐりぬけた経験は、プロに入って生かせているのではないか―。村田はいったん、肯定するように口を開きかけたが、すぐに否定した。

 「でもそんなことないか。最近は開き直って勝負できるけど、デビュー戦や2、3戦目とかずっと嫌だったなあ…」

 13年8月のデビュー戦は東洋太平洋ミドル級王者・柴田明雄(ワタナベ)を一方的な2回TKOで下した。

 「デビュー戦は不安だらけでした。大した実力もないのに、2回で派手に勝ってしまった。背伸びしても追いつかない自分の像が世間にはできてしまった。ますます現実との乖離(かいり)が激しくなった」

 不安を打ち消すかのように“強い村田諒太”を見せようとした。

 「そうなると、いきり(いきがり)たくなる。(13年12月のプロ)2戦目で『僕が主役だ』と言ってみたり。その上(メインイベント)に世界戦があるのに、よくそんなこと言ったなバカ野郎、と今は思いますよ」

 デビューから4戦連続KO勝利と快進撃を続けていた時も、不安は消えなかったという。5、6戦目は判定決着。会場からブーイングを浴びることもあった。だが7戦目でKO勝ちを収め、8戦目は本場の米ラスベガス。「試合前のスパーリングの調子が良くていけると思った」という。だが、またも判定勝利に終わった。「情けなかった。これで世界とかあり得ないと思っていた」と振り返る。

 それでも、もがき続ける中で、一筋の光明を見いだし、開き直れるようになった。

 「僕のいいところはガードを固めてプレッシャーをかけてパンチを打ち込むところ。足を使ったり、地に足がついていないのは僕のスタイルじゃない。いいところを出して勝てなかったら仕方ない」

 昨年1月の9戦目で2回KO勝利を飾り、自信をつかんだ。そして7月の11戦目は再びラスベガス。本場で1回TKO勝利を収め、確かな手応えをつかんだ。

 ミドル級は1、2を争う選手人口がいるとされ、競争も激しい花形階級だ。過去の日本人の同級世界王者は竹原慎二氏ただ一人。金メダル獲得の快挙から5年、プロデビューから間もなく4年、こなした12戦全てで勝利し、うち9試合でKO勝利を飾っている。激戦区ということを考えれば、順調といっていい。

 快挙に向かおうとしている村田だが、家庭では長男・晴道くん(5)、長女・佳織ちゃん(2)の2人の子を持つパパだ。ボクシングの話をしているときは真剣なまなざしだが、最愛の存在である家族の話題になると目尻が下がる。

 まず、男同士の晴道くんとは―。

 「親友みたいな感じ。ちょっと距離が近すぎるのかなというくらい依存しているところがあります。遊んで笑顔を見ているだけでうれしい」

 自転車などで遊んだり、お風呂に入れて歯磨きをして寝かしつけるのもパパの役目といい、かなりのイクメンぶりを発揮している。

 「『パパの上で寝る』と言ってきて、上に乗っかって寝たりとか。頼られるとかわいくなるものです」

 娘の佳織ちゃんとは、また違う関係性になるという。

 「つい甘やかしてしまう。男は『てめえでちゃんと行け』みたいな感じでちょっと厳しくしちゃうけど、女の子だと『はい』という感じで(笑い)」

 朝のロードワークを終え、2人の子どもを保育園に送り届けるのも村田の仕事だ。

 「娘はベビーカーで、息子とは手をつないで。『パパ走って』と娘に言われて、ベビーカー押して走ったりしていますよ」

 10年5月に結婚した佳子夫人(34)も、陰から支えてくれる。

 「子どもの世話や洗濯物を干すのを手伝ったり、買い物に行ったりとか…。あとはカミさんの仕事。何でもできるし、こうやって努力してくれて支えてくれて感謝ですよ」

 アマチュア時代に一度、競技から離れた。その時は佳子さんの仕事の方が忙しかったため、村田が食事を作っていたというが、その後に現役復帰してからはずっと佳子さんが食事を担当している。感謝の気持ちは言葉だけでなく、行動でも表してきた。

 「(昨年)息子がクリスマス発表会で白い靴下が必要だったので、デパートに行って買い物をしたんです。その時にブランド物のかばんを買いました。子どもの買い物は10分で、妻の買い物は2時間(笑い)。4月2日の(佳子さんの)誕生日もレストランを予約しています」

 最後に、あらためて世界戦への思いを聞いた。

 「楽しめている。他のことに気がいかなくなっている。(自分の)フォーカスが完璧に世界戦に向いています」

 世界王者誕生の夢は十分に期待できそうだ。(ペン・三須 慶太、カメラ・堺 恒志)

 ◆村田 諒太(むらた・りょうた)1986年1月12日、奈良市生まれ。31歳。南京都(現・京都廣学館)高で高校5冠。東洋大―同大学職員。全日本選手権優勝5度、2011年世界選手権銀メダル。ロンドン五輪男子ミドル級で、ボクシングでは日本勢48年ぶりとなる金メダルを獲得。13年8月にプロデビュー。身長183センチの右ボクサーファイター。

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