源大輝が母の1周忌に涙の王座奪取! 「母ちゃん! ベルト取ったよ!」

スポーツ報知
7回TKO勝利で日本フェザー級の新チャンピオンの源大輝は試合後、亡くなった母・礼子さん、兄・貴登さんが写った写真を胸に抱き涙ぐむ

◆報知新聞社後援 プロボクシング▽日本フェザー級(57・1キロ以下)タイトルマッチ10回戦 大橋健典―源大輝(7日、東京・後楽園ホール)

 日本フェザー級1位の指名挑戦者・源大輝(27)=ワタナベ=が、2度目の王座挑戦で新王者に輝いた。同級王者・大橋健典(28)=角海老宝石=に7回1分12秒TKO勝ち。2015年9月に元IBF世界スーパーバンタム級王者・小国以載(29)=角海老宝石=を相手に日本王座獲得に失敗したが、1年前にがんで亡くなった母・礼子さん(享年63)の命日に悲願のベルト獲得となった。源の戦績は15勝(12KO)5敗、大橋は15勝(10KO)5敗2分け。

 序盤からジャブでリズムを作って主導権を握った。7回に右ストレートでぐらつかせ、数発浴びせながらコーナーに追い込んだところでレフェリーストップ。リング上で天を見上げた。「母ちゃん! ベルト取ったよ!」。2度目の王座挑戦で夢をかなえると、自然と涙がこぼれ落ち「約束を守れて一安心です。墓前に報告に行きたい」と達成感に浸った。

 自身の誕生日だった昨年1月13日に次兄・貴登さん(享年29)を交通事故で亡くし、この日は母・礼子さんの1周忌。「去年は本当につらかった」。この日、長兄・成義さんはリングサイドで2人の遺影を持って見守った。

 ボクシング以外のスポーツ経験はなく、大分・別府市で飲食店を経営する実家を継ぐ道もあったが「敷かれたレールの上を歩きたくない」と18歳で単身上京。「拳2つで成り上がるってかっこいい」とワタナベジムの門をたたいたが、格闘技好きの礼子さんは「(王者には)一握りしかなれない。現実を見ろ」と否定的だった。それでも、試合のDVDを実家に送り続け、戦う姿をアピール。「お前の試合は華があるな」。男っぽい性格の母が、少しずつ認めてくれた。

 15年9月に王座挑戦も、小国に完敗。リングサイドで声を枯らして応援してくれた礼子さんは、試合後に「負けてなかったぞ」と慰めてくれた。源は自分の実力を受け止めながら「チャンピオンになれよ」という母の支えに奮起して再び立ち上がった。

 しかし、1年前、闘病生活を送る礼子さんが危篤状態に。成義さんが目をつぶる母の耳元に電話を置き、源はスピーカー越しに「ベルト、取るからな」と約束した。「返事は何もなかった。5分後に息を引き取ったけど、僕の声も聞こえていたと思う」。天国でも見守ってくれると信じている。

 王座再挑戦がくしくも1周忌と重なった。「お前らしくやれ。考えすぎるな」。胸に刻んだ母の言葉通り、がむしゃらにつかんだベルトだ。「ファンが面白いと思う試合をするのがプロボクサー。強い相手とやりたい」。母の命日が喜べる日に変わった。

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