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追い続けたい世界ミニマム級王者・山中竜也が紡ぐ母と子のストーリー

2018年3月22日16時0分  スポーツ報知
  • 母・理恵さんと言葉を交わす山中竜也

 WBC世界バンタム級王座を12度防衛した山中慎介(35)=帝拳=が1日の試合に敗れて引退を表明した。その日本ボクシング界で、同姓のWBO世界ミニマム級王者・山中竜也(22)=真正=が台頭してきた。活動拠点とする神戸で18日、同級4位のカジェロス(メキシコ)を8回終了TKOで下して初防衛。リングサイドでは、誰よりも心配そうに王者を見つめる女性がいた。山中竜の母・理恵さん(46)だ。

 理恵さんは長男・竜也が小学5年の時に離婚し、最大3つの仕事を掛け持ちしながら、女手一つで6人きょうだいを育てた。幼い子供たちが寝静まった夜間、自身の姉や妹に子守りを任せ、寝る間も惜しんで働いた。ようやく昨春、末っ子の四男・愛斗さん(13)が小学校を卒業し、子育てはひと段落。当時の無理がたたってか、理恵さんは腰痛を患っており「もう一度、同じ事をやれと言われてもできない」と話す。

 「ボクシングは全くの素人」という理恵さんだが、息子の試合はデビュー以来、欠かさず会場で観戦。試合の1か月前からは神戸市内の竜也宅に泊まり込み、生活をサポート。減量食を作ったり、疲れた筋肉をマッサージしたり…。時々弱音を吐く息子を鼓舞するなど“メンタルサポート”も行う。

 竜也「(強い相手に)ボコボコにされたらどうしよう」

 母「あんた、まがりなりにも世界王者やろ」

 気丈に振る舞う母もまた、「相手のパンチをもらわないか、いつも心配」と明かす。今回のV1戦前にも「相手のカジェロス選手はブンブン系(パンチを振り回すファイターことだろう)だから、特に見ているのが怖い」と話していた。

 そんな母の心配をよそに、王者はカジェロスの有効打をほとんど食らわず、自身はクリーンヒットを連発。8回終了時に戦意喪失に追い込む完勝だった。初防衛を果たし、オフには、母や5人のきょうだいを遊園地に連れていくという。「防衛を重ねて将来は、母のために家を買いたい」と王者。だが母は「試合に負けてもいいし、いつ引退してもいいと思っている。ただ、息子が現役を続ける限り、私は試合会場で見届ける」ときっぱり。母は強し、だ。

 理恵さんが世界王者の息子に今、何か期待していることはないのか、聞いてみた。すると「早くお嫁さんを見つけてほしい」と笑顔の返答。リング外でも母の心配は尽きないようだ。今後、山中竜のチャンピオンロードを追いかけるのはもちろんだが、親子のストーリーも追い続けていきたい。(記者コラム・田村 龍一)

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