【七色コラム】村田諒太、報われなかった時の涙になぜか共感してしまう

スポーツ報知
ロンドン五輪で金メダルに輝いた村田諒太

 スノーボードのハーフパイプってすごいですね。着地する直前にもう1回転する。あの攻めの怖さ! 僕が見てたら“死に体”になっている。もう着地する以外ないのに無理して半回転。死に体と生き体の間でひねる姿を見ると、なんちゅうことしてんだと思う。恐ろしい。あの0・0何秒でなんでひねる必要あるんだって。

 たぶん、選手は「いける」と思ってない。あそこで攻めないと勝てないから回すんだと思います。スキージャンプも100メートルを地面につかず、生身の体が宙に浮いているわけですよ。そら怖いでしょ!(笑い)。でも、この選手たちはボクシングを見て「なんちゅうことしてるんだ」って思うわけですよ。そんなもんなんでしょうね。自分がやっていることは大したことないと思うけど、人がやってることはすごいなあって思う。

 冬季五輪で印象的なのは、やっぱり「フナキ~!」ですね(笑い)。僕ら世代はそうですよ。それと、上村愛子さん。98年長野五輪7位から1大会で1つずつ順位を上げて、10年バンクーバー五輪で4位だった。「なんでこんな一段一段なんだろう」って。あれは泣けますね。人のストーリーがずっと続いてるから面白い。人間って成功した時じゃない時も感動するのが不思議。報われなかった時の涙になぜか共感してしまう。

 ボクシングは東京五輪の実施競技から除外する可能性が浮上しました。組織の問題などを国際オリンピック委員会(IOC)から指摘されて。もう失望しました。古代オリンピックから続いている競技。それでも外そうか、となるくらいひどい状況だということです。

 だから、僕はボクシングを発信していきたい。五輪をやるなら、一致団結してやっていかないと。SNSでも『誰か立ち上がれ』って言っています。五輪で存続するために動かなければいけない。じゃないと、アマチュアのボクシング自体、もうこのまま崩壊していく一方ですよ。みんなでやろうよ!(ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダリスト、WBA世界ミドル級王者)

 ◆村田 諒太(むらた・りょうた)1986年1月12日、奈良市生まれ。32歳。中学1年でボクシングを始め、南京都(現・京都広学館)高で高校5冠。東洋大、同大学職員で全日本選手権優勝5回。2011年世界選手権銀メダル。12年ロンドン五輪ミドル級でボクシング日本勢48年ぶりの金メダル。13年8月にプロデビューし、17年10月にWBA世界ミドル級王座奪取。身長183センチの右ボクサーファイター。戦績は13勝(10KO)1敗。家族は妻と1男1女。

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