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新年最初のリングでキレた長州力、永遠のライバル藤波辰爾が明かす激怒のワケ

2018年1月15日15時0分  スポーツ報知
  • 14日の長州力プロデュース興行で、関本にサソリ固めを決める長州
  • 超満員の観衆が詰めかけた14日の長州力プロデュース興行

 長州力(66)がキレた。

 14日、後楽園ホールで行われたプロデュース興行「POWER HALL」で長州は、初タッグ結成の飯伏幸太に、伊橋剛太を従え、藤波辰爾、TAKAみちのく、関本大介と対戦した。試合はリキラリアットから飯伏のシットダウン式ラストライドへの連携で勝利した。キレたのは試合後だった。

 バックスペースで飯伏へのコメントを出している途中だった。突如、伊橋を見据え「お前はダメだな。お前は最後に出ちゃいけない。お前のせいじゃないだろうけど。必要とはしない。それはお前に言った方がいい。頑張っているのは分かるけど、違うものはある」とブチ切れたのだ。

 あの1995年10月9日、東京ドームで行われた新日本プロレス対UWFインターナショナルとの伝説の対抗戦。安生洋二との試合後に「キレましたか?」と聞かれ「キレちゃいないよ」と冷静だった革命戦士が完全にキレた。「ダメなものはダメで客は笑ってヤジる。彼がメインに来たのは間違いだった。許せるものと許せないものがある。そうじゃないと選手も気づかないと思いますよ」とダメ出しを連発。最後に「お前はダメだ。プロレスやろうと思わない方がいい。死んじゃうよ」と伊橋に強烈な最後通告を突きつけ控室に入った。

 3年ぶりのプロデュース興行。長州は「今のプロレスを感じたい」とテーマを掲げ「今、間違いなく先陣を走っている」と評価する飯伏へオファーした。第1試合からメーンまで出場する選手の条件に「プロのレスラーであって欲しい。プロのレスラーとは常にやるべきことをやっている選手」と掲げた。長州が言う「やるべきこと」とは、日頃から重ねる地道な練習を指す。実際、後楽園のリングに上がった長州の肉体は、66歳という年齢をまったく感じさせない鎧のようにビルドアップされていた。その裏側にどれほどの汗があったのだろうかと想像するだけで頭が下がる思いがした。あの研ぎ澄まされた肉体は革命戦士のプロとしての誇りの表れだった。

 一方、伊橋は身長158センチ、体重110キロと太鼓腹の肉体。レスラーのかたわらDDTが経営する「エビスコ酒場」の料理長として働いている。とても日々、地道な練習を重ねているとは思えない体だった。ゴングが鳴ると緩慢な動きに客席から失笑が漏れた。痛烈なヤジも飛んだ。藤波が片方の足を取ってドラゴンスクリューに行こうとするとバランスを崩し倒れてしまう始末。あまりの情けない動きに飯伏と長州が腹にストンピングを入れる一幕もあった。

 長州組と対戦した永遠のライバル、藤波は「ボクも戦っていてこれは違うだろ思った。キレそうになった」と明かした。その上で長州がキレた理由を「時代と世代が変わっても、昭和からのファンはずっとボクらを見続けている。そういうファンを裏切ることはできない。あの人は今って思われたら終わりなんです。ですから、ファンの期待に応えるためにリングに上がるためには体を作っていく。また、そうしないと自分自身が許せない。それだけ気持ちを入れたリングで笑いが起きてしまった。これは、猪木さんからたたき込まれた新日本の教えの中では絶対にあってはならないことなんです。笑いが入るとリングも会場もトーンが下がってしまうんです。長州はそこが許せなかったと思う」。

 昨年末、長州をインタビューした時、引退について聞いた時にこんな決意を明かしていた。

 「リングの上は本当に何が起きるか分からない危険なところなんです。だからこそ、客から笑いが起きるリングでオレは死にたくない」。

 自身のプロデュース興行で己の哲学とは相反する笑いが客席から起きた。しかも、様々な事情が背景にあったとしてもマッチメークしたのは自分自身だ。自身のプロレス観とは真逆の事態が起きた事実とこうした選手をメーンに出場させた己への憤りがキレた理由ではなかっただろうか。

 1982年10月8日。藤波への「かませ犬発言」で革命を起こした長州。以後、リング外で発した数々の言葉でプロレス界に一石を投じてきた。今回の発言は、図らずも今のレスラーへの提言とも言える。伊橋は「見返せるように頑張るしかない」と決意し飯伏は「長州さんはウソを言う人じゃないし、本当の気持ちだと思う。いい勉強になりました」と刺激を受けた。66歳になっても長州はプロレス界へ非常ベルを鳴らしている。(記者コラム・福留 崇広)

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