尾川、世界初挑戦へ「右を当てれば絶対に倒せる」

2017年12月7日13時15分  スポーツ報知
  • 試合のポスターを手にポーズを取る尾川堅一

 前日本スーパーフェザー級王者でIBF同級4位・尾川堅一(29)=帝拳=が12月9日(日本時間10日)、米ネバダ州ラスベガスのマンダレイベイ・イベンツセンターでIBF同級王座決定戦に臨む。相手は同級5位テビン・ファーマー(27)=米国=。74%のKO率を誇る強打者の尾川(23戦22勝17KO1敗)に対し、ファーマー(30戦25勝5KO4敗1分)はディフェンス力に長けた技巧派サウスポーだ。

 尾川は父親の指導のもとで2歳のときに日本拳法を始め、大学卒業後にボクシングに転じた経歴を持つ。「自分はずっと殴り続けるつもり。右を当てれば絶対に倒せるという自信がある」と言い切る。試合を12月10日午後0時20分からWOWOWメンバーズ・オンデマンドで先行ライブ配信するWOWOWOWのインタビューに応じた。

 ―小さいときから格闘技を続けているわけですが、追求しているものがあるのでしょうか?

 尾川(以下、同)「いや、追求はないですね。気づいたときには格闘技をやっていたので、自分にはこれしかないと。やって当たり前という感覚ですね。でも、ボクシングを始めて日本一、世界一というものを初めて意識するようになりました」

 ―プロ9戦目で敗北を喫したときは、どんな心境でしたか。

 「負けた瞬間、頭が真っ白でした。ノーガードで殴っているところにカウンターをもらってしまったんです。ガードしろと言われてもできず、それでも勝つことができていたので『ボクシングってこんなものか』と思っていたところでした。あの負けがあったからこそ今の自分があると思っています。負けが人を強くするということを実感しました。あのときの気持ちや痛みを覚えているので、その痛み以上のものはないと思っています」

 ―ボクシングの奥深さを知ったわけですね。

 「そこはまだ分かりません。ボクシングは難しいし、まだまだ成長できる部分もあると思っています。たとえばジャブの打ち方や種類など、いまだに分からないことがありますから。でも、そういう点が自分の伸びしろでもあると思います。ただ、取り組む姿勢の大切さは教わりました。いい加減に取り組めばいい加減のまま終わるし、しっかりと向き合えばチャンスは必ずくると」

 ―今回の試合が決まったとき、周囲から激励の言葉をかけてもらいましたか。

 「『おめでとう』ではなく、『やっと決まったね』という言葉がほとんどでした。みんな待っていてくれたんだなと感じました。拳法のときからそうなんですが、自分が勝つことによって先輩や後輩などまわりの人たちが喜ぶ姿を見るのが嬉しいんです。プロになってからもそうです。自分のために戦いなよ、と言ってくれる人もいますが、それだとなぜだか頑張れないんですよね。誰かが喜ぶ姿を見るのが幸せなんです。家族ができてからは、子供たちが試合のDVDを見てはしゃいでいるので、それを見ているときが一番幸せですね。今回、玄関に置いてあった日本チャンピオンのベルトを返上したので、子供たちは悲しそうでした。だから『次に世界のベルトを持ってくるから』と約束したんです」

 ―今回は東京以外で初の試合ということになりますが、不安な点はありますか。

 「コンディションや時差など、すべての点ですね。後楽園ホールの試合だと500人ぐらいが応援に来てくれるけれど、今回は1万人以上入る会場に(応援団は)20人ぐらいなので。もちろん、その声援は大きな力になりますが、完全アウェーのなかで戦うという不安はあります。あとは減量ですね。まったく違う環境で減量するわけですから。でも、海外での試合経験がある亀海(喜寛)選手などからアドバイスをいただくなど環境は整っているので、少しずつ不安は取り除かれてきています」

 ―亀海選手からは、どんなアドバイスを?

 「ラスベガスは乾燥がすごいと聞いています。湿気があった方が汗が出るんですが、最後は水分を控えて汗を出すことになるので。何があって何がないのか、分かる限りの情報は聞いて、準備して納得したうえで行った方がいいじゃないですか」

 ―米国のファンを取り込むためには、それなりの戦いが必要になってくると思います。

 「米国のファンを取り込もうという意識はないけれど、僕が勝つことでファン(観客)は熱狂すると思います。僕が勝つ=自然と会場の人たちは『オガワ』という名前を憶えてくれると思うので、意識せずともそうなるんだろうと思います」

 ―ファーマーについてどんな印象を持っていますか。

 「避けるだけの選手、という感じです。僕が常に思っていることなんですが、もちろん避けることは大切なんですが、ボクシングは殴り合う格闘技であって避けるスポーツではないんですよね。だから避けてポイントになるという点は理解できない。殴って殴ってということを36分間(3分×12ラウンド)続ければ、相手は避け続けることは不可能だと思うし、どこかで手を出さなければならないので、そこまで(ファーマーの)スタイルを気にはしていません。避けるなら避けてください、自分はずっと殴り続けますよ、と」

 ―ディフェンス以外で気になる点はありますか。

 「全然ないですね。僕はどんどん自信を深めているんですが、逆にまわりが不安になって緊張していくのを感じて、ちょっと不思議な気分です。僕よりもまわりの人の方が研究してくれています(笑)。日本チャンピオンのときはタイトルを取って当たり前みたいな雰囲気がまわりにありましたが、世界となると何か違うんでしょうね。まわりからも変な緊張感を感じて、それが面白いですね(笑)」

 ―ファーマーはサウスポーです。左構えの相手に対する苦手意識はありませんか。

 「キャリアの3分の1ぐらいはサウスポーと戦っているので、苦手意識はないですね。特別に得意だとも思っていないけれど、(パンチの当たる距離が)半歩遠くなるので少し疲れるかなという程度です。それにサウスポーの内藤(律樹)選手と2回戦った経験が大きいですね」

 ―その内藤戦と似た戦いになりそうですか。

「そう思っています。(ファーマーは)8割から9割はディフェンスを意識している選手ですよね。自分もそうですが、同じ割合で守りに徹していいと言われれば誰でもあれぐらいはできると思います。でも、そんな試合をしても面白くないし、そんなことをまわりも求めていないからやらないだけで。だから、特に(ファーマーのことを)すごいとは思いません。みんなは『巧い選手』というけれど、ただ単に攻撃しないだけだと自分は思っているので」

 ―尾川選手自身は自分のどこがストロング・ポイントだと思っていますか。

 「スピードですかね。まわりはパワーだと言いますが、一瞬のスピードに自信を持っているので、そこが一番のストロング・ポイントですね」

 ―こだわっている点は。

「右のパンチで仕留めたい、ということにはずっとこだわっています。最近は相手のレベルも上がってきているので右が当たらず、左でも倒すということはありますが。フックでもストレートでも、右の感触のあるパンチを当てられれば絶対に倒せる自信はあります」

 ―調整は順調ですね。

 「自分のなかでは納得した練習ができているし、世界戦が決まる前の9月ごろから準備は始めていたので、いつでも戦える体です。どこかを伸ばそうかという意識はないし、あとはコンディション調整だけですね。短いラウンドでも内容のあるスパーリングをするとか、自分を納得させて毎日を消化していくという段階です」

 ―現在のスーパーフェザー級は、WBO王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)やWBC王者ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)ら強い選手が数多くいます。

 「三浦(隆司)さんが引退して、自分の番が来たなと感じています。先輩が負けた相手(ベルチェルト)に勝てば評価も一気に上がると思うし、そう考えると自分は運がいいなと思います。強い選手がたくさんいるなかで戦えるということは自分の評価を上げる最大のチャンスですから。今回、ファーマーに勝って次はデービス(前IBF王者ジャーボンテイ・デービス)と戦って勝ちたい。それがモチベーションにもなっているし、勝つ自信もあります。そうなればロマチェンコやベルチェルトなど強い相手との対戦の可能性が広がりますよね。強い選手がたくさんいるのでテンションが上がりますね」

 ―遠くに見据えている目標はありますか。

 「チャンピオンにこだわるというよりも大物選手と戦いたいし、自分がそういう選手になりたいです。自分の力を試したくてボクシングを始めたので、自分の強さの位置を確かめたいですね。強い人と戦って自分の実力を試したいという気持ちがすごくあります」

 ―そのためにも今回の試合は重要ですね。

 「こんなところで立ち止まってはいられない、という気持ちです。いまはベルトを取って当たり前という気持ちになっています。期待はプレッシャーにもなりますが、反面、力になる。今回は通過点だと思っています。勝ってIBFのベルトをコレクションとしてもらい、そこからやっとボクシング人生がスタートするというイメージです。自信満々です」

 ―あらためて意気込みを聞かせてください。

 「『尾川堅一』という名を残すためにボクシングをやっているので、負けたら何の意味もない。待ちに待った世界戦、応援してくれた人や日本のボクシングファンのために世界一という称号とベルトを持って日本に帰ってきます」

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